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異世界おじいちゃん 〜みんなで異世界転生〜  作者: オイシイオコメ
異世界おじいちゃん ~みんなで異世界転生~
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 インメリアが魔剣で黒猫に斬りかかると、黒猫は目線も逸らさずに防御魔法陣を展開した。


 ガキン!

「なにっ!?」


 インメリアの魔剣は黒猫の防御魔法陣に軽々と弾き返されると、即座に距離を取って魔王エヴに言った。


「魔王様! この魔法陣は何か異質(いしつ)!!」


「何だと!?」


 魔王がインメリアに答えた瞬間、


 ドクッ……

 グッ……、ググググ……


 黒猫は暗黒魔法で魔王の心臓を握り潰そうとしていた。


「ぐはっ!!!」


 魔王は予想もしていなかった出来事に思わず両膝をついて両手で胸を掴んだ。


 そして目の前にいる骸骨姿の黒猫を見上げると、朦朧(もうろう)とした意識の中で、思わず声を漏らした。


「お……、お前は……、本物の……、魔王を……、倒して……、何を得ようと……」


 黒猫は魔王エヴの言葉に冷静に答えた。


「我は一介(いっかい)(取るに足らない)の眷属(けんぞく)にすぎぬ。何を得ようと言うことはない。主人が大切にしている者たちを守るだけの事」


「ふっ……。この魔王を凌(しの)ぐ力を持つ者が誰ぞやの眷属(けんぞく)とは……。くっ……」


 魔王が意識を失いかけた、その時……


「待って、猫ちゃん! 約束したでしょう!」


 なんと、声の主はおじいさんと一緒にやって来たおばあさんだった。


 黒猫は慌てて暗黒魔法を止めると、魔王エヴは即座に状況を読んだ。


(……あの老婆、偽(にせ)の魔王に指示を出した。と言うことは、あの老婆が主人か。しかしそれが正解ならばあの老婆は相当の魔道士。戦うのは危険か)


 魔王エブはおばあさんの横に居たおじいさんに目をやった。


(うん? あの老人、魔道士の老婆の横にいるということは従者か? ならば人質に!)


 ブンッ!


 魔王エヴは魔力で瞬時に移動すると、おじいさんを人質にしようとおじいさんの首を掴みに行った。


「お主! 我が人質になるのだ!」


「あっ!」


 おじいさんが慌てて思わず声を漏らした瞬間、


 ザザッ、

 ズドッ!!


「ぐはっ!!!」


 なんと、魔王エヴの脇腹(わきばら)に何者かの拳(こぶし)が突き刺さっていた。


「えっ!? あっ、茂雄さん!」


 おじいさんは思わず声を出して笑顔になった。


 そう、魔王エヴにボディブローを炸裂させたのは茂雄だった。


 渾身のボディーブローを食らった魔王エヴは気を失ってうなだれると、その様子を見ていたインメリアは魔剣を突き出して茂雄に迫った。


「貴様! 魔王様を!!」


 しかし茂雄は笑顔でインメリアに忠告した。


「お嬢さん、お気をつけください」

「なにっ!?」


 茂雄がそう言った瞬間、なんとインメリアの体は宙に舞っていた。


「あっ!!」


 インメリアが不条理に視界に入った空に驚いていると、頭の下から優しい声がした。


「はい、落としますよ」


 ゴロン……


 インメリアは魔剣を持った腕を固められたまま、優しく地面に転がされた。


「なっ! 何事が!!」


 インメリアは慌てて顔を上げると、柔和な笑顔の老人が居た。


「はじめまして。わたしは大熊笹といいます。この剣は危ないので頂きますね」


 大熊笹は腕を軽く捻(ひね)って魔剣を取り上げると、大熊笹のところへ走ってきたおじいさんに気づいて大きく笑った。


「はっはっは! ひろしさん、お久しぶりですな!」


「お、大熊笹さん!」


 おじいさんは思いがけない2人との再開に思わず涙を流した。


 ―― 村の外れ おじいさんたちの家 ――


 魔王エヴは気を失ったまま回復薬を飲まされ、インメリアと一緒に奥の部屋で休んでいた。


 インメリアは心配そうに魔王エヴの顔を見ていると、開け放していた部屋のドアからおばあさんが入ってきた。


「魔王さん、お加減どうかしら?」


 おばあさんがそう言うとインメリアは目を下に逸らしながら答えた。


「……息も安定した。だいぶ良い」


 するとおばあさんは嬉しそうに切り分けた果物をインメリアに手渡しながら言った。


「それは良かったわ。少ないけど、どうぞ食べて。魔王さんも起きたらどうぞ」


 果物を受け取ったインメリアは魔王エヴの顔の横に果物を置き、下を向いたままおばあさんに尋ねた。


「魔道士よ、なぜ我らを気遣う。仲間を殺そうとしたのだぞ」


 インメリアがそこまで言うと、おばあさんにはベッドに寝ているはずの魔王エヴがコソコソと手を伸ばして果物を手に取る姿が見えた。


 その様子を見たおばあさんは思わず笑いながらエヴに言った。


「あらあら魔王さん、そんなにコソコソしなくてもいいのよ。果物たべてくださいね」


 おばあさんの言葉に驚いたインメリアは思わずベッドのほうを振り向くと、気まずそうに果物を握っているエヴが居た。


「エッ! エヴ様! ずるい!」


 しかしエヴは開き直ったようにベッドから起き上がると、果物を口の中に押し込むようにしながらインメリアに言った。


「う! うるふぁい! こ、このような上等なくだむぉの……! ゴフッ、ゴフッ!!」


 それを見たインメリアも両手で果物を掴むとエヴに取られまいと口の中に押し込んだ。


「あ、あたふぃだって、果物なんて……、ゲフゲフッ! 何年ぶり……、か! ゲフゲフ!!」


 二人が激しく果物を食べる姿を見たおばあさんは慌てて二人に言った。


「あらあら、果物ならもう少しありますから! 慌てないで食べてくださいね」


 ガフッ……

 ウグッ……


 ツゥゥゥ……


 おばあさんの言葉を聞いた魔王エヴとインメリアは顔を揃(そろ)えておばあさんを見ると、静かに涙を流した。

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