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おじいさんはガンデロ四世の氷を矢を見ると、手に持っていた火薬玉を地面に置いてアーボンから貰った炎の剣をアイテム欄から出現させた。
それを見たガンデロ四世は感心するようにおじいさんに言った。
「ほう。剣を出現させるとは、お前は空間魔法が使えるのか。おもしろい老人だ。お前、ガンデロ帝国に仕えるつもりはないか? 魔導師団に入れてやっても良いぞ」
しかし、おじいさんは剣を構えながらガンデロ四世に答えた。
「いえ、お断りさせていただきます」
「ふっ。ならば死ね」
ガンデロ四世はそう言うと右手を素早く下に降ろした。
するとそれと連動するように氷の矢がおじいさんの元へと飛んでいった。
ビュゥゥウウ!
それを見たおじいさんは力いっぱい炎の剣を振ると、剣の先から大きな火の玉が放たれ、次々と氷の矢を溶かしていった。
そしてその大きな火の玉はそのままガンデロ四世の元へと飛んでいった。
「無詠唱の火の玉だと!?」
ガンデロ四世は想定外の火の玉に身をかわす事が精一杯で、バランスを崩したガンデロ四世はそのまま水の張られた田んぼに落下した。
ベチャ
「……ぶはぁ!!」
ガンデロ四世は泥だらけになりながら顔を上げると、なんと空には巨大な雷雲が広がり、雷でピカピカと光っていた。
「くっ! また無詠唱で雷の上級魔法だと!? あの老人、何者だ!」
ガンデロ四世はおじいさんが雷魔法を使っていると勘違いしてそう言うと、空の雷雲はどんどんと大きくなり帯電する雷もどんどんと巨大になっていった。
「なっ……、この巨大な雷魔法は、もはや白金級を超えている……」
するとガンデロ四世は羽を大きく広げて低空飛行で飛び出した。
「今日は撤退だ。今は帝国の力を高めなければならぬようだな」
ガンデロ四世は弾丸を放ったように消えていった。
おじいさんはその様子を見てあぜ道にへたり込むと、うしろからLOOPYに乗った魔王エヴが急いでやってきた。
「大丈夫ですか、ひろし様!」
「い、いやぁ、魔王さんでしたか。本当に助かりました。ははは」
「我が配下たちの働きぶりを見ようと来ていてよかったです。それにヴァンパイアを追い払うことができたのは、頂いた魔法の杖のおかげです」
「……バンパイヤ? ええと、吸血鬼ですか?」
「はい、彼は吸血鬼のヴァンパイアです。それも相当上級の」
「そうでしたか。しかし彼はガンデロ帝国の皇帝だと言っていましたが……」
「……。なるほど、そういう事でしたか。それでエスプララの羽を見破って……」
するとその時、稲穂の中に隠れていた魔族たちが次々と顔を出して戻ってきた。
「怖かったぁ」
「ひろし様ぁ、ありがとう!」
「もうあの顔見たくない」
「魔王様の魔法すごかったね」
そして魔族たちは魔王エヴの前にやって来ると跪いた。
「「ありがとうございました、魔王様」」
魔族たちが魔王エヴにお礼をすると、魔王エヴは静かに魔族たちに言った。
「待て。お礼はひろし様に言うのだ。ひろし様が戦ってくれていなかったら私も間に合ってはいなかった」
すると魔族たちは一斉におじいさんのほうを向いて跪いた。
「「ありがとうございました、ひろし様」」
「あ、ええと、みなさん、わたしはただ……、みなさん、どうか頭をあげてください」
おじいさんは恐縮しながら慌てて頭を下げた。
◆
それから数日後、ガンデロ帝国では皇帝を中心に軍事会議が開かれていた。
皇帝のガンデロ四世は魔導師団の新しい団長の老人に尋ねた。
「魔導師団長。マデマメヤ国の魔法戦力の分析が済んだとの報告があったが」
「はい。現在までの戦闘結果、金属兵を操っていた兵士たちの話、そして皇帝陛下の話を総合しますと、敵は相当な戦力かと」
「具体的には?」
「まずは前々から噂になっている白金級以上の氷の魔道士、そして倉庫を吹き飛ばした上級魔法の使い手、さらには、低空を飛ぶ魔道具が大量にあると……」
「そこへ来て、あの魔導剣士……、いや大魔道士の老人か……」
魔導師団の団長はガンデロ四世が発した大魔道士という言葉に驚いて聞き返した。
「だ、大魔道士ですか…?」
「うむ。敵地の偵察中に出くわした老人だ。やつは無詠唱で中級魔法並みの火の玉を操り、さらに無詠唱で白金級を遥かに超える雷魔法を展開した」
「な、なんですと! 無詠唱のみならず、異なる属性の魔法を扱うなど……!!」
「しかもヤツは魔力が少なくなった価値の無い魔族どもに食事を運んでいた。あれほどの大魔道士が給仕をしていたのだ。それがどういうことがわかるか?」
「はっ! まさか、それほどの大魔道士が低い身分であると……!!」
「そうだ。今やマデマメヤ国はあのような大魔道士など、普通なのだろう」
「なっ!! そんな……!!」
なんと、おじいさんのお陰でガンデロ四世は壮大な勘違いをしていたのだった。
するとその時、商人に扮してマデマメヤ国に潜入していたスパイがガンデロ四世に進言した。
「皇帝陛下、その件に関してなのですが、宜しいでしょうか」
「うむ。発言を許す」
「もし仮に、大魔道士が大量に増えたのだとすれば、思い当たる節があります」
「ほう、それは興味深い。言ってみろ」
「はい。かつての魔王領には大量の植物が自生しておりまして、彼らは急にその種を収穫して食べ始めたのです。推測ではございますが、その事が大魔道士と関係があるかもしれません」
「急に種をだと……?」
「はい。その種は平民も食べており、その影響か、ヨクヨ商会の村では平民の母子が治癒魔法を使っているのを確認しました」
「なっ! 平民が治癒魔法をだと! ばかな!」
ちょうどテテと母親は、おばあさんから見出された治癒魔法を練習していて、浅い切り傷くらいであれば治癒できるようになっていたのだった。
するとその時、ガンデロ四世は魔王領に赴いた際、逃げた魔族たちが何かを植えていた事を思い出した。
「そうか、あれが……」
そしてニヤリと笑って立ち上がると、大きな声で話し始めた。
「すべてが繋がったぞ! やつらの魔力の源は間違いなく魔王領に生えている植物の種! 奴らは魔族を奴隷としてその植物を育てていたのだ!」
そしてガンデロ四世はスパイの商人に命令をした。
「スパイよ、その植物の種を手に入れてくるのだ! そして皆聞け! 現在進めている軍事作戦はすべて中止だ! すぐに帝国の総力をあげて種を集めるのだ!」
しかし、それを聞いた魔導師団の団長は慌てながらガンデロ四世に尋ねた。
「こ、皇帝陛下! ではアンデッド王のリッチになった元団長の計画は……」
するとガンデロ四世は冷酷な眼差しで答えた。
「ん? もういい。リッチはどこかに追放しろ」
「えっ、ええっ!?」
こうしてガンデロ四世の壮大な勘違いで帝国が動き始めたのだった。




