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魔王エヴとアカネは暫く笑いながら話していたが、アカネはエルジョルートに気がついて駆け寄った。
「きみ、辺境伯さんの騎士だよね?」
「はいっ! 辺境伯の次男、エルジョルートでっす!!」
エルジョルートは魔法の威力に驚きすぎて、少し変なテンションで答えた。
「あ、そうなんだ! 辺境伯さんには村のみんなが助けられてるみたいで感謝してるよ。ありがとね」
「はっ! 身に余る光栄でございます、はいっ!!」
「えっと、ちょっと聞きたいんだけど、この街に美味しい食べ物があるって聞いてエヴっちと寄ったんだけどさ、知ってるかなぁ」
「はっ! それは味付けした新鮮な野菜にトロトロのチーズをかけ、香ばしく焼いた薄切り肉を乗せるコレ・マイウという料理でございます!」
「まじで!! もう聞いただけで絶対美味しいじゃん! どこのお店で食べられるの?」
それを聞いたエルジョルートは突然片手を挙げると、大声で遠くにいる街の人々に声をかけた。
「街の者たちよ! この死熊を倒した英雄様がコレ・マイウをご所望だ! この街で最高のコレ・マイウはどの店にあるか!!」
すると数名の街の人たちが競うように走ってきた。
「わ、私の店のコレ・マイウは街で一番です!」
「いえいえ! わたしの店が!」
「英雄様! どうか私の店に!!」
「いやいや、私の店に! どうかお礼を!」
こうしてアカネと魔王エヴは動けなくなるほどコレ・マイウを食べたのだった。
◆
その頃、おじいさんとおばあさんは、頭飾りで耳を隠したエルフのメメが引く馬車で、比較的距離が近いデウ子爵領の関所までやって来ていた。
おじいさんとおばあさんはヤクウィー辺境伯から貰った通行証を関所の番兵に見せると番兵は驚いて声を漏らした。
「これは辺境伯様の封蝋(本来は封筒の封をするときに使われる蝋に押された印章)が押された通行証ではないか……」
すると番兵は姿勢を正して槍を立て、大きな声でおじいさんたちに言った。
「デウ子爵領へようこそお越しくださいました! 道中お気をつけて行ってらっしゃいませ!」
「これはご丁寧に」
「ありがとうございます」
おじいさんとおばあさんが番兵に挨拶すると、メメは馬を進ませて馬車を走らせた。
◆
しばらく馬車を走らせると、目の前に大きな街が見えてきた。
そしておじいさんたちは街の入口までやってくると、入口を守る門番が馬車を止め、メメに尋ねた。
「この街へはどのような用事だ。観光なら10プナ、商売なら50プナ。ただし回復薬を売るのならば金は取らぬ」
それを聞いたおばあさんは驚いて門番に尋ねた。
「ええと、回復薬を売るのならお金は取らないのね。なぜかしら」
「知らないのか? 辺境伯領のヨクヨ商会が回復薬を専売するんだ。回復薬はこれまで以上に貴重になる。だから回復薬を持った商人は喉から手が出るくらい欲しい」
それを聞いたおばあさんは、小声で呟いた。
「困ってしまう方もいらっしゃったのね……」
すると、おばあさんはアイテム欄に入れておいた村の回復薬を選んで門番に見えないように手に出現させると、門番に回復薬を見せながら言った。
「この街に回復薬をお売りします。どちらに行けば良いのかしら」
回復薬を見た門番は大きく目を見開いて驚くと、おばあさんに待つように伝えてどこかへ走っていった。
◆
しばらく後、おじいさんたちは街の中心にある大聖堂に居た。
そして豪華な部屋で待たされていると、部屋の扉が開いて1人の神官が入ってきた。
そして丁寧に会釈をしながら挨拶をした。
「ようこそお越しくださいました。私はこの大聖堂の神官テウテテと申します。この度は回復薬をお売りいただけるとのことで……」
それを聞いたおばあさんは自分用に用意していた村の回復薬を10個差し出して言った。
「回復薬10個です。みなさんは回復薬にお困りなんですか?」
すると神官は回復薬を受け取りながら答えた。
「はい。街で大怪我をした者たちは大聖堂に運び込まれます。僧侶の回復魔法でも治せなければ回復薬で治すので、在庫を保つ必要がありまして……」
「そうだったのね」
「大聖堂にも回復薬の調合ができる者がいるのですが、どうしても成功率が低く……」
それを聞いたおばあさんは、思わず神官に尋ねた。
「それでしたら、回復薬を作る材料はあるのかしら」
「はい。キノコと乾燥した土地に生える草は沢山あります」
「まぁ、ならば話は早いわ。回復薬を調合する場所に案内していただけないかしら。わたしは回復薬の調合が得意なの」
「そ、それは本当ですか!?」
こうして、おばあさんは30個ほどの回復薬を調合し、この街の回復薬のかつての価格、1個200プナの価格で買い取ってもらった。
おじいさんたちは部屋を出ると、おばあさんがおじいさんに言った。
「この街では回復薬が200プナだったのね。村では50プナなのに……」
「そうだね。だけど商人さんが運ぶ手間賃だとか、街に入る時のお金とか、色々あるんじゃないのかなぁ」
「そうね、そうかもしれないわね。そう言えば、わたしたちの通行証は無料で領地を通れるけれど本来は有料だったわね」
「ああ、そうだったね。いやぁ、ありがたいなぁ」
おじいさんたちはそんな事を話しながら大聖堂の外に出ると、少し遠くから女の子の声が聞こえてきた。
「もう一回! もう一回やるの!!」
「いえ、しかしお時間が……」
「いいの! 絶対お願い叶えるの!」
おじいさんたちが声のする方に目を向けると、小学生くらいの女の子が泣きながら声をあげていた。
おじいさんたちが心配そうに女の子を見ていると、近くで掃除をしていた神官がおじいさんたちに説明した。
「あれは、投げた石が池の中心にある小さな岩に当たると願いが叶うという運試しでして……。あの女の子は朝からも何時間も」
それを聞いたおじいさんは女の子の元へと歩いていった。




