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―― 数日後、ガンデロ帝国 ――
ネクロマンサーたちとの戦いから数日後、ネクロマンサーを連れ帰ったスパイの生き残りは、ひとりだけ皇帝の間でガンデロ四世に謁見していた。
ガンデロ四世はドラゴンをも操るネクロマンサーを連れ帰ったスパイの活躍を労いながらマデマメヤ国の状況を尋ねた。
「スパイよ。危険なネクロマンサーを連れ帰るとは見事であった。魔導師団に調べさせたところ、1人は異常な程のネクロマンサーの力があったようだ。ドラゴンを操っていたに違いない」
「はっ! 労いのお言葉、恐悦至極にございます!! 帰国途中、国境を超える際に仲間を失いましたが、皇帝陛下のお役に立て、大変光栄でございます!」
「ほう、仲間を……。ならばお主には褒美を倍やろう」
「はっ! ありがたき幸せ!」
「それと、お前はネクロマンサーの操る屍たちとマデマメヤ国の兵たちの戦いを見たそうだな。敵の戦力はどうだったのだ?」
「はっ! マデマメヤ国の戦力は高く、魔法に関しても高度であります」
「ほう。それはどういう事か具体的に言ってみろ」
「はっ! マデマメヤ国の兵の練度は高く、馬は屈強で速く、救護班までも充実しておりました。そして魔法に関しては500ほどのスケルトン兵を一瞬で灰に。それだけではなく白金級を超える魔法に精霊魔法、そして……」
そこまで聞くとガンデロ四世は少しだけ苛立ちながらスパイの生き残りに言った。
「もう良い。単刀直入に聞く。マデマメヤ国の戦力はガンデロ帝国と比べてどの程度なのだ」
「……」
スパイの生き残りは黙ってしまうと、ガンデロ四世は足を組み替えて再び尋ねた。
「遠慮はするな。正直に言え。命令だ」
するとスパイの生き残りは冷や汗を流しながら口を開いた。
「あのマデマメヤ国の兵が攻めてくれば、我が国も苦戦するのではと……」
ザワザワザワザワ……
スパイの生き残りの言葉に一同はザワついたが、ガンデロ四世は冷静に答えた。
「そうか。分かった、下がって良い」
「はっ!」
スパイの生き残りは下がって側近の従者たちと並んだ。
するとガンデロ四世は側近の従者に尋ねた。
「連れ帰ったネクロマンサー3名はどうした」
「はっ! 現在地下の牢獄におります」
「仲間がいるかどうかは聞けたか?」
「いえ、仲間は居ないの一点張りです」
「そうか。さすがにドラゴンを操るほどのネクロマンサーに仲間がいれば、恨まれているはずの我が国も危ない。ならば一度逃がして泳がせるか。後をつければ仲間の元へたどり着くだろう」
ガンデロ四世がそこまで話すと、突然皇帝の間の扉が開き兵士が1人飛び込んできた。
「緊急報告いたします! 屍のドラゴンが3頭! 皇都に現れました!!」
「なにっ!?」
ガンデロ四世は驚きのあまり立ち上がると、側近の従者に指示を出した。
「ネクロマンサーが関わっているに違いない! 牢獄のネクロマンサーに事情を聞いてこい!」
「は、はっ!」
「帝国軍は全軍あげてドラゴンを倒せ! 兵士以外の者たちは急いで皇都の住人を避難させろ!」
「「はっ!!」」
「早く行け!」
「「はっ!!」」
皇帝の間にいた者たちは一斉に走り出た。
―― 地下の牢獄 ――
その頃、ネクロマンサーの3人は小声で話していた。
「さすがネイクロ様、隠し持っていた干したコウモリの死体を操って仲間の元へ居場所を知らせるなんて……」
「やはりネイクロ様は天才ですねぇ~」
「ふっ。ドラゴンを操ることに比べれば何でもない事だ」
「いやぁ、私なんか干したコウモリを操ろうとしてもパリパリに割れてしまいますよ」
するとその時、側近の従者が走ってやって来てネクロマンサーたちに大声で言った。
「おいネクロマンサー! 死体のドラゴンが来たぞ! おまえら何をした!」
すると1人のネクロマンサーがニヤリと笑って答えた。
「待ってくださいよぉ。私たち、死体がなければ普通の人間。関わっているワケがないじゃないですか」
「くっ……。では、何か知っていることはないのか? 仲間が助けに来たのではないのか!?」
「そんなぁ。私たち、どうやってこの場所を教えるんですか? ずっと牢獄に居たんですよぉ」
「ぐぬぬ。その通りだな……」
するとネイクロが側近の従者に提案した。
「その屍のドラゴンは他のネクロマンサーが操っているだろう。どうだ、取引しないか。我らがそのドラゴンを止めたら逃がしてくれ」
それを聞いた側近の従者はガンデロ四世が言っていたことを思い出した。
(……そうか。ならば一度逃がして泳がせるか。後をつければ仲間の元へたどり着くだろう……)
側近の従者は不敵な笑みを浮かべて小さな声で呟いた。
「そうだ、ネクロマンサーどもにドラゴンを止めさせて逃がし、その後を追えば一石二鳥ではないか……」
そして側近の従者はネクロマンサーたちに言った。
「わかった。その取引、私が責任を持って保証しよう。今から牢獄から出すが、逃げたら我が帝国の兵が容赦しない。覚えておけ」
こうしてネイクロたちネクロマンサーは牢獄から出され、屍のドラゴンが居る場所へと案内された。
◆
その頃、屍のドラゴンの背に乗っていたネイクロの双子の妹ネイクラは、ドラゴンたちを操って着陸させて、城の目の前までやって来ていた。
「お兄様……、お兄様……」
ネイクラは涙を流しながら兄を心配していると、城から兄のネイクロと仲間2人が手に縄を付けられた状態で現れた。
「お兄様!!」
妹のネイクラは兄を見ると、兄の手の縄を見て激怒し、声をあげた。
「お兄様の手を縛るなんて何てことを!!」
ネイクラは兄たちの後ろにいた側近の従者と兵士を睨みつけると、1頭のドラゴンを操って鋭い爪で側近の従者と兵士を襲わせた。
ズガァッ!
「うあああ!!」
「くっ!」
側近の従者と兵士たちが後ろへ吹き飛ぶと、その隙に兄のネイクロと仲間2人はドラゴンのほうへ走り出した。
側近の従者は慌てて起き上がって兵士たちに指示を出そうとしたが、その目の前にはドラゴンが炎を吐こうと口を開けていた。
「に、逃げろ!!」
ダダダダダダ……
側近の従者と兵士たちは必死に逃げて城へ駆け込むと、ドラゴンは口から炎を吐き出した。




