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ブォォオオ! ブォォオオオオ!
番兵の角笛に周りの兵士たちが集まってくると、兵士たちは隊列を整えて、侵入してきた鎧に声をあげた。
「止まれ! 何者だ!」
しかし鎧は何の返答もしなかった。
「止まらなければ命の保証はできないぞ!」
兵士がそう言って剣を抜くと、突然、鎧は恐ろしい速さで走り出し、先頭の兵士に斬りかかった。
先頭の兵士は咄嗟に盾を前に出したが、兵士は鎧の剣に盾ごと吹き飛ばされ、地面に転がった。
するとそこへ鎧が走り込み、とどめを刺しに行った。
その様子を見ていたおじいさんは急いで火薬玉を手に出現させると、大きく体をしならせて、鎧と兵士の間へと火薬玉を投げつけた。
シャァァアアアアア!
ドガァァアアアアン!
おじいさんの火薬玉が地面に叩きつけられて爆発すると、鎧は少し怯んで後ろへ下がった。
兵士たちはその隙を見て隊列を整えながら後退した。
すると鎧は、邸宅の裏口に居たおじいさんたちを見つけ出し、ゆっくりと歩いてきた。
おばあさんは望遠鏡を静かに床に置くと、おじいさんに言った。
「あの鎧、こちらに気づいちゃったみたいね。遠くから攻撃できるわたしたちで時間稼ぎをして、その間にみなさんに逃げてもらいましょう」
おじいさんは柔和に笑って答えた。
「ああ、そうだね。どこまで出来るかわからないけれど、やってみよう」
おばあさんはおじいさんの笑顔に笑顔で頷くとデウ子爵に言った。
「子爵様。わたしたちで時間を稼ぎますから、子爵様と邸宅の皆さんは出来るだけ遠くに避難してください。メメちゃんとクラクモちゃんも一緒に避難してちょうだいね」
しかしそれを聞いたメメはおばあさんに言った。
「いえ、私も共に戦います。今は弓の技術も精霊の魔法も使えます。足手まといにはなりません」
そしてクラクモもおばあさんに言った。
「私は戦えませんが、気づいたことがあります。あの鎧の隙間から見えるのは魔力を帯びた魔石の一種かと。おそらくあれが動力源なはずです」
「わかったわ。貴重なお話をありがとう。クラクモちゃんは早く逃げてちょうだい」
「はい。お役に立てず、すみません。どうか、ご武運を」
おばあさんはクラクモの言葉に笑顔で頷くと、振り返って魔法の杖を出現させた。
それを見たメメは素早く前に出ると、弓を構えながらおばあさんに言った。
「洋子様、私が前衛に出ます。洋子様とひろし様は後ろから援護をお願いします」
「わかったわ!」
「おねがいします!」
おじいさんとおばあさんが返事をすると、メメは疾風のごとく走り出した。
すると、メメに気づいた鎧は飛び出して、持っている剣でメメを薙ぎ払おうと振り抜いた。
ブンッ!
しかしメメは、それを背面跳びのように躱すと、頭を逆さにしたまま素早く矢を放った。
ヒャッ!
ガッ!
そしてメメは片手でバク転をして着地すると、そのまま軽やかにステップして鎧の背後に回り込み、大きく距離をとった。
鎧は慌てて振り返ると、そこへおじいさんの投げた火薬玉が飛んできた。
シャァァアアアアア!
ドガァァアアアアン!
火薬玉は鎧の頭に命中すると、鎧は爆発した勢いで態勢を崩した。
その瞬間を見逃さなかったメメは、地面を力強く叩いて精霊の魔法を呼び出した。
「大地の精霊たちよ、力をお貸しください!」
メメがそう言うと、地面から何本もの太い木の枝が飛び出し、そのまま態勢を崩した鎧に絡みついた。
鎧は木の枝に動きを封じられると、そこへ大呪文を完成させたおばあさんの大きな氷柱が何本も襲いかかった。
ズガガガガガァン!!
ガシャン!!
大きな氷柱が全て鎧に命中すると、鎧は頭をうなだれるように下げて体を屈ませ、動きを止めた。
すると鎧の首の後ろに大きな隙間ができ、中にある紫色の魔石が露出した。
それを見逃さかなったおじいさんは、その隙間めがけて勢いよく火薬玉を放った。
シャァァアアアアア!
おじいさんの放った火薬玉は一直線に魔石に飛んでゆき、鎧の中へ吸い込まれるように入っていった。そして、
ドガァァアアアアン!
おじいさんの火薬玉は内部にあった魔石を粉々に破壊した。
―― ゲンゲゲロ侯爵領にある砦 ――
おじいさんたちが戦っていた場所から少し離れた砦では、森でレッサーデーモンを蹴っていた魔道士が大声をあげながらパニックになっていた。
「そんなバカな! あの金属兵がやられただと!? 操作してた兵士はどんなボンクラなんだ!!」
しかし、近くに居た他の魔道士が答えた。
「いえ、ゲンゲゲロ侯爵家の騎士長でございます。しかし騎士長が言うには、精霊魔法に拘束され、見たこともないような氷の特大魔法、そして火の魔法にやられたと……」
「なにっ!?」
「特に氷の魔法は白金級の魔法を超えるものだったと申しております」
「なっ……、白金級を超える魔法だと!?」
「はい」
「私の青銅級をはるかに凌ぐ魔法とは……!? デウ子爵め、どこからそんな輩を……」
すると魔道士は焦りに滲ませながら尋ねた。
「マ…、マツリ子爵のほうの金属兵はどうだ」
「はい、そちらは順調に戦っておりましたが……、操作している者が……」
「なんだ、どうした」
「目が回って気持ち悪いと言い出しまして」
「な、なんだと!?」
「少しずつ操作が鈍り、マツリ子爵の格闘兵団を圧倒するほどには戦えておりません……」
「くっ、目が回るとはどういうことなのだ……。だが仕方がない、一時撤退させろ。金属兵を2体も失っては大変だ!」
こうして、この世界で初めての「VR酔い」が原因で、金属兵はマツリ子爵領から撤退したのだった。




