64
その頃、大天狗のいる黄泉の国では大事件が置きていた。
「大天狗様! 賽の河原に突然、女子が落ちてきました!」
大天狗は報告に来た烏天狗の言葉に驚いたが、すぐに烏天狗と共に賽の河原へと向かった。
◆
大天狗と烏天狗が賽の河原にやって来ると、数名の烏天狗に囲まれた若い女性がいた。
大天狗はその女性に駆け寄ると、思わず声を漏らした。
「あなたは……、見通す者……。やっとお戻りになられたのですね……」
大天狗がその女性の肩に手を触れると若い女性は目をパッチリと開けて大天狗に言った。
「え! コレって転生したら獣人と恋に落ちる系ですか!? え、って事は良くある設定だと、あなたは身分の高い人ですよね!?」
大天狗は女性の言葉に驚きながら答えた。
「さ……、さすがは見通す者……。私は賽の河原を管理する者の頂点。大天狗である」
「え、やば! 頂点の大天狗とか! え、じゃあ和モノ? あ、でも良いかも! 和服も萌えるもんねぇ。もしかして私、巫女服とか貰えちゃうとか? やっぱ和モノと言えば赤白の巫女服だよね!」
「は、はい。実は貴方様が帰還した暁には、最大の敬意を払い、この地における女性の正装……、いわゆる巫女服を用意してございました」
「やば! 巫女服キター!! ……って、あれ? 今気づいたけど、ここ最初の場所じゃない? あれ、私、異世界転生失敗したとか?」
すると大天狗は女性に事の顛末を話し始めた。
◆
大天狗は巫女服ではしゃいでいる女性の横で、烏天狗たちと話し合いをしていた。
「烏天狗たちよ。あの見通す者が戻ったと言うことは、ひろし殿たちが行った世界がある程度の調和を取り戻したと考えるが、どう思うか」
「はい。同意します」
「私もそう思います」
「異論はありません」
「ならば、洋子殿やひろし殿、そしてみなさまにはご帰還願おうと思う。皆であちらの異世界に伝言をしてもらえるか」
「「はっ」」
―― ベベの村 深夜 ――
静かな月明かりの下、おじいさんたちは眠りについていた。
そして、おじいさんは夢を見た。
夢の中のおじいさんは何も無い場所に立っていて、目の前には烏天狗がいた。
「ひろし様、お久しぶりです。この度のご活躍のお陰で、この世界はある程度の調和を取り戻したようです」
「あぁ、お久しぶりです烏天狗様。そうでしたか、それは良かったです」
「ひろし様は私が極楽へとお連れいたします。ですが、この世界にお残りになられたいのでしたら、この世界でお亡くなりになるまで、この世界に残ることができます。如何いたしましょうか」
「そうですか。ではこちらの世界に残ります」
「……良いのですか?」
「はい。わたしの妻がこの世界の皆さんを残して極楽へ行くとは思えませんので、わたしも残ります」
すると烏天狗はしばらく無言のままいたが、少し笑顔を見せておじいさんに答えた。
「ひろし様。あなたの言うように洋子様はこちらに残ると答えたようです。皆様も同様でした」
「ははは、そうでしたか」
「ひろし様のこの世界の寿命は残り15年と48日。奥様の洋子様は15年と45日です。しかしその間に外傷などで死亡した場合はすぐに賽の河原にお戻りになりますのでお気をつけください」
「そうですか、わかりました」
「どうかお気をつけて、この世界をお楽しみください。また、15年と48日後にお迎えに参ります」
「はい、よろしくお願いします」
「最後に、大天狗様からのお礼として、ひろし様の夢をご友人の夢と繋がせて頂きました」
「夢を?」
「はい。ご友人には夢を繋ぐ事を話してございますので、ご安心ください。ではまたお会いしましょう」
烏天狗はそう言うと静かに消えていった。
するとその時、おじいさんの後ろから声がした。
「おじいちゃん?」
おじいさんが振り返ると、なんと、めぐとイリューシュ、そしてアーボンがいた。
「おじいちゃん!」
「ひろしさん!」
「ひ、ひろしさん!」
3人はおじいさんに駆け寄ると、おじいさんを優しく抱きしめた。
おじいさんは驚いて思わず声を漏らした。
「めぐさん、イリューシュさん、アーボンさん……」
「おじいちゃん、会えるなんと思ってなかったよ!」
「ひろしさん、またお会いできるなんて」
「うわぁぁん! ひろしさぁぁん!」
イリューシュは涙を手で拭うと、おじいさんに笑顔で尋ねた。
「ひろしさん、こうして会えたのは、ひろしさんがお亡くなりになってからもお元気でいらっしゃるという事ですね」
「ええ、ははは。実は異世界というところに来ておりまして。ゲームの世界と同じように武器を使ったりアイテムを使ったりできるんです」
すると、めぐが不思議に思っておじいさんに尋ねた。
「じゃあ、おじいちゃんは異世界で戦ったりしてるの?」
「ははは……。こちらもゲームの世界のように色々な武器を使う方がいらして、一緒に戦ったりもしました。ははは」
「え、すごい! わたしもおじいちゃんが居る異世界に行きたいなぁ。子育ても一段落したし」
「ああ、めぐさんのお子さんはもう大きかったですね」
「そうそう、もうあっという間だったよ。ははは」
すると号泣していたアーボンが思いついたようにおじいさんに言った。
「あ、そうだ。ゲームの武器が使えるならさ、これは使える?」
アーボンはそう言うと、1本の剣をおじいさんに手渡した。
「これは……」
「これ剣なんだけど、だれでも炎の魔法が使えるようになるんだよ。ちょっと剣振ってみて」
おじいさんはアーボンに言われるままに剣を振ってみた。
ブン!
ボォォォオオオ!
おじいさんが剣を振ると、剣から火の玉が飛び出した。
「おお、これは凄い剣ですね」
「でしょ!? ひろしさん、良かったら使ってよ。もし使いづらかったら誰かに使ってもらっても良いからさ」
「……アーボンさん、これは貴重なものをありがとうございます」
おじいさんはアーボンに深々と頭を下げた。




