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その頃、旧リムリテイル王国の領地へ逃れたガンデロ四世とガンデロ帝国の人々は急速に食糧が足りなくなり始めていた。
旧リムリテイル王国の王宮の謁見の間ではガンデロ四世が側近の従者から報告を受けていた。
「皇帝陛下。現在、国民の約半分が1日1食の生活を送り、このままでは餓死者が出ます。そして、兵はおりますが兵站(戦うための食料や物資)がなく、ネクロマンサーどもと戦う事も難しいでしょう」
それを聞いたガンデロ四世は小さくため息をつくと、側近の従者に返答した。
「まさか、このような日が来るとは。仕方がない、この旧リムリテイル王国の領地の返還を願い出よう」
側近の従者はガンデロ四世の言葉を聞いたが、あまりのことで理解できず聞き返した。
「返還……。それは……」
「この土地をマデマメヤ国に返し、ガンデロ帝国の国民を守ってもらえないか交渉するのだ」
「なっ! 皇帝陛下、それは正気でしょうか!? そうなれば皇帝陛下は間違いなく……」
「死は覚悟の上だ。もし、ガンデロ帝国の民が助かるのであれば、私の命など軽いものだ」
「しかし、お言葉ですが皇帝陛下、ガンデロ帝国の国民も命の保証は……」
「分かっている。だが、このまま何もしなくても国民の命の保証はない。いま出来る最善の策はマデマメヤ国との交渉だ」
「……はい、その通りです」
「では、使いの準備をさせろ」
「しかし……」
「できるだけ早く出発させるんだ。私が直筆で嘆願書を書く。紙とペンを持ってこい」
「……。はっ」
側近の従者は力なく返事をすると、謁見の間から走って出ていった。
◆
それから数週間後、ガンデロ四世の嘆願書は受理され、旧リムリテイル王国の領地はマデマメヤ国に返還された。
ガンデロ四世は処刑される事となっていたが、おじいさんの提案により、ガンデロ四世は魔王エヴによってヴァンパイアの能力を封印する腕輪を付けられ、秘密裏に王宮から追放された。
領地の管理は五王会議の協議の末、旧王宮に魔王エヴが入ってガンデロ帝国の兵士を引き継ぐ事になり、領地自体の管理はマコ王とマツリ王がする事になった。
そして、ガンデロ帝国の国民は数日かけて土地の余っているヤクウィー王の領地に入り、一時的に大規模な難民キャンプに集められた。
逆に難民として旧リムリテイル王国領から逃げてきていた人々は、希望する者は帰ることが許された。
しかし、旧リムリテイル王国領の難民は、今となっては町を作るくらいに経済力も発展し、税率も安いことから、帰ることを希望する者は少なかった。
―― ヤクウィー王領、西の難民の町 ――
今日もマルちゃんとゲゲロっち、そしてリッチと仲間たちは農作業を終えて酒場へ向かっていた。
しかし、今日は新人がマルちゃんに肩を組まれて絡まれていた。
「いやぁ、元気になってほんと良かったよ!」
なんと肩を組まれていたのはガンデロ四世だった。
「ああ。みんなのお陰だ」
すると仲間の1人がガンデロ四世に言った。
「いやほんと、餓死寸前で荒野に転がってたから驚いたぜ。ってか、なんであんな所で倒れてたんだ?」
それを聞いたリッチは、本当はガンデロ四世だと知っていたがチクリと言った。
「もしかしたら、長年忠誠を尽くした者をリッチにした報いかもしれませんね」
「え? なにそれ」
それを聞いたガンデロ四世は顔を硬直させて下を向いた。
しかし、仲間の1人は笑いながらリッチに言った。
「そういえばリッチは昔大変だったんだろ? リッチになるのって罰ゲームかなんかなの?」
「まぁ、そんなところですかね。いやぁ~、過去働いていた所はなかなかのブラック企業だったので。まぁ、今となってはリッチも気に入っていますけどね。死にませんし」
それを聞いたガンデロ四世はさらに冷や汗を流して硬直した。
すると仲間の1人がガンデロ四世を見て言った。
「そういや、おまえの名前なんだっけ? おれら普段はあだ名で呼び合ってんだけど」
ガンデロ四世は何も言えずに黙っているとゲゲロっちがみんなに言った。
「では、イケてるオジさんでイケオジはどうですか? 昨日も酒場の女性たちが彼を見てテンション上がってましたし」
マルちゃんはそれを聞くと慌ててゲゲロっちに言った。
「そうか? そんなにテンション上がってたか?」
「ええ。マルちゃんは気づかなかったんですか? あのいつも勝ち気なホールのミーケルアちゃんが顔を赤くして彼に酒を渡してましたからね」
「ええっ!? わたしを平気で平手打ちするミーケルアちゃんが!? ……まぁ、平手打ちされるのも好きなんだけど」
それを聞いていた仲間たちがマルちゃんに言った。
「なんだ気づかなかったのかよ」
「顔真っ赤にして内股だったぜ」
「声もめっちゃ高くなってたし」
するとリッチがみんなの意見をまとめて言った。
「では、あだ名はイケオジにしましょう」
「おっけー」
「あいよ」
「だな」
「ですね」
「仕方ない」
こうしてガンデロ四世はイケオジとして難民の村で生活することになった。
マルちゃんは再びイケオジに肩を組むと、思い出したように皆に尋ねた。
「そういやみんな、難民は王都の家に戻って良いって言ってたけどさ、お前たちはどうなの?」
すると仲間たちは口々に言った。
「いや、帰んねぇかな。もう兵士はやだし」
「だってネクロマンサーの国の近くだろ?」
「だよな。ガンデロ帝国より質が悪いだろ」
「だよなー。まぁ、自分は追放された国王だから帰るも何も無いんだけどさ、噂のネクロマンサーってすげー怖いじゃん?」
「死体を操るんだって言ってたな」
「怖ぇよな。でも死体強ぇのか?」
「死体は生前のように戦えるって」
「え、生前のように戦えんの? ってか、そしたらネクロマンサーやばくない? だって、英雄の墓とかから死体蘇らせたら、英雄出てきちゃうってことだよね?」
「あ、まじそれな!」
「そっか、怖っ!!」
「やば! 最強か?」
それを聞いたイケオジは大量の冷や汗を流した。




