65
アーボンがおじいさんに剣を手渡すと、その様子を見ていたイリューシュがオロチの弓と矢のセットをおじいさんに手渡した。
「ひろしさん、誰か弓を使える方はいらっしゃいますか? もしおご友人に弓が使える方がいらっしゃるなら、ぜひこちらをお渡しください」
おじいさんはオロチの弓と矢を受け取ると、おじいさんは申し訳無さそうにイリューシュに言った。
「ちょうど大弓をお使いになる方がいらしゃいますが、このような大変貴重な物を頂いてしまっても良いのでしょうか」
「ふふふ。大弓を使う方がいらっしゃるなら安心ですね。ぜひ、その方にお渡しください」
おじいさんはイリューシュの笑顔につられて笑顔になると、懐かしむようにイリューシュに言った。
「イリューシュさんのその優しい笑い方は、初めて出会った時の事を思い出します。ははは」
それを聞いたイリューシュは柔和な笑顔を浮かべながらおじいさんに言った。
「ふふふ、本当に懐かしいですね。一緒にトレーニングルームに行った事を思い出します」
「いやぁ、あの時は右も左もわからずで。ははは」
おじいさんが笑うと、突然遠くから寺の鐘の音が聞こえてきた。
ゴォーン……
すると、めぐが慌てた様子でおじいさんに言った。
「おじいちゃん、もしかしたら時間かも! 夢から覚めそう!」
めぐがそう言うと、めぐ、イリューシュ、アーボンの3人はおじいさんの手を強く握った。
そして、めぐは最後におじいさんに雷の杖を手渡して笑顔で言った。
「おじいちゃん、これくらいしがあげられなくてゴメンね。元気でね!」
するとイリューシュとアーボンも笑顔になっておじいさんに言った。
「ひろしさん、お気をつけて」
「ひろしさん、またな! 死んだらあの世で会おうぜ! ははは」
フッ!
おじいさんはベベの村の家で目を覚ました。
「あぁ、夢でしたか……」
おじいさんは少し残念そうに呟くと窓から見える月明かりに目を凝らした。
しかしその時、月明かりに照らされたオロチの弓矢とアーボンの剣、そしてめぐの雷の杖が布団の上に並んでいる事に気がついた。
「これは……」
おじいさんは驚きながらも優しい笑顔で笑うと、3人がくれた武器をゆっくりと手で撫でた。
―― 翌朝 ――
おじいさんたちは朝の体操を終えると、自然と皆集まって昨晩の夢の事を話し始めた。
「昨日、夢の中で……」
「そうそう、もしかして」
「ええ。わたしは武器を」
「あら、わたしはお菓子を」
「あたしは、なんか棒もらった」
こうして、おじいさん、おばあさん、哲夫、和代、大熊笹、茂雄、アカネは昨晩見た夢で友達と会っていた事がわかった。
そこで、みんなが誰と会って何をもらったのかを話すことになった。
おばあさんは、最初にみんなに報告した。
「わたし、マユさんとメイさんとナミさんに会ってね。おいしいお菓子と、ナミさんのタクトをもらったの。これなんだけど、テイマーじゃないのに使えないわよね」
おばあさんは笑いながらタクトを振ると、タクトは赤い光を放ちながら、おばあさんの意識にララ助の姿を見せた。
それを見たおばあさんは、おもわず声を漏らした。
「ララ助ちゃん……? もしかしたら……」
そしてタクトを振りながらララ助の名前を呼んだ。
「ララ助ちゃん!」
ガァァアアア!
するとなんと、タクトの先からララ助が現れた。
ララ助は立派な成獣になっていて、村にいた人々は突然現れたララ助に驚いたが、その姿を見たおばあさんは嬉しそうにララ助をなでながら言った。
「あらあら、ララ助ちゃんなの!? お久しぶりね、こんなに大きくなって! うふふ。会いたかったわ」
おばあさんがララ助の胸の毛をモフモフすると、ララ助は嬉しそうに伏せた。
すると、哲夫と和代がみんなに言った。
「わたしたちは、夢で孫たちと会いましてな。翠からは疾風の弓矢、それと美咲からは黒豹のレイピアを貰ったんです。あの家の前に置いてあるのですが」
すると体操に来ていたメメとラジジが、疾風の弓矢と黒豹のレイピアを見て駆け寄っていった。
メメは疾風の弓矢を見ると、目を輝かせて哲夫に言った。
「哲夫様。この弓は高度に作られた弓とお見受けします。素晴らしいです」
それを聞いた哲夫は笑顔になるとメメに言った。
「その弓は、娘が渡してくれたんですよ。もし良かったら使って頂けませんか」
「ええっ!? よ、よろしいのですか!?」
メメが驚いているその横では、ラジジが和代から黒豹のレイピアを渡されながら驚いていた。
「私のような者が良いのでしょうか!? このようなレイピアを使わせて頂けるなど身に余る光栄!」
「ええ。ラジジさんのような方にお使い頂ければ娘も喜びます」
するとその横で、おじいさんはオロチの弓を手にしながら思い出したように呟いた。
「そうだ、エスプララさんにオロチの弓を……」
おじいさんがそう呟いた瞬間、おじいさんの背後からエスプララがおじいさんに声をかけた。
「ひろし様。その大弓、大変美しくて禍々しく、それでいて力強いですね」
おじいさんはエスプララの言葉に振り返ると、エスプララにオロチの弓を見せながら言った。
「あ、エスプララさん。ちょうど良かったです。この弓はこの間話した友人が託してくれたんです。ぜひエスプララさんに使っていただきたくて」
「よ、良いのですか、ひろし様!? それにしても、その大弓の構造。とてもワクワク致します」
おじいさんはオロチの弓と矢をエスプララに差し出しながら笑顔で言った。
「ぜひ使ってください、私の友人もきっと喜びます」
おじいさんはオロチの弓と矢をエスプララに手渡すと、エスプララは突然背中の羽根を大きくひろげ、胸に手を当てて片膝をつきながらおじいさんに言った。
「ひろし様。身に余る光栄、感謝致します。そして、この弓の持ち主にも最上の感謝と未来の幸せをお祈り致します」
エスプララはそう言うと両手を組んで空に祈った。




