第16話 絶対防御のワンピースと、爆散するサイ
「あれは……『ラッシュライノー』か?」
「んなっ!?」
少し離れたところにいたSランクの魔物、『ラッシュライノー』のカース体。
そいつに向けて魔力を飛ばしここまで誘導する。
「(……わざと呼んだでしょ?)」
「(ああ。あいつには悪いが、アイリスの糧になってもらおうと思ってな)」
「(いいけど! 最近アイリスに優しすぎない!? あの鎧だって――)」
「(今まで苦労してきたんだ、大目に見てやってくれ)」
「(……フンだ!)」
「(ありがとな、正妻さん)」
それに、あんなに一途に思ってくれているんだ。応えてやるのが男ってもんだろう。
「アイリス、やるか?」
「……はい!」
強い視線を前方に向けるアイリス。
まだライノー本体の姿は見えないが、猛烈な勢いで迫ってきていることが巻き上がる砂埃や吹き飛ぶ木々でわかる。
マールが『カース・ラッシュライナーはここでも上位種! 里の猛者が連携して――』などと騒いでいるうちに、ラッシュライノーが姿を現した。
5メートルほどのサイのような魔物。巨大な分厚い頭皮と太い角、そして頑強な城壁を一撃で粉々にする突進力が武器の肉体派モンスターだ。
「……受け止めます!」
「受け止める!? 無理だ避けろ! 奴の突進は誰にも止められん!」
マールが叫びながら自分だけ退避している。
通常なら、彼女の言う通り避けるのが基本だ。通常、なら。
「やあああ!」
「ブモォォオオオッ! ――ンモォッ!?」
ドズンと、重たい物同士が衝突したような音を立てて空気を振動させる。
アイリスの剣が、ライナーの頭部を受け止めていた。
「すごい……これがルシアン様の……」
「ブモォォォ……」
「……うそぉ~……」
鎧や剣に付与した『絶対防御』、それに『魔力強化・深』。
これによりアイリス自前の『身体強化』が何倍にも強化され、ライノーの突進を受け止めることができたのだ。
「はぁぁっ!?」
「ブッ!?」
突進を止められたことに戸惑っていたライナー、その頭部を上段から剣を振り下ろすアイリス。
見事ライナーの頭部を爆散させる。
「や、やりました! これもルシアン様のおかげ――」
「それは違う。いくら魔力を強化したところで敵の攻撃を適切に受ける見切り、何よりあの突進を受ける胆力がなければ成しえないことだ。よくやったな」
「……はい!」
これで少しは自信がつけばいいと思ったが、アイリスの表情を見るとうまくいったようだ。
自身の手を見つめ、少し微笑む彼女を見ればそれがわかる。
「(『これで少しはルシアン様に相応しい女に……いえ、まだまだです!』だってぇ~。アイリスって……いい子だよね)」
「(珍しいな、ストレートに褒めるなんて)」
それはいいのだが、心を読まないでやって欲しい。
「お、おい……!」
「何だマール」
戦闘を終え、再び里に向けて歩き出していると、マールが抑えきれないと言った様子で尋ねてきた。
「さっきのは……一体何を付与したのだ!?」
「ああ、今回役立ったのは『魔力強化・深』だな』」
「普通の『魔力強化』とは違うのか!?」
「ああ。通常のに加えて、より効果を発揮するように独自の回路を――」
マールに請われ、付与した魔法の説明をする。
探求心は魔術師にとって必要不可欠な要素だ。マールが求めるなら教えない理由はない。
もちろん『魔力強化・深』以外にも付与した魔法はあるが、今回目立ったはそれだ。
『魂の保存』や『魂装幻夢』などはいずれの機会でいいだろう。
「なんと、そのような方法が……やはり魔術の奥はまだまだ深い!」
「そうだ。世界はまだまだ未知に溢れているぞ」
「……そうだな」
元から里の外に対する憧れが強いマールだ。
彼女が望むなら、連れ出してやらんこともないが……。
「(どうせおっぱいでしょ?)」
「(否定しない。あの陥没の内奥を暴くことは世界の未知を暴くことと同等の興奮が――)」
「むっきーっ!!!(むっきーっ!!!)」
しまった、ついミラとの念話で本音を言ってしまった。
「お、ようやく里に着いたぞ」
ようやくたどり着いたマールの里。
しかし里を囲い外敵から守るはずの石壁が、マールの巫女としての役割を――まるで鳥かごのように捕えておくための物だと思えてしまうのは気のせいだろうか。
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7時30分頃
18時40分頃
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