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―― 翌日 ――
ヨクヨ商会は休業日だったため、ベベの村の人々は部活をしたり、乗り合い馬車で大きな町へ出かけたり、遺跡の魔族の集落に遊びに行ったりしていた。
そんな中、おじいさんは眉間にシワを寄せながら、頭に右腕だけがくっついた大魔導師と将棋をしていた。
「ううん……」
おじいさんが唸ると、大魔導師はおじいさんに言った。
「ひろしさん、次の一手でわしの飛車が飛び出しますぞ」
「ううむ……、そうですね……。さすが大魔導師様です」
おじいさんがそう答えると、大魔導師は右手で頭をコリコリと掻きながらおじいさんに言った。
「ひろしさん。わしの事はウヌウラと呼んでください。大魔導師様と呼ばれるのは同世代として話しづらいですからな」
それを聞いたおじいさんは笑顔を見せるとウヌウラに言った。
「そうですね、ではそう致します。ではウヌウラさん、この一手はいかがでしょうか」
おじいさんは意表を突く一手をお見舞いするとウヌウラは動揺しながらおじいさんに言った。
「おおっ! その手がありましたか、ひろしさん! これは難しくなりましたぞ……」
その言葉におじいさんは少し嬉しそうに笑うと、ウヌウラは頭をコリコリと掻きながらアゴをカクカクと鳴らした。
しかしおじいさんはウヌウラを気遣うように言った。
「ウヌウラさんは将棋は今日が初めてなのにもかかわらず、とてもお強いので感服します」
「いえいえ。これは空から見た戦況のようなものです。動き方を覚えれば、敵陣に攻め込む戦いのようのものですじゃ。では、ひろしさん。この一撃はいかがかな?」
ウヌウラはそう言うと、おじいさんが思いもよらなかった場所に飛車を置いた。
「あっ!」
おじいさんはウヌウラの一手に思わず声をあげると、深々と頭を下げてウヌウラに言った。
「参りました。この後どう動いても負けです」
それを聞いたウヌウラも頭を下げると、ウヌウラは嬉しそうにおじいさんに言った。
「ひろしさん、あなたが軍師でないのが勿体ない。わしが大魔導師と呼ばれたのは戦況を把握しつつ的確に指示が出来たこと。ひろしさんは軍師の才能がありますな」
「軍師……。ですか?」
「ええ。もしくは王や大臣などもよろしいですな。ひろしさんは、駒の能力を良く分かって適材適所に配置する能力があるように見えますぞ」
「ええっ!? わたしがですか?」
「間違いありませんぞ。このウヌウラの目は節穴ではありませんのじゃ……。とは言え、実際の目は節穴になってしまいましたがな。はっはっは」
ウヌウラは骸骨になってしまった目を指差しながら笑うと、おじいさんもウヌウラの冗談に笑った。
◆
その頃、村の広場では竜騎士がラゴと模擬戦をしようとしていた。
しかしラゴは竜騎士が持っている槍をよく見ると、不思議に思って竜騎士に尋ねた。
「竜騎士殿、その槍は……」
竜騎士は自分の槍を見るとラゴに答えた。
「正直に言ってしまえは鈍らだ。重くて槍の重心も酷い。持ってみるか?」
竜騎士はそう言ってラゴに槍を投げると、ラゴはそれを受け取って驚いた。
「竜騎士殿、こんな槍で私と戦ったのですか?」
「うむ。自惚れとは怖いものだ。そのような槍でも勝てると思っていたのでな」
するとラゴは思いついたように竜騎士に言った。
「竜騎士殿。試しにこのミスリルの槍を使って私と模擬戦をしてもらえませんか? 私は自分の太槍を持ってきます」
「よろしいのか?」
「はい。竜騎士殿の実力を知りたいのです」
「承知した。ではその槍を使わせてもらおう」
こうして竜騎士とラゴの模擬戦は武器を交換して行われることになった。
◆
ザワザワザワザワ……
村の広場に輪を作るように人だかりができると、その人だかりをかき分けるようにしてラゴと竜騎士が入ってきた。
「「わぁぁあああ!!!」」
パチパチパチパチパチ!!
村の人々が盛り上がると、アカネが中に飛び出して観客に大声で言った。
「さぁあ! 注目の試合が始まるよぉ!!」
「「おおぉぉおお!!」」
そしてアカネはラゴの所へ駆け寄ってラゴを紹介した。
「まずはお馴染み、槍の使い手ラゴ選手! 言わずとしれたインメリア騎馬隊の副隊長でインメリアさんの彼氏だぁああ!」
「「わぁぁあああ!!」」
ラゴは少しだけ恥ずかしそうな表情を見せると、慌てて兜の面を下げた。
次にアカネは竜騎士の所へ駆け寄ると竜騎士を紹介した。
「さてこちらは、古代から蘇った竜騎士選手! 伝説によると、竜騎士1人で1000の歩兵を蹴散らす一騎当千の兵だぁぁあ!」
「「おおぉぉぉおお!!」」
竜騎士はクルクルとミスリルの槍を美しく回して、腰を低く槍を構えた。
アカネは中央に出ると、両者に声をかけた。
「試合は実践形式だけど、急所の頭、首、心臓のどれかに寸止めかチョイ当てで試合終了ね。あとラゴっちは皮を斬られたら即終了ね」
「はい」
「承知した」
それを聞いたアカネは飛び跳ねるように後ろへ下がると、試合開始の宣言をした。
「それじゃ、いくよ! 試合開始!!」
ザッ! ザザッ!!
試合開始の合図と共に、ラゴは大盾を前にしてシールドバッシュの構えを見せた。
しかし竜騎士は、昨日戦ったのと同じようにラゴに向かって走り込み、槍を使って棒高跳びのように空へと飛び出した。
それを見たラゴは昨日のように大盾を翻して空中の竜騎士を叩きつけようとすると、竜騎士はミスリルの槍を体ごと思い切り回転させた。
ブンッ!!
ガォォオオン!
竜騎士の槍はラゴの大盾を捲り上げるように大きく弾き返し、そのまま急降下した。
「しまった!」
ラゴは慌てて槍を構えたが……、
コン!
ラゴの兜に竜騎士が槍の先を軽く当てていた。
それを見たアカネは勝者を宣言した。
「竜騎士の勝ちぃぃ!!」
「「おおぉぉおお!!」」
するとその時、なんとインメリアが観客をかき分けて竜騎士の前に出た。
そして、竜騎士に会釈すると笑顔で竜騎士にいった。
「竜騎士殿、貴殿は相当な腕前と見た。私も貴殿と勝負がしたい。よろしいか」
竜騎士も槍を降ろして会釈すると、インメリアに答えた。
「承知した。その勝負、受けましょう」
「「わぁぁあああ!!」」
こうして第2試合が始まったのだった。




