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その頃、村の大通りではコラナッカとエリシャウが狼たちの死体を刃物で分解しながら話していた。
「やっぱ、アンデッドの死骸だよなぁ。エリシャウ、どう思う?」
「アンデッドのようですね。でも死熊と同じようにウィルス性かも」
「かもな。けど、なんか内蔵が微妙に動いてるんだよなぁ」
するとその時、背後から誰かの声がした。
「それはおそらくネクロマンサーの仕業ですね。昔、教科書で読みました」
コラナッカとエリシャウが振り向くと、リッチが立っていた。
「うおっ、ガイコツ! って、そっか、ここはヤクウィー王の領地だったか」
「え、ええ。この領地には魔族も多く住んでますもんね」
リッチは会釈して挨拶をした。
「はじめまして、わたくしリッチと申します」
するとコラナッカとエリシャウも挨拶を返した。
「おれはコラナッカ。男爵だ」
「助手のエリシャウです」
「これはこれは、男爵様でしたか。失礼いたしました」
リッチは片膝をついて深く挨拶をすると立ち上がってネクロマンサーの説明をした。
「コラナッカ男爵。恐らくこのアンデッドはネクロマンサーが作り出したものです。ネクロマンサーは魔術で死体を操る者なのですが、その術の範囲は限られていて、もしまだ内臓が動いているのであれば……」
それを聞いたコラナッカは一瞬で理解して警戒した。
「なるほど、術者がそう遠くない所に居るかもしれねぇってことだな」
「はい、そうなります」
「なら、そのネクロマンサーは……、あいつだな」
コラナッカは1人の若い女性を指さした。
するとリッチは首を傾げてコラナッカに尋ねた。
「あの女性が……。ふむ」
「靴を見ろ。靴に鐙(乗馬する時に脚を通す馬具)の跡がクッキリついてる。だが、この村は馬の匂いがしねぇ……。リッチ、この村に馬はいるのか?」
「畑仕事用の馬が村から離れた厩舎にいるだけです」
「やっぱりな。あの女は長い距離を馬で移動してきたが近くに馬は居ねぇ。間違いなく村から少し離れた所に隠してる。怪しすぎるだろ」
「なるほど。ではあの女性は村の外へ向かっていますが、これから逃走すると」
「そのとおりだ。証拠にこの狼の内蔵が完全に止まった。あいつの術の範囲を離れたようだ」
それを聞いたリッチは感心するようにコラナッカに言った。
「すばらしい洞察力ですコラナッカ男爵。追いますか?」
「当然だろ。こんな面白そうな事なかなか無いぜ」
するとエリシャウも不敵な笑顔を浮かべながら返事をした。
「追跡開始ですねコラナッカ様! うふふふふふふ」
◆
コラナッカとエリシャウ、そしてネクロマンサーに興味があったリッチもデカトラに積んであった盾LOOPYで逃げた若い女性を追っていた。
「やっぱ、馬を隠してただろ?」
「はい、さすがコラナッカ様!」
「しかし馬に乗ってどこへ……」
するとコラナッカは懐から方位磁石と簡易地図が合わさったような魔道具を取り出して太陽にかざした。
「今、朝の6時くらいだから……。ん? このまま行くと……、昔おれが治めてた領地に向かってるな」
馬に乗った女性は現在マコ王の領地になった旧コラナッカ領へと向かっていた。
するとコラナッカは思い出したように声を漏らした。
「あいつ、龍の谷に向かってるんじゃねぇだろうな」
それを聞いたリッチは気になってコラナッカに尋ねた。
「コラナッカ男爵、龍の谷とは……」
「ドラゴンの住処であり墓場だ。なぁリッチ、ネクロマンサーはドラゴンの屍も操れるのか?」
「……はい。教科書によるとネクロマンサーは生まれつきの素質で、その素質が優れた者はドラゴンをも操ると聞きます」
「ちっ……。こいつはヤベぇな。龍の谷には新鮮なドラゴンの屍がゴロゴロ落ちてるだろうからな」
「なるほど、それは脅威となりますね」
「ああ。ドラゴンたちは基本的に平和主義で戦いを好まない。だが、ネクロマンサーが操るなら話は別だろう。……それにしてもネクロマンサーなんてヤツらが本当に存在するなんてな」
「ネクロマンサーは今でもガンデロ帝国で見つかります。ですが、死体を操る事から不吉だと忌み嫌われ、成人の儀式でネクロマンサーの素質が見つかると、西の果てに追放されるのです」
「おいおい、そんな言いがかりで追放かよ」
「いえ、本当のところは現皇帝の祖父にあたる元皇帝がネクロマンサーの側近に殺された事が原因でして……」
「へぇ、なるほどな。……ってかリッチ、ずいぶんガンデロ帝国に詳しいけど、なんでだ?」
「……ははは。実は私、ガンデロ帝国で国を揺るがすほどの大失敗をしまして、追放された者なんです」
「はぁ!? じゃ、おまえガンデロ帝国から来たのか?」
「はい……」
するとコラナッカは大笑いをしながらリッチに言った。
「あっはっはっは! こいつはスゲェ! ガンデロ帝国を追放されたリッチとは驚いたぜ。なぁリッチ、ウチの男爵領で働かないか? こんな面白い人材なかなか居ないぜ!」
それを聞いていたエリシャウもウンウンと頷いた。
しかしリッチは少し下を向いて考えてから答えた。
「いえ、お誘いは嬉しいのですが、私は助けていただいた仲間がおりまして、あの村で一緒に働きたいのです。彼らは大切な仲間なもので……」
それを聞いたコラナッカは笑顔で答えた。
「そっか、ならしょうがねぇな。おれも大切にしたい人がいるから気持ちは分かるぜ。じゃ、副業でどうよ。本業は週休2日?」
「あ、はい。ちょうど今日もお休みです」
「じゃあ今日は日給で3万プナ(1プナ=1円の価値)出すからさ、次回も手伝ってもらいたい時は頼んでいい?」
「日給3万プナも頂けるのですか!? はい! また、お手伝いできることがありましたら、ぜひ言ってください!」
こうしてリッチはコラナッカとアルバイト契約を結んだのだった。




