44
インメリアとラゴはメロナッカ男爵領に戻ってくると、メロナッカは嬉しそうに屋敷の衣装室に2人を案内した。
そしてメロナッカは自慢のドレスをインメリアに見せるとインメリアはメロナッカと一緒に衣装を物色してメロナッカに言った。
「メロナッカちゃん、このモノトーンのドレスが似合うんじゃない? そのドレスにこの金色の髪飾りとかさ。それで、やっぱヒールは赤だよね!」
「まぁ、インメリアちゃん! 私もそう思ってたの! さすがだわ!」
するとメロナッカは少し疑問に思っていたことを思い切ってインメリアに尋ねた。
「インメリアちゃん。嫌な質問だったらごめんなさい。インメリアちゃんは何の躊躇もなく私を女の子だと言ってくれたわ。どうして、そう言ってくれたのかしら」
するとインメリアは少しだけ考えたが笑顔で答えた。
「私さ……、実は魔族なんだ。魔族ってさ、一応男女もあるんだけど、自分で増殖するやつとか、女性の見た目をした植物だったりとか色々居てさ。だから私たちは外見じゃなくて心を見るんだ」
インメリアがそう言うと、メロナッカは笑顔でインメリアに言った。
「そうだったのね。でもインメリアちゃんが魔族だなんて驚いたわ。もしかして、魔族の世界に行ったら私は女の子なのかしら」
「それはそうだよ! メロナッカちゃんは素直で優しい女の子だから、みんなの人気者だよ!」
「ええっ!?」
メロナッカが驚くとラゴもメロナッカに言った。
「私もそう思います。……でも、ごめんなさい、本当は最初驚いたんです。だけど、インメリアさんと話すメロナッカ男爵はとても可愛い女性です」
それを聞いたメロナッカは顔を赤くして喜ぶと、意を決したようにインメリアに言った。
「私、魔族になるわ」
しかしインメリアは驚きながらメロナッカに言った。
「いや、えっと、人間は魔族になれないんだよ」
「だって、インメリアちゃんは人間に見えるじゃない。だったら私も魔族に……」
「私は人間の血が混ざった魔王様の血筋でさ。魔王様のいとこなんだ」
それを聞いたメロナッカとラゴは驚いた。
「魔王のいとこ?」
「えっ、インメリアさんが?」
「うん。だから見た目が人間なんだよ。もちろん、親戚には人間とは遠い見た目の奴もいるけどね。魔王様だって人間に見えるでしょ、ラゴ」
「た、たしかに」
「昔はさぁ、魔族の世界だと人間みたいな見た目だとバカにされてさ。特に私は魔力が少なかったから散々イジメられて。だから剣術を磨いて見返してやったんだ」
するとその話を聞いたメロナッカは涙を流しながらインメリアに言った。
「それ、私も同じよ! 私は小さい頃から女みたいだってバカにされてね。でも女なんだからしょうがないじゃない。だけど、見返してやろうって剣術を磨いたの」
それを聞いたインメリアはメロナッカを抱きしめると、背中を優しく叩きながら言った。
「メロナッカちゃん、頑張ったんだな」
するとメロナッカもインメリアに言った。
「インメリアちゃん、ありがとう。あなたも頑張ったのね」
2人が抱き合うと、ラゴは涙を流しながら手を叩いて拍手を贈った。
パチパチパチパチ……
しかしその時、メロナッカはハッと思いついてインメリアに言った。
「こんな時にアレなんだけど……。インメリアちゃんがもし彼と結婚したら、子どもは……」
「え、あ、いや。ははは。たぶん、人間が濃い魔族になる……、のかな? ははは」
「あら、それなら良かったわ! 男女の偏見の無い子どもになるかもしれないわね!」
「あ、たしかに! それは最高だよね!」
「ええ!」
インメリアとメロナッカは意気投合すると、ラゴを応接間へ追い出して、しばらく衣装室でお互いにドレスを選んで着せ替えごっこを楽しんだ。
◆
その頃、メロナッカの兄のコラナッカ男爵はヤクウィー辺境伯の前で辺境伯側に有利な書類にサインをさせられそうになっていた。
コラナッカ男爵は手を震わせながらペンを持ったが。ヤクウィー辺境伯に取引を申し出た。
「辺境伯殿。この度の度重なるご無礼、申し訳ございません。ですが、全ては私の知らないところで下の者がやった事でございますし、この書類に私がサインをしては王国が黙っていないと……」
ヤクウィー辺境伯はコラナッカ男爵の言葉に冷静に答えた。
「あなたは我が領地に死熊を放ち、その上、我らを眠らせて暗殺しようとした。王国が黙っていないのはどちらでしょうか? 試してみるためにもサインをしてください」
「辺境伯殿、さすがに我が領地の商売の権利を全て渡すのは王国の慣例に反すると……」
「では、契約は決裂ですね。ではコラナッカ男爵領を王国裁判所へ連行します」
「なっ! 何を勝手な事を言っているんだ! 男爵の私に歯向かうのは爵位を与えた国王に逆らうのと同じ! おまえは国王に歯向かうのか!?」
しかし、ヤクウィー辺境伯は全く引き下がらずに、コラナッカ男爵を圧倒する勢いで答えた。
「国王に歯向かったのはお前だろう! 我がヤクウィー辺境伯領に死熊を放ち、その上私の暗殺を計画したお前の企みは、この王国への反乱!」
「うっ……」
「今から王国裁判所に連行する! 王国への反乱罪となれば側近と共に即刻死刑。それで良いのだな!?」
するとコラナッカ男爵は頭をうなだれて答えた。
「申し訳ございません。どうか、それだけはお許しを」
しかしヤクウィー辺境伯は矛を収めなかった。




