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第31話 『封印が解かれる時』


 宿の入口まで来ると人影があった。

 人影は俺に気付くと近寄ってきた。


「賢者」

「帰ってこないかと心配してたよ」


 賢者は苦々しい表情を浮かべている。

 申し訳なさが奥底からふつふつと湧いてくる。

 俺は頭を勢いよく下げて謝罪をした。


「すまなかった。俺はどうしようもない馬鹿だ。いくらでも罵倒しても、殴ってくれてもいい」

「頭を上げてよ。君が怒るのは当然の権利なんだ。僕の意思で君の運命を歪めてしまったのは事実なんだから」


 俺は首を横に振る。


「いや、違う。お前が俺を選んでくれたお陰でエメリに出会えた。シーフに出会えた。お前と旅ができた」

「……ブレイブ」

「本当は感謝しかないのに俺は……」

「もういい、もういいんだ。君の気持ちは痛いほど分かったから」


 賢者は肩に手を置き、優しく微笑んだ。

 涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。


「終焉の魔王のところの賢者に聞いた。勇者を選ぶ基準は賢者の気持ち次第だと」

「う、うん。そうだね」

「なぁ、お前はなんで俺を選んだんだ?」


 賢者が明らかに動揺する。

 珍しく歯切れが悪い。

 少ししてから、恥ずかしそうに言う。


「凄く単純な理由なんだけど、笑わないでよ」

「ああ、笑わない」

「猫」

「は?」

「君が猫を助けているところを偶然見かけたんだ。その時に『僕は彼と旅としてみたい』って思ったんだ」


 俺は吹き出してしまった。


「なんだそれは?」

「笑わないって言ったじゃないか!」

「すまん……だが、それは流石に」


 笑いが止まらない俺を賢者が顔を赤くしながら怒る。

 その声が聞こえたのか、窓からエメリとシーフが顔を出す。


「やっと帰ってきた思ったら何騒いでるの?」

「どうせ酔っ払ってんすよ? あーあー、酔っ払いは嫌っす」


 ああ、俺はこんなにも手に入れていた。

 それに気づかなかったなんて。

 でも、気付けて本当に良かった。



×××




 翌日、俺は仲間を連れて孤児院に行った。

 終焉の魔王とインニェルは快く俺たちを出迎えてくれた。

 そして、終焉の魔王の私室にて顔合わせをする。

 エメリとシーフは驚きを隠せないようだった。


「このおじいちゃんが魔王?」

「大人しいジイさんにしか見えないっすけど」


 二人の反応に終焉の魔王は笑う。


「こう見えて儂は強いんじゃぞ?」

「全然見えない」

「強がりはやめた方がいいっすよ?」


 一方、賢者はインニェルと顔を合わせていた。


「会うのは初めてだね」

「私たちは管轄の国からは基本的に動きませんから。こうして顔を合わせているのがイレギュラーなんです」

「そうだね。なんだか不思議な感覚だ。まるで鏡に写った自分を見ている気分だよ」

「遺伝子は一緒ですからね。違いがあるとしたら性別くらいです」


 二人はそれぞれの勇者を見て、再び視線を合わせて笑い合う。


「お互いに難儀な勇者を選びましたね」

「否定はできないかな」


 しばらく談笑をした後に本題に入る。


「終焉の魔王、魔王の企みについて聞きたい」

「そうじゃな。じゃが、儂が話すより適任がいる。お嬢ちゃん、お前さんは魔王の記憶を持っているそうじゃな」


 エメリは頷く。


「それは、あの娘が意図的にお嬢ちゃんに刻みつけたものじゃ。他魔王の魔力に反応して記憶の封印が解かれるように仕組まれておる」

「うん。それはなんとなく分かっていたわ」

「儂は今から記憶の封印を解く。そうすれば、あの娘がしようとしていたことが分かるはずじゃ」


 ついに魔王のしようとしていたことが明らかになる。

 期待と興奮が僅かに体を熱くした。


 しかし、エメリは乗り気ではない。


「封印を解くのは良いけど、具合が悪くなるからちょっと辛いのよね」

「安心せい。儂は正式な方法で魔力をお嬢ちゃんに与える。分かりやすく言うと、他の魔王は鍵のかかった扉を力付くで開けていたんじゃ。その点、儂はちゃんと鍵を使うからお嬢ちゃんへの負担はありゃせん」

「分かった。私、おじいちゃんを信じるわ」


 終焉の魔王がエメリの前に立つ。

 そして、魔力を纏った人差し指でエメリの額を突いた。

 その瞬間、エメリは大きく目を開き茫然と立ち尽くす。


「おい、エメリ」

「え? あ、ブレイブ?」


 肩を叩くと、エメリは正気を取り戻して俺を見る。


「大丈夫か?」

「う、うん、大丈夫。記憶が一気に甦ったからちょっと驚いただけ」

「そうか」


 俺はエメリをソファーに座らせる。

 エメリは深呼吸を何度か繰り返す。

 落ち着いたところで、俺は言った。


「何を思い出したか話してくれないか?」

「うん。整理しながら話すからちょっと長くなるかもしれないけど」

「大丈夫だ。時間はいくらでもある」


 エメリはこくりと頷き、ゆっくりと話し出した。



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