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メロナッカ男爵、マコ伯爵、そしてインメリアとラゴは関所を抜け、ヤクウィー辺境伯の邸宅へ向かって馬を走らせていた。
メロナッカは馬を走らせながらマコ伯爵に気になっていたことを尋ねた。
「マコちゃん、一体いま何が起きているの?」
「ガンデロ帝国とゲンゲゲロ侯爵が手を組んで王都を陥落させたのだ」
「ええっ!」
「しかし問題はその先だ。今、王都に居た大量の住民が難民となってラド公爵領と、我が伯爵領に流入しようとしている」
「それは大変!」
「我が領地の規模で王都の難民の数を養う事は難しい。そして彼らを一時的に預かる土地もない。そこで広大な土地を持つヤクウィー辺境伯にご助力を願いに行くのだ」
「そういう事だったのね。確かに人口の三分の一は王都に住んでいたわ。そんな人数の難民が溢れ出したら王国の経済は……」
「その通り。ラド公爵にも助けを願いたいが、あの方はああいうお方だ。金を減らすだけの難民など受け入れずに放り出すだろう。だが私は難民の方々を出来る限り救いたい」
それを聞いたインメリアはマコ伯爵の気位に感銘を受けて思わずマコ伯爵に言った。
「マコ伯爵。あなたは素晴らしいお人だ。いっそ国王になったほうが良いお方だと思う」
すると、それを聞いたマコ伯爵は笑いながら答えた。
「はっはっは! お主は何も知らぬのだな。だが、私もまだ諦めていはいない」
インメリアはマコ伯爵の返答に少し理解が追いつかないでいると、メロナッカがインメリアに説明した。
「インメリアちゃん。マコちゃんはね、国王の第一王女なの」
しかしインメリアは不思議に思って聞き返した。
「第一……、王女? しかし、彼は気位の高い男性ではないか」
「ううん。マコちゃんは体は女性、でも心は男性。私と正反対なの。だから幼い頃からお互いの良き理解者でね」
「おお、そういうことだったのか。納得がいった」
「それでね、この国は女王は認めないの……。それでマコちゃんは国王の後継者ではなくて、伯爵として……」
するとそこまで聞いていたマコ伯爵がインメリアに言った。
「平たく言えば、追い出されたのだ。はっはっは!」
メロナッカはマコの少しだけ悲しそうな笑い声に目を伏せると、それを見ていたインメリアはマコ伯爵に言った。
「追い出されたのなら力で取り返せは良いではないか。我々魔族は昔からそうしている」
それを聞いたマコ伯爵は驚いて声をあげた。
「ま、魔族だと!?」
しかし小さく笑うと、一瞬メロナッカを見てからインメリアに言った。
「魔族と聞いて驚いてしまって済まなかった。メロナッカと共にいる者が信用出来ない訳が無かったな」
そしてマコ伯爵は軽く会釈するとメロナッカに話を続けた。
「王宮が陥落して父たちはラド公爵の元へ逃げたという。父上も浅はかだ……。あのラド公爵の元へ行けば、おそらく幽閉され、ラド公爵が王を名乗るだろうに」
それを聞いていたラゴはマコ公爵に尋ねた。
「伯爵様。伯爵様は王の一番の親族。なぜ王は、あなたを頼らなかったのでしょうか」
「それは簡単だ。私に王座を奪われると思ったのだろうな」
「そんな……。ですが王もラド公爵の悪名は少なからず知っているはずでは……」
「いや、あのタヌキ公爵は父の前ではヘコヘコしていた。私も伯爵になる前はヤツの本性を知らなかった」
「なんてことだ……。これでは本当に王は……」
◆
それから数日後、ラド公爵はマコ伯爵の予想通り王族を幽閉して王を名乗った。
そしてなんと、ラド公爵はガンデロ帝国と和平条約を結び、その見返りに王族の支配が強かった王都地域をガンデロ帝国に渡してしまったのだった。
その結果、難民の数は増え、マコ伯爵、デヴ子爵、マツリ子爵、コラナッカ男爵、メロナッカ男爵、そしてヤクウィー辺境伯の領地で難民を受け入れる事になった。
しかし、すぐに食糧難が発生し、それに対応するために、哲夫率いるヨクヨ商会が救援に乗り出した。
―― ベベの村 ――
哲夫と和代は、在庫として備蓄していた米の出荷を指示しながら話していた。
「哲夫さん、何をそんなに嬉しそうにしているんですか」
「え? いやなに、備蓄しておいて良かったな、と思っていてな」
「そうね。でも、まさかこんな事になるだなんて」
「ああ。だけど、ただの商売人が沢山の人たちを助けられるんだ。こんな名誉なことはない。まぁ、せっかくの商品が1プナにもならないのは残念だけれど、それよりも嬉しい名誉だな」
するとその時、米の炊き方を勉強しに来ていた難民たちの一人がやってきて頭を下げながら哲夫に言った。
「私は王都で商売をしていました。しかし、本当にヨクヨ商会の皆様には頭が上がりません。同じ商人として尊敬するばかりです。このお礼は必ずお返しいたします」
すると哲夫は笑顔で答えた。
「いえいえ、とんでもないです。皆様には自給自足をしていただけるよう手配しておりますので、しばらく少ない米で耐えてください」
「そんな、もちろんです! 食べ物を頂けるだけでも感謝が絶えません!」
するとその時、ガーゴイルを先頭に、羽のある魔族たちが次々と哲夫のそばに舞い降りた。
そしてガーゴイルたちは各地の状況を哲夫に報告した。
「哲夫様。マコ伯爵を筆頭に、子爵、男爵、そして辺境伯は結束し、新貴族連合を樹立しました。王を名乗ったラド公爵は孤立した模様です」
「全ての難民は新貴族連合の領内で全員受け入れが完了しました。難民の特徴や特技を活かせる行き先を指示しています」
「米と麦の農作業人員として名乗りをあげた難民たち約300名が、馬車と馬で魔王領へと出発しました」
「魚の運搬のルートを馬車が通れるように魔族の巨人たちが改良しています。明日には開通しますでしょう」
「新貴族連合の中の関所を一時的に解放しましたが警備を強化しました。ヨクヨ商会の馬車は旗を掲げるようにと指示がありました」
すると哲夫は全てに了解した。
「新貴族連合の件、難民の受け入れ状況、農作業人員の件、承知しました。海へのルートは確保できるまではピストン輸送を頼みます。旗は暫く手書きの旗となると伝えてください」
「「はいっ!」」
ガーゴイルたちは返事をすると再び素早く空へと飛び去った。
哲夫にお礼をしていた難民の1人は魔族がいる事にも驚いたが、たくさんの報告に素早く答えた哲夫にも驚いていた。




