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インメリアが見せたガンデロ帝国の腰巻きに驚いたラゴは思わず声を荒げた。
「お前が盗賊だったのか!!」
しかしその様子を冷静に見ていた哲夫はラゴに言った。
「ラゴさん。この村には貴族連合から商人が沢山来ます。公爵家がこの村に大量の食料、いえ賄賂を贈った事が知られれば、その噂はすぐに広まるでしょう。そうなれば貴族連合も混乱いたします。ご理解ください」
その言葉は聞いたライズとラゴは、公爵の考えを良く知っていたため黙ってしまった。
するとインメリアは、今度はラジジに向かって言った。
「ご老兵。あなたは、そのラゴを守ると言ったが、それだけの実力があるのか? それほどとは見えぬが」
それを聞いた老兵のラジジは歩み出て、インメリアの前で片膝をついた。
「はじめまして。ラジジと申します」
インメリアは近づいてきたラジジに警戒して魔剣に手をかけたが、思わず吹き出してラジジに言った。
「ふっ! ご老兵、アレを隠し持っているな。あなたの実力、よく分かった。そう来るとはな」
その言葉を聞いたラジジは柔和な笑顔で頭を下げた。
「いえ、老いぼれが正面切って力で戦うのは愚の骨頂。しかし、これに気づかれるとはお嬢様も相当な手練れ」
それを聞いたインメリアは少しだけ嬉しそうに答えた。
「ご老兵、いやラジジと言ったな。かすかな匂いでわかったぞ。だが実は私も同じような事をするのだ。あなたとは気が合いそうだな」
そう言われたラジジは緊張を解いてインメリアに言った。
「はっはっは、そうでしたか。しかしお嬢様、この事はご内密に」
「はっはっは! 承知した」
結局ラゴとライズ、そしてラジジをはじめとする100騎の老兵たちは、おじいさんたちの計らいで村の近くで一晩野営することになった。
―― 翌日の早朝 ――
ラゴとライズ、そして老兵たちは村の人々が起床する前に村を静かに掃除し、美しく隊列を整えて立ってた。
そこへ朝の体操をするためにやって来た谷の遺跡の魔族たちが、隊列を整えて立っている兵士に気がついて身を潜めた。
「あ、あれ?」
「知らない人間だ」
「行っていいのかな……」
しかし、その場にいたゴブリンのゴゴは魔族のみんなに言った。
「おでが、話してみるんだな。だから、待っててなんだな。な」
ゴゴは歩いて村の門をくぐると、整列している兵士たちの前に出た。
それを見たライズとラゴは顔を見合わせた。
「兄上! 彼こそが」
「ああ、ベベの村のゴブリンに違いない!」
ライズとラゴはそう言い合うと、ゴゴの前に出てひれ伏した。
その様子に驚いたゴゴは思わず後ろに下がると、ライズがゴゴに言った。
「ゴブリン様。この度は公爵家のマテリオーロ様をお救いくださいましてありがとうございました」
それを聞いたゴゴは表情を明るくすると、嬉しそうにライズに言った。
「あ、おもいだした! テテに食べ物をもってきてくれたんだな! な」
するとゴゴは隠れていた魔族たちに合図を出すと、皆を呼び寄せながら言った。
「みんな、だいじょうぶなんだな! このひとたちは、村のひとに食べ物をもってきてくれたんだな! な」
するとワラワラと魔族の仲間たちが村の中に入ってきた。
ライズとラゴは一瞬驚いたが、後ろで隊列を組んでいる老兵たちは何事も無かったように微動だにしなかった。
なぜなら、老兵たちの隊列の横にいつの間にか魔王エヴが居たからだった。
魔王エヴは動かずに隊列を組んでいる老兵たちに言った。
「私の殺気、気づいていないのはあの兄弟だけだ。老兵たちよ、私の殺気を感じながらも死をも恐れないその気位、感服するぞ」
しかし老兵たちは表情も変えずにいた。
その様子を見た魔王エヴは表情を崩して老兵たちに言った。
「安心してくれ。彼ら魔族の者たちは人間に危害は加えない。というより村の人たちと仲が良いのだ。皆、仲良く頼んだぞ」
すると老兵たちは一斉に踵を揃えて足を踏み鳴らした。
ダンッ!!
その音にライズとラゴは驚いた。
◆
村の人たちと魔族たちは朝の体操を終えると、魔族たちは谷の遺跡に帰ってゆき、村の人たちは昼から始まる回復薬の販売に向けて岩場にキノコと薬草を採りに出かけた。
そして哲夫はライズとラゴの元へやってくるとラゴに話し始めた。
「ラゴさん、食料は頂きました。ただ、勲章は頂けません。結局頂いても公爵家の紋章が入った勲章を売る先がありませんので」
するとラゴは申し訳無さそうに答えた。
「……確かにそうですね。申し訳ありません。慌てて家を出きてしまったので考えが至らず……」
「いえいえ、食料を頂けただけでも感謝いたします」
すると哲夫は、今度はライズに尋ねた。
「ライズさん。後ろにいらっしゃる兵士の方々は公爵家を捨ててこちらにいらしたという事でよろしいのでしょうか」
「はい。今は私と同じ、主のない兵士。これから仕事や食事。そして住まいの事を考えるつもりです」
するとライズの後ろから老兵のラジジが現れて哲夫に会釈し、話し始めた。
「昨日、この村の近くで野営させていただきまして大変感謝いたします。我らは大人数ゆえご迷惑かと。すぐ他の場所へ移動いたしますので」
「そうですか。ですが、皆様は元は公爵家の騎士。一度、この土地の領主にお目通しをしておいたほうが良いかと思いますが如何でしょうか。私がお連れしますので」
その言葉を聞いたライズとラゴ、そしてラジジは目を丸くして驚いた。
そしてラジジが哲夫に尋ねた。
「お連れしていただけるとは光栄でございます。……しかし、貴方様はこちらの辺境伯様とお知り合いなのでしょうか」
「ええ。気にかけて頂いております」
哲夫は笑顔で答えた。




