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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第3章 無垢なる絶壁に刻まれしもの

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第26話 Fランクの仕事と、Sランクのヘドロ


 その後一晩宿で過ごし、早速迷宮都市国家『キサトラネム』の入口まで転移した俺たち。


「あっという間ですね……キサトラネムはライブラからかなり離れていたと思いましたが……」

「まあな。1度行ったことのある場所ならすぐに飛べる」

「行ったことのない場所なんてあるんですか?」

「そりゃあるさ。海底に住む種族の国やマグマの底にあるという国にはまだ行っていないな」

「はえ……どこですかそれ……」


 海底に沈んだ古代都市には行ったことがあるが。

 ミラに適した肉体を求めて各地を彷徨(さまよ)った結果だ。


「我としては、旅の途中の野宿もしてみたいぞ!」

「それは盲点だったな。今度はそうするか」

「いいのか!? さすがルシアンだ!」


 効率ばかりを求めては人生に(うるお)いが足りなくなる。

 子犬のようにしがみついてくるマールの頭を撫でながら、意識はその胸の感触に向ける。

 そう、潤いが大事なのだ。


「さあ早速入国しよう」


 迷宮都市国家『キサトラネム』。

 その名の通り、ダンジョンが密集している都市だ。

 駆け出しから熟練の冒険者まで、幅広い難易度のダンジョンがいくつかある。


 産出された魔道具やモンスター素材などの売買で賑わい、一攫千金を求める冒険者たちで溢れている。

 夢と死の国、それが『キサトラネム』だ。


 その入り口を潜ると――。


「す、すごい……! 里とは比べ物にならない人や物が……!」

「ライブラと比べても全然ですね……! これがキサトラネム……!」


 行きかう人の多さや活気に目を奪われる2人。


「(うぅ、あまり人が多いのは好きじゃないなぁ~)」


 以前人ごみの中でぶつかった拍子に吹き飛ばされたことを思い出したのか、ミラが俺の懐に潜り込む。


「(これでよし! 今度は放さないでよね!)」

「(もちろんだ)」


 ミラの居場所を整えつつ視線を戻すと、すでに2人はいなくなっていた。


「なんだこの肉は!? 獣臭いのにどこか鼻をくすぐり食欲を湧きだたせる匂いは!?」

「『今日のおすすめモンスター煮込み』……何が入ってるのでしょうか」

「お嬢ちゃんたち! よかったら1杯どうだい? 何の肉かは食べてからのお楽しみだ!」


 いかにも安っぽい見た目、なのになぜだか気を引く屋台の前に2人がいた。


「(きっとゴブリン肉よ。絶対そうだわ!)」

「(材料費より器の方が高そうだな)」


 などと言っていると、2人は好奇心に負けて購入したようだ。

 銀貨2枚。それがあれば上質なパンを食べることができただろう。


「こ、この肉は……!」

「うげぇ……まるで泥でも口に含んでいるみたいです……」

「ま、まずい! 湧き出た食欲が一瞬で引っ込むほどのまずさ!」


 吐き気を抑えているアイリスとは対照的に、マールは『まずい』と言いながらも楽しそうだ。


「マ、マールさん……楽しそうですね?」

「まあの! これも里の中では味わえないものだ! ――アイリスよ! あれは何だ!?」

「あ、待って……これは『コボルトの目玉焼き』!?」

「実に興味深い! 店主よ、2人分いただこう!」

「うひぃっ!?」


 次の獲物を見つけたらしいマールが子犬のように駆けだす。

 どうせまた食えたものではなさそうだが、これもまた迷宮都市ならでは。


 しかしまだ入口でこの様子では用事を済ませるのに何年もかかるだろう。

 アイリスの体も持たない。


「マールよ、それを食べ終わったら先に用事を済ませよう」

「ルシアン様……先にそう言っていただきたかったです……うっ!? こりこりしてて中からドロッと……」

「わっはっはっ! これもすこぶるまずい!」


 楽しそうで何よりだ。




 ◇◇◇◇◇◇


 閉鎖されたダンジョンを探しにいくと、思いのほかすぐに見つかった。

 それは都市の中心部近くにあったからだ。


「失礼、ここが瘴気の発生しているダンジョンか?」

「はいそうです。内部には瘴気が発生しているため、本来は初心者向けのダンジョンですが現在は立ち入りを制限しております」


 近くにいたギルド職員風の男に声をかけると、そのような返事が返ってくる。


「原因不明と聞いたが」

「発生からこれまで何度も調査隊を送ったのですが……なかなか奥まで辿り着けず。現在Sランクの冒険者の方々が調査を行って――」


 ギルド職員の言葉の途中で、ダンジョン入口が騒がしくなる。

 何人ものギルド職員が入口に集まっていた。


「(話をすれば、その冒険者さんたちが帰ってきたみたいね)」

「(ああ。だが……)」


 戻ってきたらしい冒険者たちの様子を見れば、調査が失敗に終わったことがわかる。

 3人組の男女。1人の男と1人の女は傷だらけでところどころ出血している。装備品もボロボロだ。一方でもう1人の男は多少汚れているが、傷はない。


「『覇道』の皆様! いえ、リーダーのダルゲン様! いかがでしたか!?」

「……見ればわかるだろう」


 その傷のない男――ダルゲンと呼ばれた男が憮然(ぶぜん)とした様子で答える。


「こいつらがふがいないせいで調査は失敗だ」

「なんと……」


 ダルゲンの言葉に、他の2人が悔しそうに顔をしかめる。


「……そうですか。しかし皆様無事に戻られ――おや、もうお一方いたはず……」

「その男が囮にしたのよ!」


 ボロボロの女性が、泣きながら叫ぶ。


「奥でカース種の集団に襲われて……ジェインを――私の恋人を囮にしたの!」

「奴も偉大なSランクであるこの俺を守れて喜んでいるだろう。今までAランクどまりだったお前らを仲間として使ってやった恩返しにもなったな」

「何言ってるの! あんたが無理やり足を――っ!」

「だが、お前も見捨てただろう」

「……くぅ……っ!」


 ダルゲンのその言葉に、女性冒険者は悔しそうに顔を伏せる。

 極限の状態で仕方がなかったとはいえ、それが事実であると物語っている。


「ごめん、ごめん……ジェイン……」

「ジェイン、すまなかった……」


 しかしダルゲンと違い、2人は相当後悔しているようだ。


「……今のは聞かなかったことにします。一先(ひとま)ずご養生ください。報告書の提出もお願いします」

「ふん」


 故意に仲間を傷つけたのが事実であれば重大なギルドの規約違反である。

 だがSランクの冒険者を告発する勇気は誰にもないようだ。


「仲間を見捨てるなど……」

「……ひどいです! しかもわざとケガさせて……!」


 その話を聞いていたアイリスやマールが(いきどお)る。


「(ああいう奴がデカい顔するの許せない! どうにかして!)」

「(仰せのままに)」


 『どうにかして!』とは。相変わらずかわいらしい毛玉である。


「では我々は行かせてもらおう」

「お待ちください! ここは閉鎖中、それにたった今お聞きになったかと思いますが……」

「問題ない。ここに『指名依頼書』がある」

「こ、これは……『ライブラ』のミュリエラ様直々に!?」


 冒険者証と共にリエラから受け取っていた依頼書を見せる。

 その様子を、近くを通ったダルゲンが見ていたようで声をかけてくる。


「ふん。“Fランク”が何の用だ? この俺ですら1人では難しいダンジョンだぞ?」

「はあ」

「大方コネで『指名依頼』を取ったのだろう。貴様みたいなクズがいるから冒険者の程度が低いと言われるんだ」

「なるほど」

「さっさと消えろ! 貴様みたいなゴミがどうなろうと知ったことか」


 なら最初から話しかけるな、と。

 どうでもいいので無視していこうとしたが、肩のお姫様がペシペシ頬を叩くので1つ気の利いた言葉を返してやろう。


「なら、俺がこの依頼を達成することができれば……お前は“Fランク”にも劣る雑魚ということだな」

「きっ!? きさっ!? きっさまぁ~~~っっ!!!」


 顔を赤らめて襲いかかって来そうなダルゲンを、複数のギルド職員が必死に止める。


「(ルシアンったら、性格悪~い!)」

「(誉め言葉だ)」


 他人を挑発して冷静さを奪うことは、戦いの上で重要な策略の1つ。

 だが、このまま暴れてけが人でも出たら悪いので黙らせておこう。


「……何か?」

「ひっ!? な、何でも……さっさと行け!」


 少しばかり殺気を込めて睨みつける。

 腐ってもSランク冒険者。危険には敏感らしい。


 さて――。


「アイリス、マールよ。準備はいいか?」

「はい!」

「うむ! その囮にされた冒険者を助けてやろう!」


 多分死んでる。

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


次話の投稿は

20時10分頃

となります!

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