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―― 夜、ネクロマンサーの国 ――
ネイクロの指示を受けた従者はネイクラ奪還のための英雄を集めるため、英雄たちが住んでいる高級住宅街にやってきていた。
従者が高級住宅街にやってくると、闘技練習場で模擬戦をしていた竜騎士の英雄と大魔導師の英雄が戦いの手を止めて従者に尋ねた。
「戦いか? 我らは戦いたくて待ちきれぬ」
「こんな小さい闘技練習場では、わしの魔法は10分の1しか撃てぬ。はやく戦わせるのじゃ」
しかし従者は困惑しながら2人に答えた。
「いえ、ええと、今回の任務は人探しなのです。敵国に囚われているネイクラ様を奪還するという……」
それを聞いた竜騎士は簡単そうに答えた。
「なんだ、ならば我らで行こう。ドラゴンを1頭借りても良いか」
「え、ええっ!?」
大魔導師も笑いながら言った。
「はっはっは! なんじゃ、そんな簡単な事か。我らに任せればよいのじゃ。地図は持っておるか?」
従者は腰袋から地図を取り出すと広げて説明しながら答えた。
「こちらのヤクウィー領のどこかだと思うのですが、ネイクラ様の詳しい居場所はわからないのです。見つけられますでしょうか」
すると大魔導師は少し困ったが、戦いたいあまりに嘘をついた。
「簡単じゃ、そのネイクラという者の持ち物をよこすのじゃ。そうすれば、魔法で探し当てられるのじゃ」
「ほ、ほんとうですか!? ならばお願いしたいです! ドラゴンが使えないか聞いてまいります! ネイクラ様のお持ち物もお持ちしますので、しばしお待ちを!!」
従者は喜び勇んで走り出すと、隣にいた竜騎士が少し驚きながら大魔導師に言った。
「大魔導師殿、さすがですな。そのような魔法も使えるとは」
しかし大魔導師は笑いながら答えた。
「はっはっは。あれはウソじゃ。生前のお主の国にもネクロマンサーがおったじゃろうから知っておるじゃろう。ネクロマンサーが蘇らせた者は術者の範囲から出てしまえば自由の身だと。従者が戻る前に出発じゃ」
「おお、なるほど! さすがは大魔導士殿! 今のうちにドラゴンに乗って出てしまえは我らも自由の身。しかもネイクラとやらを奪還する大義名分もある。それならば心置きなく大暴れできますな!」
「もし追っ手やらで我らの身が危うくなれば、そのネイクラとやらを連れ帰れば問題なかろう」
すると竜騎士は持っていた槍をブンブンと回しながら言った。
「大魔導師殿! では、さっそくヤクウィー領とやらへ行きましょう!」
竜騎士は嬉しそうにドラゴンの元へと向かった。
◆
ネイクラが、ネクロマンサーが支配した皇都に連れて来ていたドラゴンは、術の範囲の外になってネイクロが代わりに管理していた。
竜騎士はそのドラゴンの一頭に手綱をかけると慣れた手つきでよじ登り、羽の付け根を両足で押し込みながら強制的に従わせた。
その様子を見ていた大魔導師は感心するように竜騎士に言った。
「竜騎士殿、さすがの手際の良さ。やはり竜騎士の称号は伊達ではありませんな」
「いえいえ、大魔導師殿。このドラゴン、屍ですが反射反応が残っております。反射反応でドラゴンをコントロールするガツデ流の操龍術なら問題ありませぬ」
竜騎士はそう言ってドラゴンを伏せさせると、大魔導師をドラゴンの背にに乗せてヤクウィー王の領地へとドラゴンを向かわせた。
◆
その時、ネイクロは自分が管理しているドラゴンが術の範囲の外へ向かって離れていくのを感じ、慌てて城のテラスに飛び出した。
そして飛び去るドラゴンを確認すると思わず声をあげた。
「ドラゴンが! なぜだ!」
ネイクロは集中してドラゴンを操ろうと術を発動した。
ドラゴンはネイクロの術を受けて引き返そうとしたが、ドラゴンに乗っていた竜騎士は両足で羽を操り返し押し込み、ネイクロのコントロールを阻止しつつけた。
ネイクロはコントロールできないドラゴンを術から切り離して殺そうとしたが、その瞬間、ドラゴンが術の範囲から外れた事を感じ取った。
「くそっ!!」
ネイクロはドラゴンを取り逃がし、強く拳を握った。
◆
竜騎士の操るドラゴンはヤクウィー領へと入ると、なんと偶然、地上を高速に走るデカトラを見つけた。
それを見た大魔導師は不思議に思って竜騎士に言った
「あの地上のぼんやりと光る物は、相当な速さじゃな」
「ふむ。確かにドラゴンほどとは言わぬが、馬の3倍は速いかもしれませぬ」
竜騎士はそう言うとドラゴンを降下させてデカトラに近づいた。
そのデカトラにはコラナッカ男爵とエリシャウがネイクラを連れてコラナッカ男爵領へ向かっていた。
ネイクラは、竜騎士によってネイクロの操りを解かれたドラゴンが上空から近づいて来る事を察知すると、集中して目元をピクピクと動かした。
しかし、その瞬間、
バシン!!
「へぶっ!」
その様子を見たエリシャウは渾身の平手打ちをネイクラに食らわせて言った。
「目元ピクピクはダメよ! インメリアさんから聞いているんだから!」
「ひぃぃ! ごめんなさい!」
それを聞いたコラナッカは全てを理解してエリシャウに言った。
「こいつが目元をピクピクさせたって事は、ドラゴンが近くにいるかもしれねぇな」
コラナッカは運転席の下から筒状の物を取り出すと、突然窓を開けて空に放った。
パン!
シュゥゥゥウウ……
ピカァァアアア!!
なんとコラナッカが放ったのは閃光弾だった。
閃光弾が光り輝くと空は昼間のように明るくなり、竜騎士が操るドラゴンが丸見えになった。
そしてコラナッカはそのドラゴンの背にに2人の人影を確認した。
「おいネイクラ! ドラゴンを呼びやがったのか!?」
「ち、ちがう! 私じゃない! けど他の誰かが操っている!」
「な、なんだと!? あのドラゴンを無力化しろ! じゃねぇと、おまえも殺されるかもしれねぇぞ!」
それを聞いたネイクラはパニックになって必死にドラゴンを操ろうと目元をピクピクさせた。
しかし上空の竜騎士はそのたびに手綱と両足でドラゴンを従わせた。
竜騎士はニヤリと笑うと大魔導師に言った。
「あの地上の光る物にネクロマンサーが居るようですな。このドラゴンを操ろうと必死なようです」
「はっはっは、なんと強運なのじゃ。あの地上の光るものにネイクラという者がいるかもしれぬな」
「ですが、あの光の魔法で存在が分かってしまった以上、軽く暴れなくてはなりませぬな」
竜騎士はそう言うと、地上のデカトラにドラゴンを突撃させた。




