英霊の大戦斧エンデュミオン
第60層のボスモンスターは以前とは、まるで違う。
というより、あれは“人間”だ。
巨人とまではいかないが、かなりの巨漢。マキシマスのエンデュミオンらしき大戦斧まで握りしめている。
なんて筋肉質。まるでドワーフ族のような鋼の肉体をしていた。
いったい、何者なんだ?
「……彼がボスモンスター、なのですか」
意外な敵にキョトンとするルドミラ。俺も正直、混乱していた。
以前の第60層のボスモンスターは、人間ではなかった。
ナハトの記憶では骸骨モンスターで、伝説の海賊船長バーソロミューが出現するはず。だけど、あれは明らかに違う。
あの巨漢は間違いなく人間。
鷹のような鋭い目つきでこちらを睨む。
いったい、何者なんだ……この男。
「お前は……」
そう俺が問いかけると、バリアの中のナハトが叫ぶ。
「ラスティ! その男は俺の親父だ!」
「――なッ」
驚いた時には、ナハトの親父は俺の目の前にいた。
あの巨大な斧を振り上げていたんだ。
な、なんてスピードだ。
この巨体でマキシマス以上の敏捷性か!
「むんッ!」
大戦斧が落ちてくる前に、俺は+10覚醒ヴェラチュールへ武器を変えて防御。
凄まじい衝撃によって腕が痺れた。
……いや、これはまずいっ!
「ラスティさん!」
「スコルたちは距離を取れ! 危険すぎる!」
「は、はい……!」
しかも、この一撃は斬撃が飛び散る範囲攻撃。周囲を巻き込む可能性大。
幸い、斬撃はルドミラやエドゥが処理してくれたが。
「……ほう。貴様が星帝シックザール様が危険視していた少年か」
「っ! あんた、ナハトの父親なんだろ! なんでシックザールの軍門に下っているんだよ」
そうだ、これはあまりにもおかしすぎる。
それに……ナハトは親を殺されたとも言っていたはず。じゃあ、この目の前にいる男は何者なんだ!?
「それを知ってどうする。どうせ貴様たちは、この第60層で死ぬというのに!」
また斧が迫ってきた。
嵐のような物凄い強振で。
なんちゅうバケモノみたいなパワーだ。こんなの初めてだぞ。
しかも、まるで反撃する隙がない。
確かにこれは、バリアを張って守りを固めるしか方法がないな。
「……ぐっ!」
「すまない、ラスティ! エンデュミオンを奪われてしまった!」
マキシマスがバリアの中から叫ぶ。やっぱり、あれはエンデュミオンか!
まさかボスモンスターが武器を奪うなんて……。
いや、ナハトの親父は人間だ。
武器を奪ったりしても、なんら不思議はない。
「ちなみにその男にダメージはまったく入らない。傷ひとつつかんのだ」
敵の攻撃を回避していると、ルーシャスの声が響く。
マジかよ。
ダメージすら与えられないのか。
確かに、これだけの手練れがいて突破できていないんだ。ありえる話だ。
というか、そんなのどうやって倒せばいいんだ。
……だから、みんな立往生しているのだろうけど。
覚醒無人島開発スキルで、俺は石壁を生成・設置しまくった。これを盾にするしかないが――直ぐに大戦斧エンデュミオンで破壊されていく。
一撃で粉々とはな……。
30、40と壁を作っても直ぐに破壊される。なんて野郎だ。
退避しているテオドールが俺のもとにきた。
「……マジか、あの肉ダルマ。あの攻撃だ、回復も追い付かないぞ」
「テオドールの手札でなにかないか?」
「トリプルジョブといえど、あのバケモノを止める手立ては……いや、試してみなければ分からないか」
テオドールの手に複数の小型ボールが現れた。
サイズ感的にミカンサイズ。
あれは……形状的に“爆弾”か!?
「お、おい。それ……」
「鍛冶屋の能力で作った小型爆弾さ。小さいが、火力を最大にしてある」
それを投げつけた。
小型爆弾がナハトの父親の足元へ転がっていく。
その瞬間――
あの小型爆弾が炸裂。予想を遥かに超える大爆発を起こした。……な、なんつう威力だよ!!
この階層が吹き飛ぶんじゃないかって威力だ。
「う、おおおおおおっ!?」
エドゥの防御魔法ソウルリフレクターで爆風から逃れることができた。危ねぇ。
「す、すごい……」
「離れるんじゃないぞ、スコル」
「はいっ」
やがて爆発は収まり、煙も晴れていく。
あの威力なら少しはダメージが入っても――。
「……なにかしたか?」
……バカな! テオドールの特製爆弾をまともにくらって傷ひとつない!? それどころか、ピンピンしてやがる。
「バケモノめ……」
悔しそうに唇を噛むテオドール。
おそらく切り札だったんだろうな。それが通用しないなんて……ヤバすぎる。
「ってやあああああああッ!」
気づけば、魔剣ヘルシャフトで斬りかかるナハトの姿があった。親父の背後を取った。
「……ナハト。貴様は学ばんな」
「もうこんなことは止めろ、親父!」
「すべては星帝シックザール様の為。この命を捧げると誓った」
「ふざけるな! 親父はそんなことを言わない。あの男に洗脳されているんだ!」
そこでナハトの爆炎スキル『ヘルブレイズ』が炸裂するが、親父の大戦斧エンデュミオンが黒紫のオーラをまとって――猛反撃。
な、なんだ……あの技は!?




