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『禁忌魔術を極めすぎて追放された賢者、死んだ最愛の女性(毛玉)を蘇生させるついでに世界を蹂躙する~「ダメ」と言われるほど、俺の魔術は加速する~』  作者: たゃんてゃん
第2章 秘められし蕾とその開花

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第22話 【悲報】王女が“夜の室内運動(ソロ)”を楽しんでいる間に、大賢者ザイモスさんの頭から角が生える

※王国側のお話になります。視点が切り替わっておりますのでご注意ください。


 ソニプロフェン王国城内では瘴気が珍しいものではなくなり、かつての華やかさは失われ、廊下の端さえ見通せないほどに視界は濁っていた。

 城全体が沈黙に支配されている。


「ちょー……もうマジうっとーしーんですけど!」


 ソニプロフェン王国第一王女のセシリアンナ。

 彼女は忌々しげに吐き捨てると、首元のネックレスを乱暴に引き抜いて目の前の闇を薙ぎ払った。


(はら)いたまえー清めたまえー……祓清(はらきよ)ー!」


 王女の不思議な呪文と共に、ルシアンの魔力が込められた宝石が鋭い光を放ち、まとわりつく黒霧を瞬時に焼き払う。


「セシリィ、入るわよ」

「母さん……まためちゃくちゃ瘴気に襲われてんねー。ほとんど顔が見えないじゃん」

「まったくよ……お願いできるかしら」

「しゃーなし。はらきよー!」


 王妃に(まと)わりついていた瘴気を払いながら、王女が辟易(へきえき)したように呟く。


「ほんと、やんなっちゃうね」

「そうね……こうして毎日祓って貰わなきゃ、前も(ろく)に見えないわ」

「毎日祓っても、次の日には同じだけどね。もうルシアンのネックレスがないと安心して眠れないよ」


 おかげで寝る際にルシアンを想いながらの“夜の室内運動”が習慣化したことは、さすがに母親には言えなかった。

 

「……また今日もメイドが辞めたそうよ」

「そりゃそうでしょ。私でもそうする」

「……そうね。大臣たちも何かと理由を付けて城には立ち寄らなくなったし。民も多く他国に流れたと聞くわ」


 収まる気配どころか、日に日に目に見えて増えている瘴気。

 既に何人もの城勤めの人間が離れて行っており、国の運営にも支障が出ていた。

 それどころか、国の根幹でもある民がいなくなっている。


「……もうこの国終わりじゃん?」

「ちょっと……あなたがそんなこと言ったら……」

「事実くない? あーあ、私も王女じゃなければなぁ~……今頃ルシアンの子ども産んで……はぁ」

「バカなこと言ってないで、今日も王――お父様の所に行きましょう」

「はいはーい」


 これも日課となったものの1つ、王への進言。

 毎日時間を見つけては、『ルシアンを呼び戻せ』と王に伝えるのが彼女たちの仕事になっていた。

 今も尚残ってくれている民や城仕えの者たちのために。


「失礼します、あなた」

「ん? ……またおまえらか」

「はい。あなた、この国を(むしば)む瘴気は日に日に増えております。このままでは我々だけでなく、民の――」

「……そのためにルシアンを呼べと言うのは聞き飽きた!」


 王とて不安なのだろう、その不安を振り払うかのように大声を上げる。


「今ザイモスが必死に瘴気を抑えるための魔術を編み出している!」

「ですがその間にも民や城の者は国を離れて――」

「うるさいうるさいうるさいっ!!!」

「あなた……」


 毎日のように繰り返される、『ルシアンを呼べ』。

 王を蝕むのは、瘴気だけでなく王妃や王女の“その声”もだった。


 王とて、内心では理解していた。だが、一度放逐した男に(すが)ることは、自らの王としてのプライドを粉々に砕くことに等しい。

 その怒りと怯えが、彼を怒声へと駆り立てていた。


「なぜルシアンにこだわる! 魔術師など腐るほどいるだろうが! 大方お前らがルシアンに抱かれたいだけだろう!」

「そ、それは……」


 『そこで否定できないのが私たちのダメなところだよなぁ』と内心で考えつつ、次は王女が口を開く。


「で、そのザイモス様とやらはいつになったら瘴気をどうにかしてくれんの?」

「そ、それは……」

「王国が瘴気に滅ぼされた後でしたー、とか笑えないんですケド」

「だからといって……今更ルシアンに頼れるものか!」


 王女は、今日はルシアンのことを言った訳ではない。

 それにもかかわらず王自らが『ルシアン』の名を出したのは、彼も心の底ではルシアン以外に対処できないことを理解している表れだったのかも知れない。

 しかしその心を塞ぐ雑念があまりにも重かった。


「別にルシアンじゃなくてもさ――」

「失礼します」


 王女の声を遮り、王の執務室に入ってきたのはソニプロフェン王国宮廷魔術師長、現在大賢者を名乗っているザイモスだった。


「王よ、朗報です! 私は今かつてないほど魔素を感じている……瘴気浄化の魔法陣構築はもう間もなくですぞ!」

「……あの、ザイモスさん……?」

「やや、これは王女殿! いかがしましたか?」

「……角……生えてるけど……?」

「何を言って……つ、つのぉぉぉ~~~!?」


 怪訝(けげん)な顔をしながらも伸ばした手に触れた突起物。

 魔人化が進んだ者に見られる、黒い角だった。


「こ、これは……ははは……最近、角型の魔道具を手に入れましてな……!」

「いやその角から瘴気感じるんですケド」

「――何を仰る! 瘴気への対処に日夜励んでいる私に対してそんなこと……そうだ、瘴気を感じるのは研究のせいです! 研究で瘴気を扱っているからです! わかりましたか!? では私はこれにて!」

「めっちゃ早口で喋るじゃん」


 ザイモスが去った後、執務室は静寂に包まれていた。

 誰もが――少なくとも王女と王妃は『もうダメだ』と思っていた。


「……――を呼べ」


 静寂を打ち破り、遂に王が呼んだのは――。


「聖女を呼べ!」


 ルシアンではなかった。

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


次話の投稿は

18時40分頃

となります!

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