巨大塔トロイメライ:第60層 - 世界樹イグドラシルの間 -
【巨大塔トロイメライ:第40層】
第1層から駆けあがっていくこと――三時間。
道中のモンスター、ボスモンスターは全て撃破されていた。先行したみんなのおかげだ。見事に討伐されていたんだ。
しかも驚いたことに被害の痕跡はまるで見られなかった。
誰かの遺体が転がっているのではないかと心配になったが、杞憂だったようだな。
「凄いですね、みなさん。回復もなしに第40層まで攻略しているとは」
感心を示すルドミラは、残党モンスターを槌武器である『覚醒アマデウス』を振るい、一撃で沈める。
――そうだな、それに多分もう第50層まで攻略していそうな気配だ。
「ここまでモンスターもほとんど残っていませんね」
「ああ、スコル。みんな強いから、ここまでは順調に踏破できているようだ」
だが、第50層以降は敵の強さも、難易度も跳ね上がる。
回復なしで第100層までたどり着けるのだろうか。
期限もあと2日もない。
間に合うといいんだが……いや、間に合わせてみせる。
でなければ、シックザールが世界を掌握してしまう。それは世界の終焉を意味する。
俺たちは更に上の階層を目指す。
階段を上がり、その階層ごとに現れる異色な世界。季節が移り替わるように、このトロイメライの階層ダンジョンの姿形、構造はまるで違う。
モンスターも違えば、その強さも桁違い。
地上に棲息するようなモンスターと同等と思い戦えば、痛い目を見る。
それはナハトの過去の記憶から経験済み。
先遣隊に情報は伝えてあるのものの、やはり以前とは少し変化している。それは残党モンスターを倒してきて実感した。
【巨大塔トロイメライ:第60層】
【世界樹イグドラシルの間】
とうとう第60層にたどり着いた。
限りなく最強のボスモンスターが構える特殊階層。
やはり、敵が強すぎるのか、みんなここで足止めをくらっているようだった。
広々としたドーム状の空間。そこら中に緑の根が張っている。
中心には昔見た絵本で描かれていたような『世界樹イグドラシル』。
その片隅で強固なバリアを張ってボスモンスターの攻撃に耐える先遣隊。
ナハト、アイファ、コルキス。
サラマンダーギルドのみんな。
王家ヒュッケバインの面々。
そして、我がドヴォルザーク帝国レオポルド騎士団たち。
これだけの手練れがいて、第60層で足止めを喰らっているということは――ボスが強すぎるってことか。
「みんな守りに入っているのだ。つまり、ヤバイ敵ってことか」
非常に警戒心を示すハヴァマール。震えているようにも見えた。
……そうだな、俺も正直この第60層に踏み入れてから空気が変わったと感じた。
呼吸すら浅くなるような威圧感。
明らかに以前とは違う殺気。
「この“世界樹”の空間……もしや」
「なにか覚えがあるのか、エドゥ」
「…………剥ぎ取られた神代の……」
ぶつぶつと独り言を言うエドゥは、俺の言葉が耳に入っていない様子。……なにか違和感を感じているらしい。
「ともあれ、危険だぞ。ラスティ」
テオドールは黄金の林檎を召喚しまくった。俺たちや先行していた仲間たちも回復させた。
「おぉ、なんだこの回復!」「おや、ラスティたちではないか!?」「ついに追いついたか、ラスティ様!」「おーい、こっちだ!」「いや、こっちに来るな!!」「危険すぎるぞ!!」「この階層のボスモンスターは倒せないぞ!」「とうとう犠牲者も出ちまった……」「そもそも、回復なしって無理だろ!」「こんなことに命を懸ける理由あるのかよ」「馬鹿。シックザールを倒さないと、どのみち世界が終わりだ!」「そうだ、だから……ここで必死にラスティさんたちを待っていた」「ああ、みんなの力を合わせれば勝てる」「テオドールさんの召喚モンスターのおかげで回復できた」「今しかないな!」
みんな俺たちの到着に歓喜していた。
中には希望を失いかけている者もいたが、しかし直ぐに持ち直した。
……犠牲者。
確かに地面には何人がレオポルド騎士団の騎士が死亡している。
ここで死者が出るとは。
いや、第60層まで無事にたどり着けているだけでも凄いことだ。それも回復スキルも、回復アイテムもなしに。
「ずいぶんと遅かったな、ラスティ」
「ナハト……! すまない」
「いや、まだ時間はある。希望もある。……だけど、第60層は昔とは違う。気をつけろ!」
アイファの展開するバリアの中で叫ぶナハト。
みんな防御魔法に徹しているということは、ボスはそれほどの強敵ということか。
あのナハトでさえも太刀打ちできないのか……?
俺はゲイルチュールを構え――
『…………』
ドンッという気配と共に、それは上から降ってきた。
……コイツが第60層のボスモンスターか。
いやまて……どういうことだ。これは!




