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翌日、哲夫はおばあさんを連れてテテの家に来ていた。
テテは嬉しそうにおばあさんにくっついて座っていると、おばあさんはテテの背中を優しく撫でながら哲夫に言った。
「テテちゃんは、なんでしょう、柔らかで優しい、ううん……。若草色の……」
するとそれを聞いた哲夫はアイテム欄からメモ帳を取り出して呟いた。
「柔らかで優しい若草色……、もしや属性ではなくて、治癒なのでは……」
なんとこの世界では、おばあさんも人間のもつ魔法の素質がなんとなく分かるのだった。
哲夫はメモ帳から治癒魔法の詠唱を見つけると、優しくテテに言った。
「テテちゃん、今から洋子さんが魔力を込めるから、私の言った言葉を真似して言ってみてもらっても良いかな」
「うん!」
「では、いきますね。洋子さん、おねがいします」
「はい」
「偉大なる、万物の精霊よ」
「いだいなる、ばんぶつの、せいれい、よ」
「その慈悲により」
「その、じひに、より」
「この手に癒やしの力を」
「このてに、いやしの、ちからを」
「与えたまえ」
「あたえたま、え」
フワァァアアア……
するとなんと、テテの手が柔らかい緑色に輝いた。
「あっ!」
テテが驚くと、緑色の輝きは消えてしまった。
その様子を見ていたテテの母親は驚きながら哲夫に尋ねた。
「いまのは、どうしたのでしょうか? テテは……」
「はい。テテちゃんは治癒魔法が使えるようです」
「えっ! テテが……、魔法を……?」
「そのようです。ちなみに魔法は遺伝すると聞きました。お母様もこちらにいらしてくださいますか?」
哲夫がそう言うとテテの母親はおばあさんの横に座り、おばあさんはテテの母親をじっと見つめた。
「そうね……。お母さんは……、すごく……、小さく揺らめいているのだけれど、テテちゃんと同じかしら……」
それを聞いた哲夫は、お母さんにも治癒魔法の詠唱をしてもらう事にした。
「お母さんも詠唱を真似してもらってもよいでしょうか」
「はい」
「では、いきますね……。偉大なる、万物の精霊よ」
「偉大なる、万物の精霊よ」
「その慈悲により」
「その慈悲により」
「この手に癒やしの力を与えたまえ」
「この手に癒やしの力を与えたまえ」
フワァァ……
するとテテよりも輝きは小さかったが、テテの母親も治癒魔法が使えることが分かった。
テテの母親はじっと薄く輝く手を見つめていると、手に付いていた小さな傷が消滅していくのが見えた。
「あっ、傷が……」
そしてどんどん手の肌が潤っていくのを見ると、テテの母親は咄嗟に輝く両手を顔に当て始めた。
「も、もしかして……、この魔法はお肌に……」
テテの母親は輝きが消えるまで両手を顔に当て続けると、なんとテテの母親の顔は潤いに満ちてプルンとしていた。
「まあ!」
テテの母親がモチモチの感触に喜ぶとテテも嬉しそうに言った。
「お母さん、お肌きれい!」
それを聞いたテテの母親は嬉しそうに照れ笑いをした。
◆
その頃、ガンデロ帝国の皇帝の間では側近の従者がガンデロ四世の叱責を受けていた。
「おい。ここ半年ほどマデマメヤ国の情報がろくに入ってこないではないか。何をやっている」
「も、申し訳ございません。マデマメヤ国は一般人が伝達鳥を所有することを禁止しまして……。さらに伝達鳥を隠し持っている者を通報すると賞金がもらえるという法律が……」
「ならばゲンゲゲロ侯爵のスパイはどうなったのだ」
「全員帰還できず、連絡が取れないとのことです」
「なんだと? 理由は」
「はい。現在マデマメヤ国との国境は双方の兵が厳重に警戒しています。そこをくぐり抜けるのはスパイでさえも難しいかと」
「チッ……」
ガンデロ四世は舌打ちをすると足を組み替えて側近の従者に言った。
「まあいい。金属兵の完成を急げ。早急に100体すべて完成させるのだ」
「はっ!」
側近の従者は逃げるように下がっていった。
◆
その頃、ヤクウィー王の領地にある難民の町では、なんとあのマコの父である元国王が元気で暮らしていた。
元国王は仲間と一緒に農作業用のクワを肩に担ぎ、笑い合いながらサトゥマ芋畑から酒場に向かっていた。
「王様! きょうもガッツリ飲もうぜ!」
「おいおい、そろそろ王様もやめてくれよ。もう平民なんだぞ。はっはっは!」
「じゃあ、なんて呼んだらいいのさ」
「そうだなぁ、じゃあ名前で呼んでくれ」
「名前? そういえば王様の名前って聞いてなかったな」
「おう。私の名前はマルチェイッエ・レゲーノ・フォン・レイチェノルだ」
「おいおい、長げーよ!」
「はっはっは! ほんと、自分でも長いと思うよ。まぁ、名前は変えられないし仕方ないんだけどな」
「じゃ、縮めてマルちゃんでいいか?」
「おお、それは良いな! これからマルちゃんと呼んでくれ!」
「おお、分かったぜ相棒! じゃ、今日からマルちゃんな!」
仲間たちはマルちゃんの肩がバンバンと叩くと、マルちゃんは嬉しそうに仲間と肩を組んで言った。
「いやぁ、お前たちに会えて良かったよ! 平民の暮らしがこんなに楽しいとはな!」
「そりゃ良かったぜマルちゃん! しっかし、王様の時にマコ伯の難民キャンプに来た時は殺されそうになってたのにな! はっはっは」
「いやぁ、あの時はみんなに助けてもらって本当に感謝だよ。本当に、ありがとうな。それに今では心の底から反省してる」
「おいおい急にどうしたよ、らしくねぇなぁ。ってか、平民が楽しいなんて笑える王様だな」
「なに言ってるんだ、国王なんてなるもんじゃないぞ。毎日毎日ワケのわからぬ貴族や商人の話ばかり聞かされて、良く分からん儀式ばかりやらされて……」
「はっはっは! そう聞いてると王様も大変だったんだな」
「そのとおりさ。まぁ今では、こうやって汗をかいて仲間と一緒に美味い酒を飲める。最高じゃないか!」
「はっはっは! 違いねぇ! ……あ、そうだ。今日はベティルナちゃんが出勤の日だぜ!」
「おお! あのミニスカートが可愛いベティルナちゃんか!」
「そうよそうよ! マルちゃん、早く行こうぜ!」
「おう!」
マルちゃんたちは先を競うように仲良く酒場へ入っていった。




