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ラジジを狙った金属兵は一瞬だけ動きを止めると、後ろ足を蹴り出して素早く飛び上がり、ラジジへと鋭く剣を突き出した。
しかしラジジもそれに反応して体勢低く走り出すと、ニヤリと笑って呟いた。
「地から足を離しおって。飛んだら軌道は変えられんぞ!」
ラジジは盾を上にして加速し、床をスライディングしながら飛び出しすぎた金属兵と上下ですれ違った。
そしてラジジは素早くスライディングから立ち上がると、敵の背後の左側に全速力で飛び込んだ。
(ヤツは右手で剣を握っている。ならば最短距離で攻撃できる右回りに剣を振り返るはず)
ブンッ!
金属兵はラジジの予測通り右回りに振り返って剣を振った。
しかしラジジはすでに金属兵の視界から消え、金属兵の懐にいた。
そして鎧の隙間から魔石を見つけると後ろ脇腹の隙間から剣で魔石を突き刺した。
「もらった!!」
ガッ!!
パァァアアアン……
魔石は飛び散り、金属兵が制御を失いかけたその時、
ドガン!!
「うぐっ!!」
なんと、金属兵の最後の一振りがラジジの鎧の脇腹を凹ませ、ラジジを吹き飛ばした。
ドガァァァアアン!!
「ラジジ様!」
「ラジジ様!!」
盾LOOPY兵たちは慌ててラジジに駆け寄ると、ラジジは貧血になりながらも兜の面を上げて笑顔で答えた。
「心配するな。あれだけ張り付いては、こうなる事も覚悟の上。しかし、こんな老いぼれが、あのガンデロの金属兵を倒してやったのだ。なんと愉快なことか。はっはっは!」
しかしラジジの顔色はどんどんと悪くなっていった。
するとそこへおばあさんが駆け寄ってきて、回復薬をラジジの脇腹にかけた。
しかし、外傷では無かったため特に変化は起こらなかった。
そこでおばあさんは回復薬をラジジに渡して飲んでもらうと、少しだけラジジは持ち直した。
しかし、依然としてラジジの息は荒く、回復する兆しは見られなかった。
おばあさんはどうして良いか分からず、ラジジの手を握って回復薬が効くことを祈っていると、なんとアカネが倉庫に走って入ってきた。
「けが人発見! クモっちお願い!」
「わかったわ!」
するとクラクモがやって来てラジジの診察を始めた。
アカネは驚くおばあさんを見ると、笑顔で説明した。
「外の戦いが終わって、あたしたち救護班が来たとこなんだ。間に合ったみたいで良かったよ」
「まあまあ、それは良かったわ! ラジジさん助かるかしら」
アカネはおばあさんと一緒にクラクモを見ると、クラクモは回復魔法を当てながら笑顔で答えた。
「大丈夫よ。肋骨がバラバラの大怪我だけど、魔族の回復魔法なら骨の位置を戻しながら回復できるわ」
それを聞いたアカネは目を細くしてブルブル震えながら言った。
「ぅわ、肋骨がバラバラだって……、めっちゃ痛そう……、って、かじいちゃん大丈夫なの?」
ラジジは震えるアカネに笑いながら答えた。
「はっはっは! どんどん肋骨が治っていくのが分かる。全く大丈夫だ」
「じいちゃん、すごいなぁ。肋骨バラバラでなんで笑ってるんだよ」
「こんな痛みなど何でもない。それよりも誰ひとり欠けずに戦いが終わって良かった。仲間が居なくなる方がよっぽど痛い」
それを聞いたアカネはラジジの横にしゃがんで笑顔で言った。
「じいちゃん、良いこと言うね! カッコいいよ!」
ラジジはアカネの言葉に表情を崩すと、アカネの肩をポンポンと叩いて言った。
「お嬢ちゃんは素直で面白いな。はっはっは、うぐぐぐ……」
ラジジは笑うと肋骨に響いて思わずうめき声をあげてしまった。
「何だよじいちゃん、やっぱ痛いんじゃん。ははは」
「そうだな……、ははは」
ラジジは優しい笑顔で笑った。
◆
その後、魔王エヴが倉庫で金属兵に魔力を注入していた魔族の「奴隷の首輪」を粉砕して救出し、盾LOOPY兵たちとアカネたちは倉庫と倉庫の周りに落ちていた金属兵の魔石の欠片を丁寧に集めて回った。
そして倉庫の周りに誰も居なくなった事を確認すると、魔王エヴはイグナイト・ザ・サンダーバーストを放って倉庫とその周囲を更地にした。
しかし、ガーゴイルのガーの知らせによってゲンゲゲロの兵が迫っていることを知ると、マコ王の指示の元、一斉に撤退を始めた。
そこへヤクウィー王領からたくさんの帰還用の馬車が到着し、重装備兵たちをデウ王の領地へ、奪還した魔族たちはベベの村へと向け出発していった。
残りの兵も馬と盾LOOPYで一斉にゲンゲゲロ領内から離れてデウ王の領地へと撤退した。
遅れて駆けつけて来たゲンゲゲロの兵たちは領内の境界線の手前で止まり、しばらく様子を見ていたが、最終的にはゲンゲゲロ領内に戻っていった。
こうしてマコ王が率いた奇襲攻撃は成功し、各々、自分の領地へと戻っていった。
◆
おじいさんたちはインメリア騎馬隊や、盾LOOPY兵団、囚われていた魔族を乗せた馬車と一緒にヤクウィー王の領地へと戻ると、魔族の伝令兵が慌てて舞い降りて来てインメリアに報告した。
「大変です! ベベの村に2体の金属兵が!!」
それを聞いたインメリアは驚きながら聞き返した。
「なんだと!? べべの村の状況は!?」
「現在、大熊笹様、茂雄様、黒猫様が応戦中! 遺跡の魔族は村に救援に向かい、村人を遺跡に避難させています! 村の被害はまだ軽微です!」
「しまった、この混乱に乗じて金属兵が潜入したか! 今から急いで向かう!」
インメリアはそう言うと後ろを振り向いて後続の隊に声をあげた。
「べべの村に金属兵が現れた! 今から急いでベベの村へ向かう! 付いて来れる者は付いてこい!!」
インメリアは指示を出すと、乗っている魔馬に話しかけた。
「戦いの後に済まない。まだ走れるか?」
それを聞いた魔馬は静かに答えた。
「承知。わしは約束したはずだ。お主の疾風の足になると」
魔馬はそう言うと、一気に速度をあげて走り出した。
すると後続の戦馬たちもそれに続き、早く走れる馬たちに乗った兵士たちは急いでべべの村へと向かった。




