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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第3章 無垢なる絶壁に刻まれしもの

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第27話 Sランクを拒んだタライと、崩壊魔法


 封鎖されたダンジョンへと足を踏み入れる。

 ここは駆け出し冒険者に人気の、低ランクダンジョンらしい。


 石造りのせまい迷路のような道が続いている。


「これがダンジョンか! そこかしこから魔物の気配を感じるぞ!」

「はい。突然モンスターが出現したり、様々な報酬の入った宝箱があったり……不思議な場所です!」


 目を輝かせるマールに説明をするアイリス。

 彼女はAランク、ダンジョンに入ったこともあるのだろう。


「アイリスよ、『不思議な』というのはどういうことかわかるか?」

「へ? いえ……“そういうもの”だとしか教わりませんでした」

「なるほど」


 確かにダンジョンの秘密に関してはごくごく一部の存在しか知らないだろう。

 真実を知れば忌避感(きひかん)を抱く者もいるだろうし。


「アイリスよ! この不自然に生えてる木の棒は何だ!?」

「それは――きゃっ!?」

「おお! この棒を倒すことで上からタライが!」

「……マールさん。ダンジョンにはそのようなトラップがあります。中には命を落とす物もあるんですよ!」

「木の棒に触れることで魔力の流れが変わったのを感じた……それに連動して……別の場所でも変化が……」

「マールさんったら! 聞いてます!?」

「しかし……なぜタライなのだ……?」


 しかしマールは既に思考に没頭し始め、アイリスの抗議など耳に入っていないようだ。

 石造りの場所で木の棒が生えていたら不自然以外の何物でもない。

 それを躊躇(ちゅうちょ)なく触るとは。


「(仕組みを理解しようとするのは良い傾向だ。だが……タライにそこまで執着しなくてもいいんだがな)」

「(タライ自体には意味なさそうよね)」


 気になる物を調べずにはいられない。さすが根っからの魔術師である。

 しかしマールには悪いが、先に答えを言わせてもらおう。


「正攻法も悪くないが、今回は“邪法”で行こうと思う」

「む?」


 ダンジョン入口が見えなくなった曲がり角で、足を止める。


「ダンジョンの『不思議』、つまり正体。それは――」

「え?」

「超大型のモンスターだ。その全てが“ランクX”に指定されている、『ダンジョン種』というモンスターだ」

「ええっ!?」


 信じられないといった顔のアイリスに、不機嫌な顔のマール。


「なぜ言ったのだ! 我が考えておったろ!」

「すまん。だが瘴気が邪神の影響ならば急いだ方がいいと思ってな」

「むむむ! ……まあいいか」


 それにジェインとやらのことも、急いだ方がいいだろう。

 彼本人というより、あの女性冒険者のためだが。


「その……魔物というのは……?」

「ああ。植物にもいるだろう? 甘い蜜で獲物を誘って捕食するやつが。それと同じだ」

「なっ!? つ、つまり……」

「宝箱が蜜。モンスターやトラップで獲物を狩る、ということだ。つまり今我々は魔物の胃袋にいる」

「そんなっ!?」

「とはいえ、この程度の魔力量のダンジョンではトラップや宝の質もたがが知れている。恐れることはない」

「……は、はい~……」


 マールが思慮深い顔で『だからタライなのか……』と納得している。

 そんなにタライが気に入ったのか。


「ということで、目的地までダンジョンを破壊しながら一気に進むぞ」

「え? ですがダンジョンの壁は壊せないって……」

「正しくは即座に修復する、だな。ダンジョンが大量の魔力を使って即座に自分の体を治療しているんだ」

「な、なるほど……?」

「つまり、その速度を上回る魔法、もしくはダンジョンの魔力を阻害するように破壊すればいい」

「そんなことが可能なんですか!? いえ、ルシアン様でしたね!」

「わかっているじゃないか。しっかり捕まっていろ」


 足元に魔法陣を展開。条件を満たすものはたくさんあるが、わかりやすいものがいいだろう。


「『万象崩壊(オールブレイク)』」

「きゃっ!? 足元が!?」


 対象の物理的構造を解読して崩壊させる大技。

 動きまわっているものには使いにくいが、こういった相手にはおあつらえ向きの強力な魔法だ。


「なんぞこれは!? なんぞこれはぁぁぁ!? こんな魔法見たことも聞いたこともない! さすがはルシアン! 我が夫!」


 マールが『フライ』を使い、落下しながらもダンジョンの破壊されつつある壁を見ている。

 いつの間にか夫にまでされてしまったが……ゆっくり観察している暇はないぞ。


「さて、ここだな」

「ここは……?」

「最奥、と言いたいところだが。その少し手前だ」


 先ほどの女性冒険者たちが出くわしたであろうカース種の大群。

 『魂感知』であれば見つけ出すことなど造作もない。

 だが……人間のそれはやはり感じられないな。


「さっそくお出ましだ」

「あれは……コボルトの大群!?」


 瘴気に侵されたコボルトの大群。その数50匹はいるだろうか。

 中には進化した個体、『コボルトナイト』や、ランクAモンスター『コボルトキング』までいる。

 その集団が我先にと、広くないダンジョンの通路を猛スピードで駆け寄ってくる。


 とはいえ所詮は雑魚。何のこともないな。


「マールよ、やるか?」

「なっ!? もうすぐそこまで迫っておるのだぞ!?」

「お前ならできるさ。母の愛と、俺の加護を受けたマールならな」

「――わかった!」

「いい返事だ」


 敵の戦闘はもう目前。時間のかかる詠唱などしている暇はない。


「……『エアロバースト』!」


 普段詠唱を必要としているマールが、中規模とはいえ無詠唱で魔法を放つ。

 風の突風がコボルトの先頭を吹き飛ばし、後続を巻き込むことでその勢いを削いでいく。


「で、できた! この規模を無詠唱などやったことなかったが……できたぞ!」

「その蝶のおかげだな。魔素を整えることで操作が格段に良くなる」

「そのようだ! まるで魔力が手足のように……『エアブレイド!』『エアブレイド!』」


 残りのコボルトたちに対し、いくつもの風の刃を放つマール。

 順調に屍の山を築いていく。


 だが――。


「アオォォォーーーン!」

「グルルルル……」


 さすがに最上位種までは殺しきれなかったようで、コボルトキングが4体ほど怒りの唸り声をあげている。


「すごい! すごいぞ! 使おうと思った魔法が、詠唱の必要もなく練り上がっていく!」

「ギャオォォーーー!!!」

「『アークテンペスト!』」

「ギャンッ!?」


 マールの作り出した竜巻が、こちらに突進してきたコボルトキングを切り刻みながらダンジョンのせまい通路を進んでいく。

 先に倒れていた他のコボルトの遺体もミンチになっていっている。


「(これじゃあ素材も採れないわね。目玉ならありそうだけど)」

「(あの料理の犠牲者を増やす訳にもいくまい)」


 この程度のモンスターの魔石や素材など惜しくもない。

 マールが楽しんでいる方が重要だ。


 そのマールを見上げると、実に嬉しそうに笑っている。

 『フライ』中で下着が丸見えだ。アイリスには黒塗りに映っているはずだが。


「さすが我! そして母上とルシアンだ! わっはっはぁー!」

「ああ、悪くなかった」


 Sランクの冒険者が仲間を囮にしてまでも逃げ出すモンスターの群れを数分で壊滅。

 マールの実力はまだまだこんなものではないだろう。


「ああ、こんなにしちゃって……素材が採れないじゃないですかぁ!」

「む?」

「冒険者としてお金を稼ぐなら、その辺りも考えて戦うんですよ!」

「そ、そうか……それもそうだの」


 冒険者としては先輩のアイリスに、返す言葉もないようだ。


「そうだな。次は消滅ではなく原型を留めたままの即死を目指そうか」

「うむ! 忠告感謝だぞ、アイリス!」

「(長らく貧乏生活だったアイリスにとっては、大事なことだもんね)」


 ともあれ、このモンスター討伐はあくまでついで。

 この階層に立ち寄った目的は別にある。


「――お、これっぽいな」


 少し進んだ先に、冒険者の物と思われるカバン。そして吐き戻されたであろう血まみれの衣服。


「これは?」

「ジェインとやらの遺品だろう。ダンジョンに“捕食”される前で助かった」

「……そうですね。そのためにここに?」

「ああ。遺品には魂が宿る。ジェインを救うことは叶わなかったが、これで救われる者もいるだろう」

「……はい」


 特に、この指輪なんかは……。


「(……しばらくは”一夜の恋人”も許さないんだからね!)」

「(わかってるって)」


 さすがの俺もロルウェンナの件があってすぐに他の女に手を出すのは(はばか)れる。


「(いつまでもつことやら……)」

「……さあ、この階での目的は達成した。引き続き下を目指そう」


 ミラの言葉を聞こえなかったふりをし、再び『万象崩壊(オールブレイク)』を発動する。

 2層ほど下ったあたりで目的の部屋へと辿り着いた。


「ボス部屋、ですね」

「ボス部屋?」

「はい。この先に少し豪華なお宝があって、それを守る強力なモンスターがいるのです」

「ほお?」

「一定時間で出現し直すダンジョンの不思議の1つ……でしたが、これも餌ということなのでしょう」


 アイリスによる講義が終わったところで、本題に入る。


「ああ。この先が瘴気の発生源のようだ」


 この階に満ちた濃い瘴気。

 しかしその濃度は邪神と比べるまでもなく、一般の魔術師でもしばらくは耐えられる程度のものだった。


「どうやら今回はハズレだが……リエラの期待には応えよう」


 いいながら重い扉を開く。

 そこにあったのは――。


「むっ?」

「(あ~……ね)」


 瘴気に侵されたダンジョンの魔石――ダンジョンコアだった。


誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日の投稿は

12時10分頃

20時10分頃

となります!

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