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その頃、難民の町では元国王のマルちゃんと仲間たちが今日も農作業を終えて肩を組みながら酒場へと向かっていた。
「いやぁ、お前は骨なのに良く働くな!」
「ほんとにな!」
「ってか、どっから力が出るんだよ」
なんとマルちゃんと仲間たちに肩を組まれていたのは、リッチになったガンデロ帝国の元魔導師団長だった。
「はは、リッチなんで。ははは」
仲間たちはリッチの体を触りながら不思議そうに尋ねた。
「てか骨だけでどうやって動いてんの?」
「まじそれな!」
「え、魔法とか?」
「ええと、魔法? ですかね」
「ははは、ですかねってなんだよ!」
「あ、いえ、自分でもよく分からなくて。ははは」
リッチが照れ笑いすると仲間の1人がリッチの肩を叩きながら言った。
「まぁ、そりゃそうだよな。それより、ヤクウィー王の土地で良かったな。ここらは魔族も普通に居るから怖がられないしな」
「あ、はい。本当に良かったですよ。みなさんには感謝しかありません。滝壺に突き落とされてヤクウィー領の水路に瀕死で引っかかっていた私を救ってくださいまして……」
「なんだよ気にすんなよ。だいたい誰かが水路に引っかかってたら誰だって助けるっしょ」
「いえ、私のような者を助ける人間はレアかと。骨ですし」
「そうか? 骨でも困ってたらほっとけなくない? ってか骨で気になってたんだけど、ここに来てから酒場で酒飲んでんじゃん? あれって味とか分かんの? 骨、素通りしてね?」
「あ、ええ。仕組みは良くわからないんですけど、味は分かるんですよ。それに昨日気づいたんですけど、口から飲んだお酒をジョッキで腹で受け取ると、また飲めるんです」
「はぁっ!? なんだそれ! それじゃ1杯頼んだら永久に飲めるってこと?」
「はい、そのようです」
「まじか! そりゃヤベぇな!」
するとその時、町の畑を管理している商人が走って来てマルちゃんたちに大声をあげた。
「おい! 君たち今日はサトゥマ芋の収穫の日だっただろう!? 今日は15の日だぞ! なんで収穫してないんだ!」
それを聞いたマルちゃんは突然冷や汗を流すと、全速力で逃げ出した。
ダッ!!
「あっ! マルちゃん逃げたぞ!」
「あいつ、今日は14の日だって!」
「おれらに嘘ついたのか!? あいつ本当に元国王か!?」
なんとマルちゃんは仕事をサボりたいあまり、今日は14の日だと嘘をついていたのだった。
しかしリッチは落ち着いて商人に言った。
「ご安心ください。運の良いことに、丁度あそこ地面の下に優秀な人材がいます。今から収穫させますので」
リッチはそう言うと、何か詠唱をした。
すると、少し離れた地面から突然骸骨の手が飛び出した。
「うわっ!」
「ちょっ!」
「怖っ!!」
仲間たちが怖がっていると、その手は地面をよじ登るように姿を表した。
それはリッチが操ったアンデッドたちだった。
リッチはアンデッドたちに手招きをして集めると、アンデッドたちに指示を出した。
「この道を真っ直ぐ行った突き当りの畑に埋まっている農作物を200本掘り起こして、あの酒場に持ってきてください」
カクカクカクカク……
アンデッドたちは関節を鳴らして返事をした。
そしてアンデッドたちは縦一列に並ぶと、畑へ向かって行進していった。
それを見送ったリッチは頭を下げながら商人に言った。
「商人様、あとでサトゥマ芋200本はお届けします」
「お、おお。今日中にサトゥマ芋が収穫できれば問題ない。では後で持ってくるように!」
「はい」
するとリッチは仲間たちに言った。
「では、我々は酒場で収穫を待ちましょう」
「さすがリッチ!」
「やるじゃん!」
「今日はおごるぜ!」
「さすがです」
仲間たちとゲゲロっちはリッチと肩を組んで酒場へ行こうとすると、仲間の1人がリッチの胸にある魔石に気づいて不思議そうに言った。
「リッチなにこれ? 宝石?」
「あ、いえ、魔石です。この魔石の力で私はこの世界に居られるんです」
「まじで!? じゃあこの魔石無くなったらヤバいの?」
「あ、はい。消滅……ですかね」
「え、じゃあ試してみようぜ」
仲間の1人がそう言ってリッチの魔石を触ろうとした……、が触らずにリッチに言った。
「ウソだって! 触るわけ無いじゃん!」
しかしリッチは少しだけ驚きながら仲間に言った。
「や、やめてくださいよぉ。ほんと心臓に悪いですよ。って心臓ないですけどね!」
「え、なにそれ? リッチの鉄板ギャグ?」
「あ、ははは。分かっちゃいました?」
「なんだよ、ガッツリ仕込んでんじゃん! ってか言うタイミング待ってただろ?」
「いやぁ、ははは」
「おいおい、頼むぜ相棒!」
こうしてリッチと仲間たちは笑い合いながら酒場へと入っていった。
◆
その頃、逃げ出したマルちゃんは村の外れのベンチに座りながらブツブツと呟いていた。
「いやぁ、早く仕事終わらせたくて14の日だってウソついたのが……、まさかバレるとはなぁ。でも戻って謝らないと。わたしも酒、飲みたいし」
マルちゃんはそう言って立ち上がると、畑の方へ向かって歩き出した。
「面倒だけど、少しくらいサトゥマ芋を収穫して帰らないとマズよなぁ」
マルちゃんはそう言って村の外へ出ようとすると、暗闇の中に無数の不気味に光るものを見つけた。
「ん? なんだあれは」
マルちゃんは目を凝らすと、なんとそれは狼の群れだった。
「うっ! うわぁあ!」
マルちゃんは驚きのあまり声をあげると、狼の群れはゆっくりと歩いて近づいて来た。
「た、たたた、たいへんだ! みんなに知らせないと!」
マルちゃんは慌てて酒場へと向かった。
◆
そのころ、村の酒場ではリッチが何かに気づいたように呟いた。
「……おや? たくさんのアンデッドが近づいてきますね」
それを聞いた仲間たちがリッチに言った。
「って、それ骸骨たちじゃねぇの?」
「サトゥマ芋の収穫終わったか?」
「けっこう早かったな」
「いえ、ええと……、なんでしょう……、骸骨たちとは違う、なんというか狂気じみているというか」
「まじで!?」
「おいおい、まさかお化けじゃ」
「怖えよ、やめろって」
するとその時、酒場のドアが勢いよく開いた。
ドバン!!!
「うわあぁ!」
「ぎぁゃっ!」
「うおおい!」
するとそこには、汗と涙と鼻水で顔をグチャグチャにしたマルちゃんが立っていた。
そしてマルちゃんは大声で言った。
「狼だ! 狼の群れが来たぞ! みんな逃げろ!」
ザワザワザワザワ……
酒場は騒然となった。




