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コラナッカはドラゴンが突撃してくるのを確認するとハンドルを切ってUターンした。
そしてアクセルを全開に踏み込むとネイクラに言った。
「もういい、おまえじゃ扱いきれねぇらしい。逃げるぞ!」
しかしネイクラは必死にコラナッカに言った。
「ま、待って! 操ってみせる! ぜったい操って見せるから! だからやらせて!」
それを聞いたコラナッカは一瞬突き放そうとしたが、過去に自分が受けた冷たい言葉を思い返して冷静になった。
そしてニヤリと笑うと、ネイクラに言った。
「おい、勘違いするな。今はおまえの出番じゃねぇって事だ。最後の大逆転のために力を溜めておけ。今は逃げてるんじゃねぇ、誘い込んでるんだ」
それを聞いたネイクラは落ち着きを取り戻すと、大きく頷いてドラゴンを操るのをやめた。
コラナッカはその様子を見ると心の中で呟いた。
(ドラゴンが操れねぇとなると、おれらじゃ戦闘能力が低すぎる……。やはりベベの村に救援を求めて、被害を出さなくてすむ魔王城の辺りまでドラゴンを誘導するのが最善か……)
コラナッカは結論を出すとエリシャウに言った。
「エリシャウ、おまえをベベの村へ飛ばす。それでおれらは魔王城まで走り抜ける。おまえはベベの村で援軍を呼んできてくれ」
「はいっ! アレをとうとう使うときが来たのですね!」
「そうだ、我らの長年の研究の成果、鳥人間だ!」
「はいぃぃい!」
エリシャウは嬉しそうにグローブボックスから折りたたまれた黒い布のような物を取り出すと、急いで服を脱ぎ捨て、その布を肌に密着させるように装着し始めた。
それを見たネイクラは驚いて声をあげた。
「エ! エリシャウさん! うら若き女性が肌を……」
しかしエリシャウはゴーグルを装着しながら目を輝かせてネイクラに答えた。
「なにを言っているのですかぁっ! この鳥人間スーツは我らが長年研究してきた鳥になれるスーツなのです! 今を逃して、いつ実験するのですかぁぁ!!」
エリシャウは鳥人間スーツを完璧に装着すると、助手席のドアを開けてコラナッカに言った。
「コラナッカ様! いつでもスタンバイOKです!」
それを聞いたコラナッカは手元の計測器と地図が一体化した魔道具を覗きながらエリシャウに言った。
「角度OK、距離OK、進行方向から10時の方角だ。行け!」
「はぃぃぃいい!」
エリシャウはデカトラの助手席から飛び出すと、モモンガのように両手両足を広げ、風を受け止めながらフワリと飛び立った。
そして腹に装着された風の魔石が作動すると、闇夜に乗じて一気に空へと飛びあがった。
エリシャウは順調に飛行を続けると、その飛行性能に感動して涙を流した。
「ううう……、素晴らしい飛行性能ですぅ。私たちの長年の研究、鳥人間スーツがこんなにも優秀だったなんて」
エリシャウは空を飛びながら感動の涙を流した。
そして、腕に取り付けてある方位磁石を確認しながらベベの村へと飛んでいった。
◆
それからしばらく後、コラナッカは順調に魔王城まで走り抜け、エリシャウが呼びに行った援軍を待つ事になった。
魔王城を背に逃げ場が無くなったコラナッカはデカトラから降りると、上空からゆっくりと降りてくるドラゴンを緊張した面持ちで迎えた。
竜騎士が操るドラゴンは優雅に地上に舞い降り、ドラゴンの背に乗った竜騎士はコラナッカに言った。
「我は竜騎士。そしてこちらのお方は大魔導士殿だ。お前は弱いな。我らは強い相手と戦いたい」
それを聞いたコラナッカは2人が骸骨であることを確認すると、ネクロマンサーが操っていると理解して、突然ヘコヘコしながら答えた。
「いやぁ、申し訳ございません。ですがご安心ください。今から強力な者がやって来ますので」
「ほう、それはどれほどか」
コラナッカはその言葉に相手の無知を感じ取り、ひれ伏すように言った。
「申し訳ございません! 今言った事は助かりたいがためのウソ! 我らに強い者などおりません! どうか、私とこの娘は助けてください!」
それを聞いた竜騎士は興ざめしたように言った。
「なんだ……。やはりそういう事であったか」
すると大魔導士がコラナッカに尋ねた。
「お主、ネイクラという者は知らぬか? ネクロマンサーの女じゃ」
それを聞いたコラナッカは平然とした口調で答えた。
「ネイ……、ええと、すみません、なんでしたっけ」
「エイクラじゃ。ん? ナイクレ? おや? なんじゃったかのぅ」
大魔導士がネイクラの名前を忘れていると、コラナッカは恐る恐る大魔導士に尋ねた。
「あのぅ、お2人は人間ではないようですが、アンデッド様かなにかでしょうか……」
すると大魔導士は笑いながら答えた。
「はっはっは! そうかそうか、忘れておったわい。我らはネクロマンサーに蘇らされてのぅ。とは言っても操られてはいないのじゃがな」
それを聞いたネイクラは思わず驚きの表情を浮かべると、大魔導士は動きを止めてデカトラに乗っているネイクラに言った。
「お主……、まさかネクロマンサーの女ではなかろうな?」
「ひっ!!」
大魔導士の言葉にネイクラは思わず声を漏らすと、コラナッカは機転を利かせて冷静を装いながら答えた。
「あ、すみません。この娘はネクロマンサーとか、そういうんじゃないんです。ええと何というか……」
その時コラナッカの遠い視線の先にデカトラのライトが見えていた。
コラナッカはそれが援軍のデカトラだと悟って、話を引き伸ばした。
「ええと大魔導士様、この娘はアンデッド様を見たことが無くてですね……、単純に怖がっているというか……」
しかし大魔導士はコラナッカに答えた。
「ほう。ではなぜネクロマンサーという言葉に驚いたのじゃ?」
「あ、それは簡単です。ネクロマンサーが怖いからです。はは」
「……ネクロマンサーが怖い?」
「はい。ネクロマンサーは死体を、いえ、死体様を操りますので、怖いなぁと」
「はっはっは! なんじゃ死体様とは。面白いことを言うやつじゃな」
大魔導士が大笑いをした瞬間、何かがドラゴンに当たり、竜騎士と大魔導士は突然煙に包まれた。
それは、援護にやって来たおじいさんが放った痺れ玉だった。
「うぐっ!」
「なんじゃ!?」
しかし、痺れ玉は体の大きいドラゴンと属性異常耐性があった大魔道士には効かず、麻痺した竜騎士は大魔導士が魔法で麻痺を解除した。
竜騎士は槍を構えて戦闘態勢を整えると、大魔導士は動揺しながら小さく呟いた。
「なんと高度な麻痺魔法じゃ……。このわしが気配すら感じ取れぬとは……。これは面白くなってきたわい」
大魔導士は魔法の杖を構えた。




