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―― 西の島 ――
アリオネルダたちは西の島に到着すると、そこには3頭のドラゴンと2頭の小さなドラゴンがいた。
ドラゴンたちは屍のドラゴンを見ると警戒したが、しばらくすると1頭のドラゴンが屍のドラゴンに話しかけてきた。
「我らしか知らない隠れ島にやって来れるとは、やはりお前は弟……」
「……そうだ兄さん」
「弟よ。ネクロマンサーに操られているのだな」
すると屍のドラゴンは否定するように答えた。
「兄よ。今は操られているというよりは、助けていただいてここに来た。この者とハーピィたちは敵ではない」
「……そうだったか。お前は子どもたちが気になったのだな」
「そうだ。だがここで皆に会えるとは思わなかった。兄よ、そして妹たちよ、感謝しかない」
すると2頭の妹たちが屍のドラゴンに話しかけた。
「兄さん、また会えて良かった」
「ええ。兄さんもう平気なの?」
「2人とも、あの時はすまなかった。あの時は屍となった仲間にやられて死んでしまい、操られた私は危うくお前たちまで……。だが今は大丈夫だ。」
「もういいの兄さん」
「でも、奥様が……」
「妻のことはネクロマンサーに操られながらも、他のドラゴンと一緒に南へと旅立ったのを見た。だが、それで良いのだ。妻はまた新しいドラゴンの命を産んでくれる。それで良い……」
するとその時、ハーピィたちの声が聞こえていた。
「やば! めっちゃ可愛い! 寄って来てくれた!」
なんと小さなドラゴン2頭が甘えるようにハーピィたちにくっついていた。
ハーピィたちは優しく小さなドラゴンたちを撫でると、小さなドラゴンたちは目を瞑って気持ちよさそうにした。
「来てくれたのぉ? いい子だねぇ」
「かわいいー! こっちにもおいで」
「ドラゴンの子ども、ほんと天使!」
するとその様子を見ていた兄のドラゴンが屍のドラゴンに言った。
「弟よ。私は今から冷徹をもってお前に言う。よいか」
それを聞いた屍のドラゴンは静かに頷くと兄のドラゴンは話を続けた。
「残ったドラゴンたちはみな南の島へと旅立った。我々もそこへ行くつもりだ。だが我々がお前の子どもたちを南の島へ連れていけば、お前の妻の新しい夫に殺されるかもしれぬ」
屍のドラゴンは兄の言葉に静かに答えた。
「分かっている。今まで世話をしてもらって本当にすまなかった。この子たちは私が連れて行く」
「すまぬ弟よ。妹たちも適齢期。すぐにでも南の島へ行きたいのだ」
「……理解している」
すると屍のドラゴンは妹たちを見て言った。
「すまなかった妹たちよ。本当は子どもたちが見捨てられていると思っていた。しかし、今まで育てていてくれたのだな……」
すると妹たちはハーピィたちと遊んでいる子どものドラゴンを見ながら屍のドラゴンに言った。
「あの子たちを見捨てるなんて出来なかったわ」
「ええ。だから出来るだけここでお世話しようとお姉様と決めたの」
妹たちの言葉に、屍のドラゴンはゆっくりと頭を下げて感謝した。
「妹たちよ、心から感謝する。幼い子どもたちを連れて逃げてくれた事、そして、この子たちを育てていてくれた事も……」
それを聞いた妹たちは優しい眼差しでハーピィたちに甘えるドラゴンたちを見つめ、兄のドラゴンはじっと弟を見つめた。
そして兄は大きく翼を広げると、妹たちに言った。
「妹たちよ、南の島へ行くぞ。名残惜しいが、このまま話していては益々《ますます》名残惜しくなる」
それを聞いた屍のドラゴンは何も言わずに下を向いた。
妹たちはハーピィたちに甘える小さなドラゴンたちを見ながら声をかけた。
「じゃあね、かわいい子どもたち」
「また、いつか会いましょうね!」
そして大きく羽を広げると、それを見た小さなドラゴンたちは嬉しそうに妹たちに駆け寄った。
「ぴぃぃいい!」
「ぴぴぴぴっぴ」
しかし妹たちは力強く羽ばたくと、兄と一緒に空へと飛び上がった。
「……ぴ?」
「うぴぴ?」
小さなドラゴンたちは意味を理解できず不思議そうな顔で妹たちを見上げると、妹たちは目に涙を浮かべて小さなドラゴンたちを見つめながら大きく羽ばたいた。
そして妹たちは前を向くと、兄と一緒に南へと旅立っていった。
その様子を見ていたハーピィたちは驚きながら慌てていた。
「え、ちょっと?」
「どこ行ったの?」
「この子たちは?」
すると一部始終を聞いていたアリオネルダがハーピィたちに言った。
「この子たちは、この屍のドラゴンの子ども。それで、あのドラゴンたちは兄弟で今までこの子たちの世話をしていました。でもお母さんは居ないんです」
それを聞いたハーピィたちは少し悲しそうに言った。
「そっか、この子たちを育ててくれたんだ……」
「さっきのドラゴンたち、悲しそうだったよね」
「うん、きっと育ててたら情がわいちゃうよね」
すると子どものドラゴンたちはまた、嬉しそうにハーピィたちのところへトコトコと走ってやって来た。
ハーピィたちはやって来たドラゴンの子どもたちを優しく抱きしめると、何度も撫でて声をかけた。
「お父さんが来てくれてよかったねぇー」
「お母さんなんて居なくて大丈夫だよー」
「うん、あたしたちがお母さんだからね」
ハーピィたちがドラゴンの子どもたちを優しくあやすと、ドラゴンの子どもたちは嬉しそうに伸び上がった。
◆
その頃ネクロマンサーの国では、帰ってこないネイクラについて、ネイクロが従者に尋ねていた。
「ネイクラが帰らないのは敵に捕まったと考えるべきだと言うのだな」
「……はい」
「くそっ、何をやっているんだネイクラは! あいつは昔から私の足を引っ張ってばかりだ! 能力があるのに失敗ばかり!」
ガン!!
ネイクロは玉座を力いっぱい拳で叩くと、従者は怯えて頭を下げた。
するとネイクロは従者に尋ねた。
「ネイクラが捕らえられたとすれば、我らに何が起こる?」
従者はその質問に慌てたが、思いを巡らせてネイクロに答えた。
「尋問や拷問で我らの情報を漏らすのではないかと……。そしてもし洗脳やされたり迎合したりすれば、強力なネクロマンサーとして敵になるのでは……」
それを聞いたネイクロは眉間にシワを寄せながら従者に言った。
「それはまずいな」
「……はい」
「ネイクラを奪還しろ」
「はっ!」
「蘇らせた英雄を使っていい。できるだけ早く捕まっているネイクラを奪還しろ。難しければ……、殺してもいい」
「……。……はい」
従者は下がって皇帝の間から走り出た。
そして従者は廊下を走って外へと向かいながら呟いた。
「ネイクラ様を奪還しろだなんて言われても一体どうすれば……。居場所さえわからないのに……」
従者は城の外へ出ると、蘇らせた英雄たちが住む区画へと急いだ。




