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その頃、大熊笹と茂雄はおじいさんの軽トラで魔王がかつて住んでいた魔王城へと向かっていた。
そして荷台にはアカネと魔王エヴ、そして力自慢の魔族たちが乗っていた。
大熊笹は軽トラを運転しながら助手席に座る茂雄に話しかけた。
「茂雄さん。魔王さんが話していた植物、本物だと良いですね」
「ええ、そうですね。魔王さんの話が本当ならば可能性は……」
「しかし茂雄さん、先程から少し開けた窓から入ってくる空気が……」
「はい、湿っていますね。その証拠に、ガラスの端が……」
茂雄がガラスを指差すと、そこは湿度で少し曇っていた。
その頃荷台では、魔王エヴが軽トラの速さに驚いていた。
「おお、このケイトラという魔道具は素晴らしい! あっという間に魔王領ではないか! それにしても懐かしい……。この湿った土の匂いは、まさに故郷の匂い!」
しかしアカネは少し顔を曇らせながら魔王エヴに言った。
「えぇぇ……。エヴっちの地元って湿った土ばっかりなの?」
「ああ、その通りだ。我が魔王領の土地は天気は良いのだが、ほとんどが湿地なのだ。年中ジメジメしていて心地よいぞ」
「うゎ。年中ジメジメしてるほうが心地いいとか……」
「まぁ、べべの村のように乾燥していても問題ないのだが、ジメジメしているほうが落ち着くのでな。だが、そのジメジメを邪魔する植物があって、ほとほと困っていたのだ」
「え、植物がジメジメを邪魔できるの?」
「うむ。あの植物はどんどん増殖して湿地の水を吸い上げ、ジメジメを減らしてしまうのだ。その上、あの植物は実もつけずに固い種だけを残す役に立たない植物なのだ!」
魔王エヴは少しだけ取り乱したが我に返ってアカネに話を続けた。
「ほら、あの植物だ。あの植物は魔王領がいつも晴れているせいか、一年中固い種を撒き散らし……。おのれ、忌まわしき植物めが! やはり許せぬ!」
しかしアカネは目を丸くして笑顔になって声をあげた。
「やばっ! あれって、お米じゃんか!!」
そして運転席の大熊笹と茂雄も満面の笑顔を浮かべて声をあげた。
「あれは稲穂ですな!!」
「はい! それに右手は麦です!」
なんと魔王城へと続く湿地帯に、金色に実った稲穂が頭を垂れて風になびいていた。
大熊笹は思わずブレーキを踏むと軽トラを停止させてサイドブレーキを引き、稲穂が実る湿地へと走っていった。
そして稲穂の一つを折り取ると、手で籾殻を開いて一粒を取り出してみた。
「おお、中身は金色ですか。少し日本の米より細長いですな」
茂雄も軽トラから降りて麦の生えている所へ行ってみると、茂雄も麦の粒を取り出してみた。
「なるほど、だいぶ黒いですが大麦と似ていますね……」
その様子を見ていた魔王エヴは首を傾げながらアカネに尋ねた。
「アカネ様。大熊笹様と茂雄様はどうしてあの植物を見て嬉しそうにしているのでしょうか」
「そりゃそうだよ! あたしたち、あれを毎日食べてるんだもん」
「なっ!! あの固い種を!?」
「へへへ。もちろん、そのままじゃ食べられないけどね。炊くんだよ」
「タ……、タク!?」
アカネは嬉しそうに荷台から降りると、魔王たちもアカネに続いた。
◆
魔族の力自慢たちは、大熊笹の指示で大量の稲穂を手を握って滑らせながら脱穀し、籾殻を手で擦って玄米にした。
そしてそれを水が入った鍋に入れ、玄米に水を吸わせはじめた。
その様子を不思議そうに見ていた魔王エヴはアカネに尋ねた。
「アカネ様。本当にあの植物の種は食べられるのでしょうか」
「まぁね。ってか、そのアカネ様ってやめてくれない? なんか調子狂うっていうかさ。アカネって呼んでよ」
「いえ、アカネ様は洋子様のご友人ですので……」
「じゃあさ、あたしがエヴっちの友達になったら関係ないでしょ?」
「おお、それは確かに」
「じゃ、今から友達ね!」
すると魔王エヴは嬉しそうに答えた。
「友達になってくれるのかアカネ! 私の生まれた初めての友達だ! 嬉しいぞ!」
「え、まじで!? 今まで友達いなかったの?」
「それはそうさ。私は魔王の子供に生まれたから、周りはみな配下か指南役。仲良くしてくれていた妹のエスプララも私が魔王になってからは距離を置くようになってな……」
「そっか。エヴっち、魔王の家に生まれちゃったから大変だったんだな……。でも今日からあたしが友達だから、よろしくな!」
それを聞いた魔王エヴは小さい頃の事を思い出した。
魔王エヴが小さい頃、父親の先代魔王は魔王軍の将軍ミノタウロスと大笑いしながら肩を組んで冗談を言い合っていたのを思い出した。
そして友達のいない魔王エヴは楽しそうな先代魔王を羨ましく思っていたのだった。
すると魔王エヴは思わず口を開いてアカネに言った。
「将軍ミノタウロスになってくれるのだな!」
しかしアカネは笑いながら答えた。
「ははは! なんだよピノタオルって! あたし、アカネだよ」
アカネの言葉を聞いた魔王エヴは驚いて我に返ると、慌ててアカネに言った。
「す、すまないアカネ、ちょっと思い出したことがあってな。では、改めて……」
魔王エヴはそう言うと、柔らかな笑顔を見せて右手を出しながらアカネに言った。
「これからもよろしく、私の友達」
魔王エヴが握手を求めると、アカネも嬉しくなって力強く魔王エヴの手を握った。
「あたしこそ、こっちに来て初めての友達だよ! よろしくね!」
こうして魔王エヴとアカネはお友達になったのだった。




