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その頃、ベベの村では金属兵は1体となっていたが、激しい戦闘の末に傷ついた軍神・零式が一度戻されたため、苦戦を強いられていた。
重たい一撃を食らわせるライズと高速の剣技のエルジョルートが金属兵に迫ったが、金属兵の素早い動きと破壊力のある一撃に近づけず、魔石を破壊することが出来なかった。
すると次第に金属兵はライズたちを圧倒してゆき、防御魔法陣を展開する黒猫のMPも尽きそうになるころ、村に向かってくる土埃が見えた。
ドドドドドドドド!
なんとそれは全速力で走ってくるインメリアたちだった。
インメリアたちはそのまま村の中に乗り込んでくると、インメリアとラゴ、そして後続の騎士たちは次々と金属兵に襲いかかった。
「やぁぁああああ!!」
ガキン!!
インメリアの剣を受けた金属兵は力ずくでインメリアを吹き飛ばすと、すかさずラゴが襲いかかった。
しかしラゴはインメリアの仇とばかりに金属兵に突撃した。
「でやぁぁああああ!!」
ゴッ!!
ラゴの重い槍の一撃は金属兵の胸に命中すると、その横から兄のライズも脇腹に槍の一撃を食らわせた。
ガキン!
パァン!
ラゴとライズの槍が命中すると、金属兵の鎧の一部が割れて弾け飛んだ。
しかし、金属兵は剣で大きく薙ぎ払うとライズとラゴを吹き飛ばした。
そして体勢を整えると、剣を構え直して静止した。
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
するとその時、あの大柄な老馬が引いてきた戦闘用馬車が到着して乗っていた弓兵が声をあげた。
「金属兵を拘束します!! みなさん、離れて!!」
ザザァァアアアア!!
その声を聞いたインメリアたちは一斉に道をあけると、弓兵を乗せた戦闘用馬車は急停車して弓兵は紐付き矢を構えた。
弓兵は隣の弓兵に言った。
「金属兵の手前で交差するように矢を放つぞ! おれは右、おまえは左だ!」
「はい!」
「放て!」
ヒュッ! ヒュッ!
しかしそれに気づいた金属兵は身をかわすように素早く横へ移動した。
すると金属兵の右を狙った紐付き矢はなんとか回り込んだが、左を狙った紐付き矢は大きく逸れてしまった。
「しまった!」
弓兵が慌てたその時、どこからともなく矢が放たれた。
ヒュッ……、シャァァアアア!
カンッ!
そしてその矢は正確に左を狙った紐付き矢に命中して矢の軌道を変えた。
なんとその矢を放ったのはメメだった。
左を狙った紐付き矢は軌道を変えて金属兵の近くを通っていった。
そして、左右の矢の紐が交わった所が金属兵に当たると、左右の矢は巻き込むように金属兵に絡みついた。
「よし!」
金属兵は拘束する紐を剣で断ち切ろうとしたが、そこへインメリアが飛び出し、金属兵の剣を弾いて言った。
「よくやった! あとは任せろ!」
インメリアがそう言うと、ライズとラゴ、エルジョルートと騎士たちは一斉に襲いかかった。
しかしなんと、金属兵は紐が結びつけてある戦闘用馬車ごと引っ張って紐を振りほどこうとしながら剣を振り回してインメリアたちを吹き飛ばした。
ズザァァアア!!!
金属兵は力ずくで馬車を引きずると、その力に馬車の重さも負けてしまい、弓兵2人は揺れる馬車から振り落とされた。
「うわぁぁあ!」
「なんて力だ!」
しかし大柄な老馬は目に力を増して嘶いた。
ヒヒィィイイン!
「ガンデロの兵よ! この私と力比べをするのだな! 面白い!!」
ガンッ!!
大柄な老馬は力強く足を踏み出して馬車を止めると、金属兵を引き倒そうと全力で紐を引き始めた。
すると金属兵も負けずに紐を振りほどこうと紐を引いた。
ガガッ! グググググ……
しかし金属兵の強力な力に馬具が大柄な老馬に食い込み、裂傷をおこして老馬の体から血が吹き出した。
それでも老馬はさらに一歩踏み出すと大きく嘶いた。
ヒヒィィイイン!
「どうしたガンデロ兵!! そんなものか!!」
その様子を見た老馬の息子の戦馬が咄嗟に助けに入ろうとしたが、魔馬は息子の戦馬を止めて静かに言った。
「待て。邪魔してはならぬ。誇り高き父親の戦い、勝っても負けてもその目に焼き付けるのだ」
「……は、はい」
そしてインメリアたちも金属兵に襲いかかったが紐を切ろうとする金属兵の剣を止めることで精一杯だった。
しかしその時、
ズズズ……、ズズズズ……
金属兵は大柄の老馬の力に耐えられず、少しずつ足を滑らせていった。
そして次の瞬間、
ズザッ!!
ヒヒィィイイイン!!
なんと大柄な老馬は金属兵の力に打ち勝ち、金属兵を滑らせるように転倒させた。
その隙を逃さなかったインメリアが金属兵に飛び込むと、ライズとラゴが壊した鎧の隙間から魔石を確認した。
そして、
「もらった!!」
ガキン!
パァァアアン!
インメリアは金属兵の魔石を破壊した。
―― 翌日 ――
旧ラド公爵領の併合に向かっていたゲンゲゲロの歩兵隊は、メロナッカと女性の格闘兵士たち、そしてコラナッカとエリシャウと格闘兵団の活躍によって全員捕縛されていた。
そしてゲンゲゲロ侯爵は2000人の兵と、ガンデロ帝国の所有物である金属兵3体とゴーレム10体、そして未完成の金属兵を大量に失い、窮地に立たされていた。
ゲンゲゲロ侯爵は私室をウロウロしながら呟いていた。
「これはまずい、これはまずいぞ。ガンデロ皇帝になんと言う? 言っても聞いて頂けるのか? いや、間違いなく処刑される! いやだ、それはいやだ! うああああ! 私は操られていただけなのにぃぃ!」
ゲンゲゲロは頭を抱えて苦悶の表情を浮かべたが、突然思いついたように顔をあげた。
「あ、そうだ。逃げよう」
ゲンゲゲロはそう言うと、引き出しにしまってあったフードの付いたコートを引っ張り出した。
「うん、逃げよう。そのうちガンデロの使者が来ちゃうだろうし」
ゲンゲゲロはコートを羽織ってフードを深々とかぶると、持ち出せそうな宝飾品と金貨を持って、なんと自分の領地から逃げ出してしまった。
◆
その頃、戦いが終わったベベの村では村の人たちと魔族たちが金属兵に破壊された建物の修復をしていた。
そんな中、おじいさんと魔王エヴの妹エスプララは少し離れた魔族の住む遺跡に連絡を送る作業をしていた。
遺跡では壁の修復に必要な漆喰の原料、石灰石が取れるので、おじいさんは必要な石灰石の量をレスカカルの丸い石に書いて遺跡まで遠投していたのだった。
「よいしょっ」
ヒュゥゥウウ……
……カンッ!
おじいさんが投げた石は遠くに少しだけ見える遺跡の石柱に当たって、ゆっくりと落下した。
それを見ていたエスプララは手に持っていた大弓の矢に伝言の布を巻き付けながら感心したように言った。
「ひろし様は素晴らしい腕前をお持ちですね。私の大弓でも狙うのが難しいくらいの的に……」
「いえいえ、そんな。わたしはエスプララさんのように大きな弓は構える事もできませんので石を投げるしか。それにしても、大きな弓を見ると友人を思い出します……」
「ご友人ですか?」
「ええ。イリューシュさんという、とても腕の良い弓使いの方で、何度も助けて頂いたんです」
「そうでしたか、きっと素晴らしい腕をお持ちの方なのでしょうね。私もそのような方になりたいものです」
エスプララはそう言うと、軽く大弓を引いて伝言の布を巻いた矢を放った。
ヒュッ!
……カンッ!
エスプララの放った矢は美しい軌道で遺跡の石柱に当たり、ゆっくりと落下した。
その様子を見ていたおじいさんは嬉しそうにエスプララに言った。
「おお、ストライクですね!」
「ストラ……?」
「あ、ははは。ストライクです。きれいに命中しましたね」
「なるほど。ストライク、面白い言葉ですね。覚えておきます」
エスプララは嬉しそうに笑った。




