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その頃、アカネは見よう見マネで壁を塗りながら、横で漆喰をこねている骸骨姿の黒猫に話しかけていた。
「それにしてもさぁ、村にも金属兵が来てたなんてビックリだよな」
「そうですね。我も驚きました。おそらくガンデロ皇帝がゲンゲゲロを動かして注目させ、村に奇襲をかけたのでしょう。この村が本当の目的だったのかもしれません」
「まぁ、これだけ食べ物もあるし、ガンデロも欲しかったのかもね。でも、金属兵に勝てて良かったね」
「はい。しかし、まだ油断はできません。ガンデロ帝国にいた魔族たちは戻り、金属兵が増えることはなくなりましたが、ガンデロ帝国が無くなったわけではありません」
「そっか、そうだよね。ってかさぁ、みんな仲良くやればいいのにね」
アカネがそう言って壁に漆喰をペシペシ叩きつけていると、いつものように商人たちが馬車でやってきた。
それを見たアカネは少し嬉しそうに黒猫に言った。
「また、いつもの毎日が始まったね。ってか、ガンデロもさぁ、哲夫さんの会員になればいいのにね」
「……そうですね。そうなれば平和です」
黒猫はアカネの素直すぎる言葉に少しだけ嬉しそうに答えた。
―― 数日後 ――
金属兵の脅威が去って数日が経った。
ゲンゲゲロの領地は兵2000と金属兵を失って防衛上の問題が大きくなり、さらに領主が逃亡して政治と経済が混乱したため、ガンデロ帝国はゲンゲゲロの領地から手を引いた。
それに合わせ、五王は協力してゲンゲゲロ領へと攻め入り、大きな争いも無く無事ゲンゲゲロ領を取り返すことに成功した。
そしてその後開かれた五王会議でゲンゲゲロの領地を今回活躍したコラナッカに任せようという案が上がり、コラナッカはその五王会議の場に呼ばれていた。
マコ王は招集されたコラナッカにその意思があるかを尋ねた。
「コラナッカ。お主は再び領主になることを望むか?」
するとコラナッカは神妙な面持ちで答えた。
「はい。また機会が頂けるならば」
「だが、ゲンゲゲロの領地はガンデロ帝国との最前線となった。我らがお主に望むことは分かっているのだろうな」
「はい。一番危険で、一番楽しそうな場所。ですよね」
「ほう? お主の言う、楽しそうとは」
「敵が来る可能性が多いって事は、実験の成果を試しやすいって事っすね。ヤバい研究ばっかしてるオレにぴったりじゃないっすか?」
コラナッカの言葉を聞いたマコ王は大笑いしながら答えた。
「はっはっは! 面白い事を言うな。ちなみに、お主が領主になっても税収の三分の一は今回出兵した各王の元へ行くが承知の上か?」
「ぜんぜん良いっすよ。オレは研究して、その成果でこの国を助けたい。今はホントにそう思ってる」
それを聞いたマコ王は立ち上がって他の王に尋ねた。
「私はコラナッカに再び男爵の爵位を与え、領地を任せても良いと思う。みなはどうか?」
すると王たちは全員手を挙げてコラナッカに領地を与える事が承認された。
マコ王はそれに満足そうに頷くと、コラナッカに跪くように言った。
「コラナッカよ、跪いてくれるか」
「はい」
コラナッカは素直に跪くと、マコ王は剣を抜いてコラナッカの頭の上にかざしながら言った。
「コラナッカよ。お主にゲンゲゲロ領を任せ、コラナッカ領とする。そしてお主には再び男爵の身分を与える」
するとコラナッカは深く頭を下げて厳かに答えた。
「その栄誉、謹んでお受けします」
こうして正式にコラナッカ男爵領が誕生した。
◆
その頃、難民の町では元国王のマルちゃんと仲間たち、そしてなんとゲンゲゲロ元侯爵が肩にクワを担いで笑い合っていた。
領地を逃げ出したゲンゲゲロは放浪の旅の末に難民の村にたどり着き、マルちゃんたちと一緒に農作業をしていたのだった。
「国王……、いや、マルちゃん様! まさか一緒に畑を耕す日が来ますとは」
「おいおい、様とか敬語はやめろってゲンゲゲロ。わたしたちは農民仲間になったんだからさ」
すると難民の仲間がゲンゲゲロに言った。
「てかさぁ、ゲンゲロゲロ? って本名なの?」
「え? ええ。ですが私の本名は、エット・ナンダッケ・ソウダ・ゲンゲゲロ・デスケド・ワタシなんですけど」
「長っ! マジ長っ! おいおいマルちゃんの本名より長いんじゃないの? なに? 高貴なお方たちは名前長いと偉いの?」
「あ、いや、ははは」
「じゃあさ、今日からゲゲロっちな! いいだろ?」
「あ、はい。よろしくおねがいします」
するとマルちゃんと難民の仲間たちはゲゲロっちと肩を組んで上下に揺すりながら大声をあげた。
「ゲゲロっち! ゲゲロっち! ゲゲロっち! ゲゲロっち!」
ゲゲロっちは驚きながらも嬉しそうに笑いならが言った。
「や、やめてくださいよぉ。へへへ」
「なんだよゲゲロっち、照れんなよ!」
するとマルちゃんは思い出したように仲間たちに言った。
「あぁぁあ!! しまった! 大変だ!」
「大変?」
「なにが」
「変態の間違いだろ?」
「違う違う! 今日は、あのミニスカートの天使、ベティルナちゃんの生誕祭だ! 早くプレゼント持って酒場に行かなくては!」
すると仲間たちは固まって思い出した。
「そ、そうだった……」
「おいおいプレゼント買ったか?」
「やべぇ! 買ってねぇよ!」
仲間たちが慌てふためくと、突然マルちゃんがドヤ顔で拳を握りながら仲間たちに言った。
「ふっ。これでもわたしは元国王なのだぞ。わたしはこれをベティルナちゃんに渡すつもりだ」
マルちゃんはそう言うと、拳を開いて輝く金のネックレスを仲間たちに見せつけた。
「うわっ、金かよ! エグっ!」
「き、きたねぇぞ!」
「そんなもん隠し持ってたのかよ!」
しかしマルちゃんは目を細めて答えた。
「これ渡したら、ベティルナちゃんに好かれちゃうかもなぁ~。ここらで金のネックレス渡せちゃうヤツなんか居ないもんなぁ~」
しかしその時、ゲゲロっちが仲間たちに言った。
「あ、宝飾品でしたら良ければ皆さんに差し上げますよ」
ゲゲロっちはそう言うと、仲間たち全員にネックレスや指輪を渡して回った。
「「「えええーーーー!!」」」
仲間たちが驚くとゲゲロっちは笑顔で仲間たちに言った。
「みなさんにはボロボロになって彷徨っているところを助けて頂いて、そのうえ仕事までくださって……。これくらいお安いものです」
「いやいやいや!」
「ゲゲロっち、まじか!」
「まじ貴族ヤベぇな!」
ダッ!!
するとその瞬間、マルちゃんが1人で走り出した。
それを見た仲間たちは声をあげてマルちゃんを追いかけた。
「お、おい! 抜け駆けか!?」
「ま、待てよ!!」
「あいつホントに元国王かよ!?」
そしてゲゲロっちも柔らかい笑顔を浮かべながら仲間たちを追いかけた。
「ははは、待ってくださいよぉ!」
マルちゃんたちは競うように酒場に入っていった。




