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そのころ居間では、おじいさんが久しぶりに再会した大熊笹と茂雄と話していた。
「大熊笹さん、茂雄さん、先ほどは本当に助かりました」
「いえいえ、良いタイミングでしたな!」
「ははは、間に合って良かったです」
するとおじいさんは気になっていた事を二人に尋ねた。
「ところで……、お二人は先に亡くなられましたが、どうしてこちらへ?」
それを聞いた大熊笹は笑顔で答えた。
「はっはっは! 私は極楽で妻と一緒に息子や孫たちを見守って居たのですが、急に大天狗様が来られましてな」
「大天狗様が!?」
「はい。そして、ひろしさんに協力してもらえないかと言われまして」
「そうだったのですか!? これは本当に申し訳ないです……」
「いえいえ、ひろしさん! 実は大天狗様がわたしの望みを叶えてくれると言うので喜んでお受けしたのです」
すると茂雄も続いておじいさんに言った。
「ぼくの所にも大天狗様がいらして。ぼくの場合は、またひろしさんや大熊笹さんと冒険できるなんて夢のようだって思ってやって来たのですが……」
茂雄は少し目を落とすと大熊笹のほうを見ておじいさんに話を続けた。
「ですが大熊笹さんは交換条件で来たのです」
それを聞いたおじいさんは驚いた表情で大熊笹に目線を送ると、大熊笹は少し表情を暗くしながら話し始めた。
「実は、弟子のアカネさんが指導中の事故で意識不明の昏睡状態でして。それを治す約束でご協力に来たのです」
「ええっ!? アカネさんが!?」
「はい。それもアカネさんは、娘さんを指導しているときに事故にあいましてな。このままでは娘さんも気に病み……」
「……なんと」
その場の雰囲気が暗く落ち込んだその時、突然、勢いよく居間の扉が開いた。
バン!!
「居た! やっと見つけたよ!」
おじいさん、大熊笹、茂雄が一斉に扉のほうを見ると、なんと風呂敷を背負って柔道着を着たアカネが立っていた。
アカネは満面の笑みを浮かべると飛び跳ねながら声を上げた。
「はっはー! 熊じぃ、じぃちゃん、茂じぃ!! ひさしぶり!!!」
アカネはそのまま走り出すと、おじいさんたちに抱きついた。
「超なつかしい! また会えるなんて!」
アカネが笑顔で抱きついていると、驚いている大熊笹がアカネに尋ねた。
「アカネさん、どうしてここへ?」
「いやぁ。あたしさぁ、死んでもないけど昏睡状態だから、ずっと賽の河原の入口でヒマしててさ。そしたら大天狗が来てさぁ」
「アカネさんのところにも大天狗様が?」
「うん。そんで事情を聞いたから熊じぃと一緒にじぃちゃんたちを助けたいって言ったんだ。でも大天狗がさ、あたしの実力を見せろって言うから勝負までしたんだよ」
「勝負ですか!?」
「そうそう。体格のいい烏天狗と相撲しろっていうからガッツリ投げてやったよ。そしたら大天狗は大笑いして、姿まで全盛期の頃にしてくれてさ。熊じぃと一緒にじぃちゃんたちを助けてこいって」
「はっはっは、そうでしたか! これは心強いですな!!」
「ははは、そうでしょ! ……あ、そうだ」
するとアカネは思い出したように風呂敷を下ろすと、中から柔道着を取り出して大熊笹に手渡した。
「はい、熊じぃ」
「こ、これは?」
「いやぁ、あの体格のいい烏天狗を投げたら他の烏天狗たちが喜んじゃってさ。お願いしたら用意してくれたんだよ。これ着たほうがヤル気出るでしょ?」
「はっはっは! さすがはアカネさん、よく分かってますな!」
「そりゃそうさ!」
しかしアカネは突然表情を曇らせると大熊笹に言った。
「ってか熊じぃ、迷惑かけるね。あたしのために極楽から来てくれたんでしょ? あたしが娘の茜衣の稽古で失敗しちゃって……」
すると大熊笹は満面の笑顔で答えた。
「はっはっは! いやいや、ちょうど体が鈍っていたところでしたからな。またひと暴れしてやろうと、丁度良いところでした!」
それを聞いたアカネは静かに目に涙を浮かべると、大熊笹の手を握りながら言った。
「ホントいつもありがとね、熊じぃ。死んでも最高の師匠だよ。ははは」
「はっはっは! アカネさんも最高の弟子ですな!」
大熊笹は大きな笑顔を浮かべながら涙を流した。
◆
その頃、奥の部屋では魔王エヴとインメリアがベッドの上に正座しながら、おばあさんに魔王領の事を説明していた。
「我が魔王領の魔族は今、生きるのがやっとなのです。というのも、ガンデロ帝国の人間どもと結託した上級魔族どもが秘密裏に金を使い込み、我らはジリ貧に……」
するとインメリアも続いておばあさんに話した。
「なので我らは長い間、薄ぅ~いスープと雑草を煮たものを貪り食い……」
「あらあら、まぁまぁ」
「そうなってしまうと、魔力をもつ魔族たちの多くは裕福な暮らしができると聞いていたガンデロ帝国へと逃げてしまったのです」
「そうなのね……。でも、なぜあなたたちはそのガン……なんとか帝国へ行かないのかしら。裕福な暮らしができるのでしょう?」
するとそれを聞いた魔王エヴが答えた。
「ガンデロ帝国は金属兵という戦闘兵器を作るために魔族の魔力が欲しいだけ。逃げた魔族たちは金と引き換えに魔力を搾り取られ、やがて死ぬだろう……」
「ええっ!?」
「金属兵は魔力で動く人型の金属兵士。今考えられる中では最強の歩兵。そしてガンデロ帝国はこの世界を支配し、自らの富のために大量の奴隷を作る計画があると内通者から聞いた。そうなれば……」
「まぁ、そうだったのね……。今わかったわ、わたしたちがこの世界に来た理由はこれだったのね。じゃあ、まずは騙されている魔族さんたちを助けないと」
おばあさんがそう言うと、魔王エヴは驚きながらおばあさんに言った。
「お主は魔族を助けると言うのか?」
「ええ、もちろんよ。誰だって命あるなら死んではいけないわ。それに魔族さんたちはあなたのお仲間なんでしょう?」
「ああ……」
「じゃあ助けないといけないわ。その魔族さんたちはどうやったら助けられるのかしら」
「なっ!?」
魔王エヴとその横に居たインメリアはおばあさんの言葉に驚いた。
そして次の瞬間、魔王エヴはインメリアと並んで頭を下げ、それぞれおばあさんに忠誠を誓った。
「魔道士様。魔族を救うことができるのは魔道士様なのかもしれません。わたし魔王エヴはその望みに賭け、魔道士殿に忠誠を誓い、眷属となりましょう」
「私、魔剣士インメリアは魔王エヴ様の部下。共に魔道士様の眷属となります」
「えっ!? そんな眷属だなんて……。ええと……、あ、そうね、お友達になりましょう!」
「はっ! その名称がご都合よろしければ!」
「はっ! 仰せのままに!」
こうして、おばあさんの眷属が増えてしまった。




