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その頃、皇帝の間では近衛騎士団長がガンデロ四世に進言していた。
「皇帝陛下、お逃げください! 皇都の人々は順調に避難をしています。金属兵を失い、軍事費もコメに割いてしまい、現在の我が軍ではドラゴン3体相手に時間を稼ぐことで精一杯です。ここは皇帝陛下も安全な所へ!」
するとガンデロ四世はゆっくりと立ち上がって呟いた。
「まさか、このような事になるとはな……。もはやこれまでか」
ガンデロ四世は近衛騎士団長の言葉に避難を決めた。
◆
その後、数日かけてガンデロ四世と皇都の人々は南へ避難し、併合していた元リムリテイル王国の土地へと逃れた。
そしてネクロマンサーたちはガンデロ帝国の皇都を占領し、避難した人々を追いかけることは無かった。
やがて集落にいたネクロマンサーたちも皇都へと移動し、全員が城へとたどり着いた。
そしてネクロマンサーたちは大勢の英雄騎士や大魔導師たちが眠る英雄墓を見つけ出し、次々と術で蘇らせて操り、強力な兵士とした。
―― ネクロマンサーが支配した皇都の城 ――
ガンデロ四世がいた皇帝の間には玉座が2つ並べられ、ネイクロとネイクラが並んで座っていた。
妹のネイクラは嬉しそうに兄のネイクロに話しかけた。
「お兄様、ガンデロ帝国はお父様から聞いていたほど強くはありませんでしたね」
「そうだな。これならば最初からガンデロ帝国を攻めていれば良かった」
「ええ。それにしても、あの最弱と言われていたヤクウィー辺境伯の領地でお兄様たちが捕まるだなんて……」
「いや、ネイクラよ。あの戦いではドラゴンどころか、操っていた屍は全滅した。それに散り散りになったネクロマンサーたちは何人も行方不明だ。敵は強かった」
「そうでしたね……。責任を押し付けた、新しく来た女も役に立たなかったようですね」
「そうだな……。だが、まぁいい。今はこうしてガンデロ帝国の城に居るんだ。ヤクウィーのやつらも、ゆくゆく倒さなければならないが今は力を蓄えよう」
「はい、お兄様。私たちネクロマンサーを人として扱わなかった人間への復讐は始まったばかり。今は恐怖に震えるがいいわ」
「ああ、その通りだ。人間どもは全員奴隷として従わせてやろう。自分たちがネクロマンサーたちにした事を悔いて生きるがいい」
ネイクロは不敵に笑った。
◆
その頃、魔族たちが住むベベの村の近くの遺跡には、ネクロマンサーのアリオネルダがネネたちと一緒に針仕事をしていた。
ネネはアリオネルダの丁寧な仕事を見ると、少し恥ずかしそうに言った。
「アリオネルダさん、針仕事がとても上手ね。私、少し恥ずかしくなってしまうわ」
それを聞いたアリオネルダは少し驚きながら答えた。
「え、あ、いえ……。私、孤児院では針仕事をしていたので」
「そうだったのね。でも本当にきれいな縫い目。ヨクヨ商会の制服って肩のラインが難しいけれど、とってもきれいに仕上がってる」
「あ、ありがとうございます……」
アリオネルダが少し笑みをこぼすと、近くで針仕事をしていたハーピィたちも集まってきた。
「わぁ、ほんとに凄い!」
「きれいね。とっても器用」
「あはは、私の見せられない」
ハーピィたちもアリオネルダの針仕事を褒めると、アリオネルダはどうして良いか分からず下を向いた。
するとハーピィの1人が嬉しそうにアリオネルダに言った。
「そうそうアリオネルダちゃん、これプレゼント! メメちゃんも、あたしたちも付けてる髪飾りなんだ」
ハーピィはそう言うと、ハーピィの羽で作られた髪飾りをアリオネルダの髪に優しく挿し込んだ。
そしてハーピィは手で水の鏡を作り出すと、アリオネルダに顔を見せた。
「あっ……。きれい……」
アリオネルダは美しい羽の髪飾りに目を大きく開けて喜ぶと、突然大粒の涙を流し始めてハーピィに言った。
「こんなにきれいな髪飾りを頂いても良いのでしょうか……」
するとハーピィは静かにアリオネルダを抱きしめて答えた。
「もちろんだよ。これからも仲良くしようね!」
仲間のハーピィたちも嬉しそうにアリオネルダに抱きついた。
そしてメメも後ろからアリオネルダを優しく抱きしめた。
するとその時、遺跡の管理を任されているガーゴイルの大きな声が響き渡った。
「みなさーん! 終業の時間でーす! 残業はしないでくださいねー!」
「「はーい!」」
魔族たちが嬉しそうに返事をすると、アリオネルダに抱きついていたハーピィの1人がアリオネルダに言った。
「じゃ、仕事も終わったし、村に部活しに行こうよ!」
それを聞いたアリオネルダは不思議そうに聞き返した。
「ブカツ……?」
「そう、部活! あたしたち、メロナッカ男爵のダンス部に入ってるんだ!」
「ダン……、スブ?」
◆
その頃、ベベの村ではヨクヨ商会の仕事が終わり、村の人たちは部活動を楽しんでいた。
村ではヨクヨ商会が予算を割き、体力向上、自衛対策、健康増進、文芸文化の向上のため部活動が発足していた。
そして村の人たちと遺跡の魔族たちは部活動を楽しみにしていた。
部活は、おじいさんの「野球部」、大熊笹の「柔道部」、茂雄の「ボクシング部」、インメリアの「剣術部」、おばあさんの「料理部」、哲夫と和代の「算術部」、そして、週に2回メロナッカの「ダンス部」が開かれていた。
そして中でも練習が激しい茂雄のボクシング部で誰よりも息巻いている者がいた。
「茂雄コーチ!! おなしゃぁス!」
それはなんと魔王エヴだった。




