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その頃、クラクモと逃げていたデウ子爵とナララハは、先に逃げていた家臣や従者たちと合流した。
速く走れず、体力の無かったナララハはクラクモが背中に乗せて逃げ、逃げている道中でナララハはクラクモを信頼するようになっていた。
家臣たちと合流したナララハはクラクモから降りるとクラクモにお礼をした。
「わたし、あなたを誤解していたわ。背中に乗せてくれてありがとう」
するとクラクモはやれやれといった表情で答えた。
「やっと信じてくれたのね。まぁ、私もしっかり説明しなかったのが悪かったわね」
クラクモとナララハが仲直りすると、隣で見ていた子爵は子どもの成長に涙しながらナララハに言った。
「ナララハ、正直に謝るなんて凄いじゃないか。偉いぞ」
しかし、子爵親子が感動に浸る中、家臣や従者たちは魔族のクラクモが居ることに恐れ慄いていた。
それに気づいた子爵は慌てて家臣たちにクラクモの説明を始めた。
「みんな、怖がらないでくれ。この方はクラクモさんと言って魔族の医者なのだ。現にストレスで飲みすぎていた私を救ってくれた」
子爵の言葉を聞いた家臣や従者たちは少し落ち着きを取り戻すと、家臣の1人が勇気を出してクラクモに尋ねた。
「あ、あの、クラクモ様。噂では魔族は人間を食らうと聞きました。あなた様は子爵様を助けたというのは本当でしょうか」
するとクラクモは少しガッカリした表情で答えた。
「魔族も色々居るけど、知性のある魔族は人間なんて食べないわよ。ちなみに、ドラゴンだって知能があって会話ができるドラゴンなら滅多なことがない限り人間なんて食べないわ」
「そ、それは本当なのでしょうか。しかし、私の父はシルバーウルフが人間を食べるところを見たと……」
「ちょっ……。それって魔族じゃなくて獣だから。これだから魔族の噂って変に広まるのよね……」
クラクモはそう言うと、地面に爪で図を描きながら説明し始めた。
「まず、ワンワンとかガウガウ鳴いて意思疎通ができないのは魔族じゃなくて獣ね。でも獣の見た目で意思疎通できる魔族もいるし、逆に獣でも魔法の類を使う獣もいるから混同しないでね」
それを聞いた従者たちが深く納得して何度も頷くと、クラクモは少しだけ得意になって話を続けた。
「私たち魔族は程度の差はあるけど知性があるし、魔法や特殊能力が使える者もいるわ。ちなみに私の能力は傷や病気を治療と回復魔法。あと言っておくけど、人間なんて食べた事ないわよ」
「「おおぉー」」
「そもそも何十年か前に、魔王様のお力がまだ絶大でガンデロ帝国とリムリテイル王国を平和に導こうとしていた時にね……」
クラクモがそこまで言うと従者の1人が思わずクラクモの言葉を遮って口を開いた。
「魔王が平和に導くですと!?」
しかしクラクモはキョトンとした顔で答えた。
「だってガンデロ帝国もリムリテイル王国も平民に貧しい暮らしをさせていたし、奴隷まで居たじゃない? 魔王様はそれを知って大陸統一を掲げて平和と平等を目指したのよ」
それを聞いた家臣や従者たち、そして子爵に至るまでが表情を曇らせて下を向いた。
するとその時、おじいさんたちが子爵たちを見つけて駆け寄ってきた。
それを見つけたナララハはおじいさんの元へと走っていった。
「賢者様!!」
ナララハはそのままおじいさんに抱きつくと、その様子を見ていた家臣たちはどよめいた。
「け、賢者様だって?」
「本当なのか……」
「でも見ろ、緑の衣をまとって」
おじいさんはナララハの肩を優しく撫でると、手を繋いで子爵のところまでやって来た。
そしてクラクモを見つけると、クラクモに頭を下げてお礼をした。
「クラクモさん、あなたの言う通りでした。魔石を壊して勝つことができました。大変助かりました」
それを聞いたクラクモは安心したように答えた。
「それは良かったです。ですが魔石を破壊できたのはさすがです」
「はい、なんとか。ははは」
するとおじいさんはクラクモに頭を下げてお願いをした。
「クラクモさん、お願いがあるのですが、番兵の方が怪我をしておらまして、もしクラクモさんが治療できるのでしたら……」
それを聞いたクラクモは真剣な表情になっておじいさんに答えた
「お任せください。その方はどちらに?」
「あ、はい、こちらです。それと上司の方もまだ生きてらっしゃって……」
クラクモはおじいさんに連れられて邸宅の方へと向かった。
そしてそれを追いかけるようにナララハが走っていくと、デウ子爵もそれを追った。
その様子を見ていた家臣と従者たちは口々に言葉を漏らした。
「クラクモさんの、あの表情……」
「ええ。まるで聖者様のようです」
「金の亡者の医者に見せてやりたい」
「我々は魔族を誤解していたな」
「はい、そのようですね」
「私も行ってきます。何かお手伝いを!」
従者の1人がそう言うと、その言葉に他の家臣や従者たちも急いで子爵の邸宅へと向かった。
◆
その頃インメリアとラゴは、べべの村を見たいというメロナッカ男爵を連れて村へ帰ろうと向かっていた。
しかしヤクウィー辺境伯領に入る関所に到着すると、馬車が大渋滞していて動けなくなっていた。
メロナッカ男爵は大渋滞している馬車の横を抜けて関所に行き、事情を尋ねた。
「ちょっと、これはどういう事なの? こんなに大勢の人たちが……」
すると関所の門番が困りながら答えた。
「おお、これは男爵様。先ほど伝達鳥が来まして、ガンデロ帝国が王宮を陥落させたと……。情報を早く得た者たちが王宮から一番遠い辺境伯領に逃げようと、こんな事に」
「ええっ!!」
メロナッカ男爵が驚いていると、突然、細身で美しい騎士が白馬を走らせて関所にやって来た。
そして手綱を引いて馬を止めると門番に言った。
「急ぎの用事だ。通してくれ」
「はっ、マコ伯爵様! 承知しました!」
突然の伯爵の登場に、門番は慌ててマコ伯爵を通そうとした。
しかしその時、メロナッカ男爵が声をあげた。
「え!? マコちゃん!?」
その声に振り返ったマコ伯爵はメロナッカ男爵の姿に表情を崩し、微笑みながら答えた。
「メロナッカじゃないか。久しぶりだな」
「う、うん! マコちゃん、やっぱり相変わらず素敵ね! こんな所で会えるなんて」
「それはこっちの台詞だ。メロナッカこそ今日も麗しいぞ」
「も、もうっ! マコちゃんったら」
メロナッカ男爵がはにかみながら笑顔を見せると、マコ伯爵の紳士な態度にインメリアも尊敬の眼差しを送っていた。
それを見たラゴは少し嫉妬しながらマコ伯爵を見つめた。




