第24話 新たな居場所と、新たな敵(仲間)
魔界への次元。
穏やかな森の中に現れた次元の裂け目からは、赤と黒のおどろおどろしい光景が広がっている。
「な、なななな!? なぁにこれ!?」
「魔界だな」
「んまっ!?」
慌てふためくロルウェンナを見続けるのも悪くないが、あまり次元の裂け目を開いておくのはよろしくない。この辺が再び瘴気にのまれてしまう。
「ここをくぐれば魔界だ。俺から離れるなよ? 治療がめんどくさい」
「ひょ、ひょえ~……」
「わかるぞ母上。漏れ出る瘴気ですら背筋が凍る……」
「う、うん……」
瘴気に慣れた2人だからこその恐怖だろう。
アイリスなどすでにウキウキしながら俺の腕にしがみついている。
「行くぞ」
「あ、待って――うぐっ!」
「だ、大丈夫か母上!?」
「う、うん……」
吐くのを我慢するように口を押えるロルウェンナ。
そっと無言で肩を抱きながら、『回復』の魔法をかけてやる。
「(確かに、慣れないうちは大変かもね。逆かな、慣れすぎてて怖さがわかるっていうか?)」
「(そうかもしれないな)」
仕方がないので早々に次元を操作して『ライブラ』までの道を開く。
「ここだ」
「ふぃー……これは中々……大変ね……」
気持ちはわからなくないが、一緒に旅を続けるなら慣れてもらう必要がある。
マールはそれがわかっているようで、冷汗をかきながらも何も言わない。
「ここが冒険者ギルドだ。入るぞ」
「あ、うん」
扉を開け、カウンターを見ると例の気だるげな受付嬢が座っていた。
「げっ……」
「何が『げっ』だ。ほれ、魔石の引き取りを頼む」
「ちょちょちょ! いきなり――って何ですかこれは!?」
『退廃の腕』にて、アイリスが狩ったモンスターの魔石。
ミラのご飯はしばらくは十分そうなので、これは売り出すことに決めたのだ。
「ざ、ざっと見繕ってもAランクが6にSランクが4つ……しかも瘴気に染まった魔石……」
「いくらだ?」
「……無理ですぅ~……こんなに払えません~!」
「ふむ……」
ライブラ近辺には強い魔物が生息していないこともあり、準備していた金では足りないらしい。
「そんなことないでしょう。先日大目に予算を申請したんだから。彼がいる間の特別措置よ」
「リエラ、ちょうどいいところに」
「お、おかえりなさい、ルシアン……様……」
俺の存在に気が付いたのか、リエラが奥の部屋から出て来てくれた。
しかしいいのだろうか。『冷鉄』の仮面を取った姿を受付嬢に見られてしまっても。
「『おかえりなさい』、かぁ~……」
「……ルシアン様? たった数日で女性が2人も増えていますが。これはどういうことでしょうか? きちんと説明してください」
余計な心配だったようだ。
まったく目が笑っていないリエラの顔と、ボケっとしたロルウェンナが実に対照的だ。
「彼女らは――」
「ねえルシアンくん! 私ここで働くことってできないかな~?」
「ん?」
紹介しようとしたところで、ロルウェンナが思いもよらぬことを聞いてくる。
「『おかえり』って、すっごくいい言葉だと思うの! またマールちゃん……それにこれからはルシアンくんやアイリスちゃんに『おかえり』って言えたら、素敵だなって!」
それはいい考えかもしれない。
彼女の人の良さと包容力は冒険者にも人気が出るだろう。加えて魔術師としても有能な彼女は様々な面でリエラを支えることもできそうだ。
「(魔界経由の移動がいやだったんだろうなぁ~)」
「(その通りだろうが、言ってやるな)」
しかし彼女を連れ出した理由は、新たな生活のためだ。
ここで興味の沸くことに出会えたのは僥倖に他ならない。
「それはいい考えだ母上! ルシアンの隣は我に任せて、母上はここで居場所を守る! そうだ、それがいい!」
「やっぱり? マールちゃんもそう思う?」
「そうだ! ルシアンのことは我に任せるがよい!」
何で2回も言ったんだ?
「(あんたを盗られたくないからでしょ。他ならぬ母親に)」
「(……そういうことか)」
とはいえロルウェンナも乗り気だ。
リエラもいるし直接頼んでみよう。
「リエラ、どうだろう。彼女は魔術にも通じているし、人もいい。きっとお前の力になってくれるはずだ」
「……ちょうど人に空きが出たのでいいでしょう。後ほど改めて面接させていただきますが」
「それはよかった。では――」
どうにかうまいこと話も進みそうだし、逸らせたと安心したのも束の間。
そんなことはなかったと思い知る。
「しかし、ちゃんと説明してください。事務的に、事実だけを。彼女たちはあなたとどういった関係なのか」
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次話の投稿は
18時40分頃
となります!




