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その頃、ラド公爵は新貴族連合の報告を受け、狼狽していた。
「な、なぜだ! 私が国王なのだぞ! なぜ他の貴族たちは従わぬのだ!」
しかし側近や従者たちは静かに黙っていた。
ガン!
ラド公爵は椅子を蹴ると、側近の1人に言った。
「おい! 新貴族連合に兵を出すぞ! 王国騎士団も我が領地に居るのだろう!? 力ずくで従わせてやるのだ!」
それを聞いた側近は小さく溜息をついてから答えた。
「公爵……、いえ、国王様。お忘れですか? 我が領地は現在ガンデロ帝国とゲンゲゲロ公爵領と接している最前線でございます。もし兵を出せば手薄な所を攻められるでしょう」
「何を言っているのだ。我らは、王族どもの領地と引き換えにガンデロ帝国と平和条約を結んだのだ。攻めてくるワケがなかろう!」
「いや、しかし、相手はガンデロ帝国……。平和条約を守るとは思えません……」
「うるさい! 良いか、これを見ろ! これはガンデロ帝国皇帝、ガンデロ四世様から賜った上等な腰巻きだ! この友好の証を見てもまだ言うのか!?」
その腰巻きを見た側近と従者たちは諦めに近い表情を浮かべると、ラド公爵と話していた側近は何かを企むかのように大げさに答えた。
「ラド国王様! そのような上等な腰巻きは間違いなく友好の証でございます! 私も初めて目にしました。ぜひ、お近くで見せて頂きたく存じます!」
その言葉を聞いたラド公爵は即座に機嫌を直すと、嬉しそうにしながら答えた。
「そうだろう、そうだろう。私はリムリテイル王国とガンデロ帝国の橋渡しになった素晴らしい国王なのだ。お主もその証を見ることを許すぞ! こちらへ来い!」
「ありがたき幸せ!」
側近はそう言ってラド公爵の前へ行くと、ラド公爵が嬉しそうに広げた腰巻きをまじまじと見ながらラド公爵に言った。
「さようなら公爵様。あなたが私にくださった苦痛の日々、忘れはしません」
ズバッ!!
なんと側近は隠し持っていた短刀でラド公爵の首を切り裂いた。
「ぎゃぁぁあああ!」
ラド公爵は悲鳴をあげたが、側近や従者は誰一人として動かなかった。
そしてラド公爵は気を失って絶命した。
ラド公爵を絶命させた側近は静かに振り向くと、側近や従者たちに静かに言った。
「ラド公爵様は自らの愚かさに気づき、自害されました。祈りましょう」
その言葉を聞いた側近と従者たちは静かに跪いて両手を組んだ。
ラド公爵を絶命させた側近は、ラド公爵の手に短刀を握らせた。
◆
そして、それから数日後。本物の国王と王族は王国騎士団と共にラド公爵領から解放され、マコ伯爵の元へと逃げ延びた。
そしてラド公爵の領地は、ラド公爵の側近たちの懇願もあり、マコ伯爵の領地に編入される事になった。
そして、マコ伯爵は父の国王と母、そして弟たちと会うことになった。
―― マコ伯爵の邸宅 謁見の間 ――
マコ伯爵は両親と弟たちを謁見の間に招き入れると、なんと国王である父と王妃の母、そして弟たちも並んで頭を下げた。
その様子を見たマコ伯爵は驚いたものの、冷静に言葉を発した。
「父上、母上。それに弟たちよ。頭を上げてください」
その言葉を聞いた国王たちは頭をあげると、マコの母親は涙を流しながらマコに言った。
「マコちゃん、ごめんなさい。今さら助けてくれだなんて……」
すると父親の国王もマコ伯爵に言った。
「すまなかった。私は知らなかったのだ。あの公爵があんなにも悪人だったとは」
しかしマコ伯爵は表情も変えずに答えた。
「悪人……。では父上は悪人ではないと?」
それを聞いた父の国王は額から汗を流した。
その様子を見ていた弟たちは、息を呑んで成り行きを見守っていたが、次期国王候補だった長男がマコ伯爵に口を開いた。
「お姉様。私は次期国王の座をお姉様に譲りしたいと思います。そして、父上にはご隠居頂き、国政のご意見番として……」
長男がそこまで言うと、マコ伯爵は言葉を遮るように言った。
「必要ない。我ら新貴族連合は、新しい国家を樹立するつもりだ」
すると父親の国王が笑顔を見せながらマコ伯爵に言った。
「では、おまえが国王になるのだな!」
「いえ。新しい国家は、私の他に、デウ子爵、マツリ子爵、メロナッカ男爵、ヤクウィー辺境伯がそれぞれ王となる五王政の国家とするつもりです」
「なっ!? 五王政だと!?」
「はい。国の重要な事は5人の王の多数決で決め、奴隷制度は廃止して労働力に、そして魔族とも協力して国を栄えさせるつもりです」
「魔族だと!? 何を言っているのだ、目を覚ませマコよ!」
「お父様。目を覚ますのはお父様のほうです。今日より、お父様は我が伯爵領の平民となります。もちろんお母様も弟たちも」
その言葉を聞いた国王は怒りが頂点に達してマコ伯爵を罵倒した。
「マコ!! お前は何を言っているのか分かっているのか!? それが父親に対する態度か!!」
しかしマコ伯爵は毅然とした態度で国王に言った。
「父上。ご自分の立場をお分かりですか? あなたは民衆から嫌われていました。だから平民として身を隠して頂きたいだけです。勘違いをなさらぬよう」
「なっ、なんだと!! この国の王がそんな訳があるわけがない!!」
「では、あのテラスから見える難民キャンプで、自分が国王だと言えますか?」
「当たり前だ、私を何だと思っている! あの難民は元々王族の息のかかった土地の民。私がこの王冠と胸の勲章を見れば、難民どもなど一瞬でひれ伏す!」
「分かりました。では見させていただきます」
マコ伯爵がそう言うと、国王はマコ伯爵の従者に連れられて難民キャンプへと向かった。
すると母親と弟たちはマコ伯爵に言った。
「マコちゃん。私は平民で良いわ……。ごめんなさいね」
「お姉様。私も同意いたします」
「お姉様、私もです」
それを聞いたマコ伯爵は母親たちに言った。
「お母様。お母様は料理がお得意でしたね。ぜひ、伯爵邸の料理をお任せできないでしょうか」
「えっ!? いいのですか!? ありがとうマコちゃん。喜んで引き受けるわ」
「弟たちよ。お前たちは王立軍事大学を首席で卒業している。今、我が領地はガンデロ帝国との最前線となった。お前たち2人に1小隊ずつ任せる。働き次第でもっと大きな隊を任せよう」
「はっ、お姉様! 承知しました!」
「はい! お姉様!」
こうしてマコ伯爵は、母親と弟たちを救う形になったが、その後国王がどうなったかは知る由もなかった。




