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その頃ネイクラはクラクモの治療薬のお陰で目が見えるようになり、コラナッカの指示の元、ヨクヨ商会のデカトラを洗車させられていた。
「なんで私が、こんなことを……」
ネイクラがブツブツと呟くとそれを聞いていたコラナッカがネイクラに言った。
「おいおい文句言うな。お前は村の人を殺そうとしたんだぞ? 殺されないだけ幸せだろうが。……って、おれが言えた義理じゃねぇけど」
しかしネイクラは弁解するように言った。
「あの時は私も激昂して冷静ではなかったわ。けど冷静になった今は……、とんでもない事をしようとしていたと反省している」
「へ……。まぁ、どちらにしろお前はしばらく働いてもらうぜ。もし逃げようとすれば、その首輪がドカンだ」
コラナッカはそう言うと、ネイクラの首に取り付けた首輪を指さした。
ネイクラは苦い表情で首輪を触るとコラナッカに答えた。
「わかっている。逃げるつもりはないし、反抗するつもりもないわよ」
するとコラナッカはネイクラの術を計測したデータを書いた紙を見ながらネイクラに尋ねた。
「そういや、魔石を使った計測器に興味深いデータが出たんだけどさぁ、ネクロマンサーってシャーマンなの?」
しかしネイクラはコラナッカの言っている事が良くわからず聞き返した。
「シャーマンとはなんだ」
「ああ、シャーマンってのは霊界とこの世界を繋いで大災害を予言したり、霊力をつかって病気を治したりするヤツだ。最近は見かけねぇが、おれが小さい頃はまだ現役が居たな」
「なるほど。我らはシャーマンとは違うが、霊界から魂を大量に呼び寄せる事ができるのは確かだ。とはいえ、本当は魂を複写したものだがな」
「へぇえ、そいつは興味深いな。で、その複写した魂を死体や骨に宿らせて操るのか」
「そうだ。だが、屍を操るには術者の素質が関係している。ドラゴンのように大型で知能もある生き物は私のような天才でなくては操れぬ」
それを聞いたコラナッカは一瞬ニヤリと笑うと、突然わざとらしくネイクラを褒めだした。
「いやー、お前スゲーな! 恐れ入ったぜ。ドラゴンを操れるのがそんなに凄いとは知らなかった。お前は天才なんだな。ほんと凄いよ。さすがは最強のネクロマンサーだ!」
コラナッカがネイクラを褒めるとネイクラは思わず口元を緩めて得意になった。
「ま、まぁな。ドラゴンほどになるとネクロマンサーの言うことなど聞かず、この世界に複写した魂を留めることも難しい。そこらの狼などを操っているネクロマンサーとは違うのだ」
「なるほどなぁ、やっぱ天才様の言う事は違うねぇ。ちなみに人間の骨を操れるやつらは上等なネクロマンサーなのか?」
「そうだな、完全に骨になった屍を大量に操れる者は上等と言えるだろう。まぁ、私が本気を出せば500のスケルトンも扱えるがな」
「おお、さすが天才様。じゃあ、まだ内臓が残ってるような獣ならもっと操れるのか?」
「あたりまえだ! だが、そんな死んで間もない獣を操るのは下級のネクロマンサーのやること。我々はそのような無粋なことはしない」
「へぇぇ、ネクロマンサーにもそういう誇りがあるんだな」
「その通り。下級のネクロマンサーたちは狼や熊の死体を配下にする。死んで間もない死体ほど扱いやすいから下級のやつらはいつも森を徘徊して死体を取り合ったり、わざわさ殺したりしている。惨めなものだ」
「そうか、だから新鮮な死体を扱うのは下級みたいで誇りが許さねぇんだな」
「当たり前だ。それに我らが操る屍は足を折られたり、頭を割られたりすれば戦闘不能だ。そうなりやすい小さな獣ほど下級が扱う。だから私のように超大型のドラゴンを扱える者は素晴らしいのだ」
「おお~、さすがはネイクラ様だ。だが、ドラゴンは死んで間もなさそうだったが、あれは良いのか? 骨になったごラゴンを扱えたら偉いんだろ?」
「それはそうだ。だが、完全に骨になったドラゴンなど私や兄でも扱えぬ。不可能というやつだ」
「なるほどな。っていうか操ってる屍はやっぱ死ぬのか?」
「もちろんだ。頭を破壊されれば一瞬で死ぬ。我らが呼び出した魂は頭に宿るのだ。それに、我らが術を解除すればその時も死ぬ」
「へぇぇ、活かすも殺すもネクロマンサー次第ってことか。なかなか怖い存在だな」
「そのとおり! 私は怖い存在なのだ! だが、まれに気づかぬうちに我らの術の範囲外に逃げる屍もいる。そういう屍は自由の身になるがな」
「へぇ。脱走アンデッド的なやつもいるのか」
「うむ。だが私くらいの天才になれば術の範囲から出ようとする前に殺すがな」
「それにしても本当にお前は凄いネクロマンサーなんだな。かっこいいじゃん」
「そ、そうに決まっているだろう。私は格好良いのだ」
ネイクラの言葉を聞いたコラナッカは「こいつチョロいな」と心の中で笑った。
◆
その頃、アリオネルダたちはドラゴンたちと共に遺跡に戻っていた。
ハーピィたちは眠ってしまったドラゴンの子どもたちを優しく抱きかかえながらドラゴンから降りると、アリオネルダも疲れた様子でドラゴンから降りた。
アリオネルダは腰かけ岩に座ると、心配したハーピィがアリオネルダに尋ねた。
「アリオネルダちゃん、大丈夫? 疲れた?」
「ええ。まだネクロマンサーの術の使い方が上手くないみたいで、どうしても力が入ってしまって」
「そっか、慣れないことは大変だよね。ちょっと待っててね、あたし飲み物持って来る」
「ごめんなさい、ありがとう」
するとその時、ドラゴンがアリオネルダに話しかけてきた。
「疲れさせてしまったようで、すまない。だが、もう少し私を信頼して力を抜いて欲しい。あなたは私を強制しない。私はあなたを信頼している」
それを聞いたアリオネルダはドラゴンに答えた。
「ありがとうドラゴンさん。もっと信頼するわ。でもいつか急にドラゴンさんを暴走させてしまったらどうしようって気持ちがあるの」
「心配しなくても良い。だが心配ならば空を飛ぶ時だけは誰か飛べる者と居れば良い」
「そうね。こんな臆病な主人でごめんなさい」
「謝らないで欲しい。私はあなたもハーピィたちにも感謝している。これからも、よろしくお願いしたい」
アリオネルダは少しだけ笑顔を取り戻してドラゴンに答えた。
「ええ。こちらこそ宜しくお願いします、ドラゴンさん」
それを聞いたドラゴンは満足そうに首を伸ばした。




