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おばあさんたちはテテの家から出ると、あばあさんは立ち止まってアイテム欄を見ながら呟いた。
「解毒薬が残っていて良かったわ。入院する前に回復系のアイテムなんかは全部皆さんにあげちゃっていたものね。うふふ」
するとそれを聞いたおじいさんもアイテム欄を見ながらおばあさんに言った。
「そういえば、わたしも殆どアイテムが残っていないなぁ。最後に大きな戦いがあってからは戦闘をしくなってしまったからな……」
「あら、大熊笹さんや茂雄さん、それに哲夫さんたちもそんな事言ってたわね」
おじいさんたちが話してると、なんと突然、村の長と体格の良い若い男たちが武器を持って近寄ってきた。
それを見た黒猫は怒りのあまり骸骨の姿に戻って村の長に警告をした。
「お主ら。我が主人の御前で武器を抜くか。相当の覚悟をもっての事であろうな」
しかし村の長と若い男性たちは大粒の涙を流しながら武器を仕舞わなかった。
それを見たおじいさんは村の長に尋ねた。
「長様、ご事情がわかりません。どうかお話していただけませんでしょうか」
すると村の長は涙を流しながら答えた。
「命をお救い頂きましたこと感謝いたします。しかし、村には魔道士様にお渡しできるお金はありません。それでは結局テテと母親は体を売ると言い出すでしょう」
すると後ろに控えていた若い男性たちが口々に言った。
「回復魔法をしたから、今は魔力が減ってるはず!」
「だから今なら、俺達でも」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
それを聞いたおばあさんは慌てて村の長に言った。
「いえいえ、お金は頂かないわ。あの子の笑顔が見られただけで満足すぎるわよ。うふふ」
おばあさんが笑うと、骸骨姿の黒猫は猫の姿に戻って村の長に言った。
「長殿。お主には我が主人の慈悲が分かったであろうか」
村の長は黒猫の言葉を聞くと、持っていた短刀を自らの首に突きつけて答えた。
「申し訳ございません! 村の者に武器を持たせたのは全ては私の指示でございます。彼らは悪くありません! 私の首を持って償わさせてください!」
しかし、その瞬間
シャァァァアアアア!
……キン!
なんと、おじいさんが石を拾って投げ、村の長の短刀を弾き飛ばした。
「あっ!」
村の長が慌てると、おじいさんは柔和な笑みを浮かべながら村の長に話した。
「長様。もし、わたしが同じ立場でしたら同じことが出来る勇気があるかどうか……。あなたはテテさんとお母様を守ろうと……。そのような長は村に必要だと思うのです」
村の長はおじいさんの言葉に硬直すると、おじいさんは話を続けた。
「長様、何か困っている事はありませんか? お金は頂きません」
しかし、それを聞いた黒猫が静かにおじいさんに忠告した。
「ひろし殿、お気をつけください。善意を受け取るだけの人間は、その劣等感から卑屈になり得ます」
「卑屈に?」
「はい。与える者は上位、与えられるものは下位。そこに上下関係が生まれてしまいます。しかし与えられる者は何か対価を支払う事で対等になれるのです」
「なるほど。さすが黒猫さん。わたしでは気づきませんでした。大変勉強になります。大変な間違いをするところでした」
それを聞いた黒猫は少し恥ずかしそうにしながらおじいさんに進言した。
「ひろし殿。我のデータによれば、この村の周りにはゲーム世界と似た回復キノコと薬草が自生していおります。その採集をお願いしてはいかがでしょうか。丁度お二人も回復系のアイテムが残っておられないようですので」
「おお、なるほど、さすが黒猫さん。ではそう言ってみますね」
「いえ、ひろし殿お待ちください。ひろし殿は正直で素直なお方でございます。ここは我が」
黒猫はそう言うと、再び骸骨の姿に戻って村の長に言った。
「この村に来た理由は他でもない。我が主人の魔道士様はこの近くで採取できるキノコと薬草をご所望だ」
それを聞いた村の長と若い男性たちは驚きながらひれ伏し、黒猫の話を聞いた。
「良いか。とにかく、この周辺で採れるキノコと薬草を集めるのだ。キノコと薬草の代償として、この村を助ける事を誓おう!」
黒猫がそう言うと、若い男たちの後ろから老婆が現れて必死の形相で黒猫に言った。
「こ、これは近くの岩場で採れるベムベムのキノコです。そしてこれは、この乾いた土地に自生する草で傷に効くと言われています……。これは魔道士様に貰ってもらえますでしょうか」
それを聞いたおばあさんはベムベムのキノコから流れてくる匂いに驚いた。
「まぁ! これ回復キノコと同じ匂いだわ。それにその草はだいぶ形は違うけど薬草と同じ匂い! 間違いないわ!」
それを聞いた黒猫はおばあさんに尋ねた。
「洋子殿。我がかつて頂いたドラゴン饅頭を1つ、この者に渡してもよろしいでしょうか」
「もちろんよ! この世界で回復薬が作れるかもしれないのだもの!」
「承知しました。では早速……」
ポワン!
黒猫はドラゴン饅頭を出現させると、老婆に手渡しながら言った。
「この上等な菓子を我が主人がお分けくださった。堪能せよ」
ドラゴン饅頭を受け取った老婆は深々と頭を下げると、逃げるように去っていった。
そしてその夜、テテと母親の体調を気遣ったおばあさんたちは、様子を見るためテテの家で一夜を明かした。
―― 翌朝 ――
黒猫が目を覚ますと、なんと洋子が調合スキルを使って回復薬の調合をしていた。
その様子を見た黒猫は慌てて起き上がり、洋子の元へと行って尋ねた。
「洋子殿、それは回復薬では……」
「ええ、そうよ。調合スキルが使えて良かったわ。朝早くから村の人がベムベムのキノコと薬草をたくさん持ってきてくださったの。うふふ」
「なんと……」
「テテちゃんとお母さんも元気になって、たくさん持ってきてくださってね。これで村の人たちにたくさんの回復薬をお渡しできるわね。うふふ」
「いえ、洋子殿。村の人々は貧しいが故に洋子殿に治療の対価をキノコ支払おうとしているだけでございます。そこに感謝などは無く、むしろ……」
「うふふ。でも、そこにいるテテちゃんを見てみたのかしら?」
「……」
黒猫はテテを見てみると、テテは満面の笑顔でベムベムのキノコをすり潰していた。
その姿を見た黒猫は少し頭を下げておばあさんに言った。
「洋子殿。もしや我は間違っているのでしょうか」
それを聞いたおばあさんは笑顔で答えた。
「いいえ、間違っていないわよ猫ちゃん。あなたは、わたしたちには出来ない大きな視点で世界を見ているわ。これからも、わたしたちを導いてね。うふふ」
「!!」
黒猫はおばあさんの言葉に驚くと、慌てて答えた。
「い、いえ。我が導くなど! 我の主人は洋子殿でございます。我が導くなど……」
「違うのよ猫ちゃん。わたしは猫ちゃんを信用しているっていうだけ。これからも頼むわ。うふふ」
「そ、それならば……。僭越ながら我の知識、洋子殿のために使わせて頂きます」
「うふふ。ありがとう、猫ちゃん」
「は、はい、洋子殿!」
黒猫は深々と頭を下げながら、しみじみと幸せな気分を味わっていた。




