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エスプララは祈りを終えると、今度はおじいさんに話しかけた。
「ひろし様、何かお礼をさせて頂けませんでしょうか。例えば、誰でも呪い殺せる指輪や、相手を一瞬で血まみれにする竜の牙、それとも全ての女性を跪かせる魔石……」
ペチッ!
「あ痛っ!」
なんと、魔王エヴがエスプララの額をペチッと叩いていた。
「エスプララ、ひろし様になんという事を言うのだ。奥様もいらっしゃるのだぞ」
「ご、ごめんなさいお兄様。でも私があげられるものって、これくらいしか」
「まったく、仕方のない妹だ。ひろし様に謝るのだ」
それを聞いたエスプララは申し訳無さそうにおじいさんに謝った。
「ご、ごめんなさい、ひろし様……」
しかしおじいさんは笑顔で答えた。
「いえいえ、何も謝ることなんて。ははは」
エスプララがオロオロしながら困っている横で、アカネは夢の中で黒ちゃんからもらった短い木の棒を振り回しながらブツブツと呟いていた。
「もうさぁ、あんなドヤ顔で棒を渡されたって誰が使えるんだよ。薪にしろってこと? ったく、生き返ったらもう一回文句言ってやる」
しかしその時、アカネは手を滑らせて棒を地面に落としてしまった。
ズドッ!!!
「あ、落ちちゃった」
アカネは落ちた棒を拾おうとしたが、棒は地面にシッカリ埋まっていた。
「え? なにこれ。畑のニンジンみたいになってるんだけど」
アカネは少しだけ顔を出している棒の頭を持って力ずく引っこ抜くと、泥のついた棒をマジマジと見ながら首を傾げた。
「落としただけで、そんなズッポリ刺さるか? ただの木の棒だろ?」
アカネはそう言うと、棒を地面に刺してみた。
ドスッ!
「あれ? なにこれ、めっちゃ簡単に刺さる」
アカネは棒を抜くと、気になって近くにいたラゴに声をかけた。
「なぁ、ラゴっち。この木の棒でその鎧殴ったら、どうなる?」
しかしラゴは笑いながら答えた。
「いや、ははは。さすがに木の棒で金属の鎧を叩いても小さな傷が付くくらいかと……。試しに殴っていただければ」
それを聞いたアカネは、力いっぱい棒でラゴの胸の鎧を殴りつけた。
「んじゃ、遠慮なく」
ベコン!!
「へぶっ!」
するとなんと、ラゴは大きく吹き飛び、胸の鎧は凹んでラゴの肋骨にめり込んでしまった。
「いたたた……!」
アカネは驚くラゴに駆け寄ると、体操に参加していたクラクモを大声で呼んだ。
「クモっち、助けて! ラゴっちがヤバい!」
◆
結局アカネの棒は色々試してみた結果、哲夫が用意した「この世界で最高に固い」とされているオリハルコーンの原石を砕いてしまった。
その様子を見ていたゴゴは目を輝かせながらアカネに言った。
「ア、アカネ、おでは、びっくりしたんだな。木の棒がオリハルコーンをこわしたんだな。な」
アカネはゴゴの言葉に笑顔になると、ゴゴに言った。
「だよね、びっくりするよな」
「うん。びっくりしたんだな。な」
するとアカネは思い付いたように棒をゴゴに差し出した。
「そういえば、きみは棍棒使うよね。だったら、これ使える?」
「えっ! い、いいのか!?」
「だって、あたし武器持ってても邪魔なだけだしさ」
「そ、そっか。なら、おでがつかっても、いいのか、な? な」
「そりゃそうだよ! ってか、うちの旦那があたしに木の棒を渡す時点で色々間違ってるし」
「アカネのだんな、まちがってるのか? おでは、そんなことないっておもうんだな。な」
「あ、いや、ええと、なんていうかさ……。でもまぁ、あれか。アイツの大切なモノをくれたのかもな」
するとゴゴは棒をアカネに返そうとして言った。
「だったら、おでは、もらえないんだな。な。これはアカネのだダンナの、タイセツなんだな。な」
しかし、アカネは笑顔でゴゴに言った。
「ってかゴゴ。どっちにしろ返されたって、あたしが使えないんだからゴゴが使ったほうがいいでしょ?」
「そ、そうなのかな? な」
「そうだよ。それにウチの旦那の事だから、きっとこの世界にいたらゴゴにこう言うと思うよ。『その棒でお前の妻と仲間を守るのだ』とかね」
それを聞いたゴゴは感動して目を潤ませながらアカネに言った。
「アカネのだんな、とっても、かっこいいんだな! おではこの棒でメメと仲間をまもるんだな! な!」
ゴゴは手に持った棒を高く掲げて決意を固めると、それを見たアカネは笑顔で親指を立てた。
ゴゴゴガガガガガガ!!!
するとその時、巨大な分厚い黒い雲が空に現れてピカピカと光り出した。
それを見たアカネは魔王エヴの魔法だと気づいて空を見上げた。
「うわ、エヴっちの魔法……、デカいなぁ」
しかし次の瞬間、分厚い黒い雲の一瞬で消えて無くなった。
そしてその下では魔王エヴが震えながら呟いていた。
「少し魔力を込めただけであんなに巨大な雷雲が……。しかも魔力の流れを自由にコントロールできる……。この杖は一体……」
魔王エヴの右手には、めぐの雷の杖が禍々しく輝いていた。
◆
その頃、大熊笹は社長からもらった大盾2枚をライズとラゴの兄弟に渡していた。
「大熊笹殿、よろしいのですか!?」
「このような立派な大盾を!」
「いえいえ、私の友人が使える人にと渡してくれたのです。このような大きな盾を扱えるのはお2人だけかと思いまして」
ライズとラゴは大盾を受け取ると、その軽さに驚いた。
「か、軽い!」
「この大きさで、この軽さ……」
するとライズが大熊笹に許可を申し出た。
「大熊笹殿、大盾を試してみてもよろしいでしょうか」
「はい、もちろんです。試してみてください」
「ありがとうございます」
ライズは大熊笹に頭を下げると、ラゴに目で合図をした。
ラゴは大きな太い槍を用意すると、大きく踏み出して力いっぱいライズの盾を突いた。
「でやっ!!」
ガオォン!!
ラゴの槍はライズの大盾に軽々と跳ね返されたが、ライズは驚きの表情を見せて呟いた。
「なんだこの盾は……、こんなに軽いのに衝撃すら吸収している……」
するとラゴが慌ててライズに言った。
「ライズ兄さん! 槍が……、槍の先が……!」
なんとラゴの槍の先は大盾に弾かれた衝撃て割れていた。




