聖女のスキル『セクエンツィア』
気づけば、俺たちは吹き飛ばされていた。
いったい、なにが起きた……? なにも見えなかった。
「……ぐ、ぅ」
起き上がると、地面が大きく抉られていた。ナハトの父親の攻撃でああなったらしい。……なんて破壊力だ。
幸い、エドゥのソウルリフレクターのおかげで負傷者はいなかった。
「大丈夫か、スコル!」
「はい。ケガはありません」
みんなも無事だ。ただ、ナハトは額から血を流していた。……アイツ、技をモロに喰らったのか。
「ナハト……!」
「平気だ。親父の技は俺が一番よく分かっている。それと、アイファが回復してくれるからヘッチャラさ」
なんとナハトの流血が消えていた。治癒したんだ。
ウソだろ……?
このトロイメライでは、回復アイテムと回復スキルは使用禁止のはず。……いや、ここまで到達できたんだ。なにかしら特殊なスキルがあってもおかしくはないのか。
「どういうことだ?」
「わたくしから説明しましょう」
アイファが駆け寄ってきた。
そして、その秘密を打ち明けてくれた。
「補助スキルの『セクエンツィア』です」
[セクエンツィア]
[補助スキル]
自然回復速度を大幅にアップする。
自然治癒速度を大幅にアップする。
有効時間:3分
「なるほど! 自然による回復は対象外か」
確かに『回復スキル』ではなく、これは『補助スキル』だな。ルールの穴をついた方法というわけだ。
みんなアイファの補助スキルのおかげで、ここまで突破できていたんだな。
俺にもみんなにもセクエンツィアが付与され、驚いた。
「おぉ……体がポカポカする。疲労まで取れるのか」
「はい。重症を負っても回復します。ただし、死に至るダメージを受けた場合は、この補助スキルでも対応できません」
さすがに蘇生はできないってことか。
だが、これがあれば戦える。
テオドールの黄金の林檎も合わせてな!
体勢を立て直していると、ナハトの父親が俺の方へ向かってくる。
「有象無象たちよ。トロイメライ攻略を諦め、世界の変革を受け入れよ。なれば、その瞬間までは生存を許そう」
「親父はそんなことを言う人ではなかった!」
「……我が愚息。まだ戯言を……もういい、貴様は息子でもなんでもない。この大戦斧エンデュミオンの錆となれ」
凄まじい速度で大戦斧を振るうナハト父。
対するナハトは魔剣ヘルシャフトで迎え撃つが、無茶だ。
俺は『覚醒無人島開発スキル』で“金の壁”を生成。
「こ、これは! ラスティ!」
「そうだ。今までの旅で散々拾う機会があったからな。俺のアイテムボックスには“金”がたんまりある! 今使う時がきた!」
そう、俺は『ゴールド』を消費して、金の壁を作ったんだ。
「おぉ! その手があったか、兄上!」
「ああ、ハヴァマール。エチェナグシアや金鉱山ダンジョンのアテンで拾ったヤツさ」
そして、読み通り大戦斧エンデュミオンの刃が通らなかった。
ガンと鈍い音がするだけだ。
「……っ!」
それもそうだ。金をふんだんに使い、壁も厚さも最大。
金は熱には弱いが、斬撃など物理攻撃は耐えられる強度はある。
次の行動に出ようとすると、サラマンダーの人たちやルーシャスがバリアの中から声を掛けてきた。
ひとまず、俺はルーシャスのところへ。
「どうした?」
「陛下、我々も出向きたいのですが……」
「いや、ここは俺たちに任せてくれ。むしろ、先に上を目指してほしい」
「……分かりました。上層階への階段は特定済みなので、お任せを」
レオポルド騎士団とサラマンダーは、先行してもらうことにした。
ヒュッケバインの人たちにも、そうしてもらおうとしたのだが。
マキシマスが首を横に振った。
「僕たちは大戦斧エンデュミオンを奪われた責任がある」
「申し訳ない。私がいながら……」
二人とも強いはずなのだが、あのナハト父には歯が立たないのか。なら、尚更……いや、二人の実力は俺がよく知っている。
可能性はまだあるさ。
俺は無人島開発スキルで即席の『剣』を生成した。
「これを使うといい、マキシマス」
「剣を一瞬で作るとは……ありがたい」
「といっても最低限の武器だ」
「しかし、なぜ剣? 僕は斧の方が……」
「いやー、なんか剣の方が似合うなって思って」
「そうかな」
マキシマスは納得がいかなさそうな表情だが、俺は剣がしっくりきた。
あのイカツイ大戦斧よりも、剣を振るっている姿の方が似合う。
「――危ない!」
ルドミラの槌の一撃で、ナハト父の猛攻を弾く。……助かった。
「ナイス!」
「そろそろ動いた方がよさそうです」
「そうだな。ここから反撃開始だ」
全員の力を合わせれば勝てる。俺はそう確信している
もう一度、無人島開発スキルを使いつつ――ヤツの動きを封じる。これが俺流だ。
「来るがいい、ラスティ」
「……ああ! あんたを止めてやるさ!」
幸い、この塔の建っている場所は『島国ラルゴ』だからな。俺の無人島開発スキルが最大限に発揮される。
だから勝つ! 絶対に!
いったん休止とさせていただきます。
必ず近いうちに再開いたします。




