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リッチは助手席から降りると、目の前からゆっくりと歩いてくるスケルトンたちを見て、首飾りを握りしめながら思わず呟いた。
「できない……。やっぱり、できません……」
リッチはそう言うと、突然スケルトンたちのほうへ走り出して大声をあげた。
「ダリンダさん! ダリンダさん! いませんか! 私です! リッチです! ダリンダさん!!」
その様子を見たコラナッカは舌打ちをしてデカトラをUターンさせた。
「ちっ! 気持ちは分かるが、戦いは個人戦じゃねぇ! 多くの命がかかってるんだ! 魔族のヤツら連れて来ねぇと!」
しかしリッチは大声をあげながら走り続けていた。
「ダリンダさん! いませんか!? リッチです! ダリンダさん!!」
リッチは声をあげたが、その声はスケルトンたちには届かず、スケルトンたちの行進は止まらなかった。
「ダリンダさん! リッチです! ダリンダさん!!」
リッチは叫びながらスケルトン兵の近くまでやって来ると、スケルトン兵は少し不自然な動きをし始めた。
カカカ……、カクカク……
するとその時スケルトンたちの中から、なんと詠唱する声が聞こえてきた。
「Yeri Madadarhi Erima Dahya……」
その詠唱を聞いたリッチは、首飾りを強く握りしめて声をあげた。
「ダリンダさん、居るのですね! それはヘルファイア・アンド・ブリムストーンの詠唱! ダリンダさん!!」
リッチは思わず取り乱すと、詠唱をしているスケルトンは震える右手でリッチを指差し、詠唱を完成させた。
「Noryu Heiya Bagladhi Khira Dagji Ban」
ガクッ!
しかしなんと詠唱をしたスケルトンは足から崩れるように態勢を崩し、そのままそこへ倒れてしまった。
それを見たリッチは慌てて大きな声をあげた。
「ダリンダさん!!」
リッチはその時、他のスケルトンたちがダリンダの骨を気にかけるような素振りを見せている事に気づいた。
そしてスケルトンたちは一斉に足を止めると、リッチのほうを見て震えながら会釈するように頭を下げた。
それを見たリッチは全てを悟って立ち止まった。
「ダリンダさん、みなさん、ごめんなさい……。私は、みなさんに気を使わせてしまいましたね……」
リッチは首飾りを握りしめると、その首飾りに宿る強大な魔力を体内に取り込みながら呟いた。
「ダリンダさん、約束を守れず躊躇してしまってごめんなさい。……でも、もう迷いません!」
リッチはそう言って首飾りの全ての魔力を取り込むと、その膨大な魔力を身体に集め、ヘルファイア・アンド・ブリムストーンの詠唱を始めた。
「Yeri Madadarhi Erima……」
リッチが詠唱を始めると空は重い紅色に染まり、スケルトンたちは静かに空を見上げた。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
そしてリッチは片手を空に突き出し、それをゆっくりと下ろしながら詠唱を完成させた。
「Dahya Noryu Heiya Bagladhi Khira Dagji Ban」
バッ!
ゴォォォオオオオオオ!!!
リッチからは竜巻のような豪火が巻きおこり、その炎は火柱をあげながら走り出した。
その炎は一瞬で大きく広がり、その場にいるスケルトンたちを全て飲みこんでいった。
コ゚ォォォオオオ……!!
そしてその炎は爆発するようにして空へと舞い上がると、炎は美しい光の粒になって消滅し、黒焦げになった大地だけが広がっていた。
リッチは炎でスケルトンたちを焼き尽くすと、両膝をついて両手で顔を覆いながら呟いた。
「ダリンダさん……。もう一度あなたの話を聞きたかった……。あなたが嬉しそうに話す英雄譚を、もう一度……」
リッチはその場にうずくまった。
そして、それを目の当たりにしたガンデロ帝国のスパイの生き残りは、その強大すぎる魔法に言葉を失っていた。
◆
その時、リッチのヘルファイア・アンド・ブリムストーンを見届けたコラナッカは、デカトラを止めて小さく呟いた。
「やったか」
そして、空を見上げると小さく声を漏らした。
「さぁて、これからが本番だな」
コラナッカの視線の先にはドラゴンが羽ばたいていた。




