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ガーは半魚人たちのところへ着地すると、懐かしそうに話し始めた。
「いやぁ、何年ぶりでしょうか半魚人さん。しかし、どうしてこんな所に」
すると一番背の高い半魚人が威勢よくガーに答えた。
「おうおう、ガーも久しぶりじゃねぇか! オレたちゃよぉ、魔王さんに仕えてたけど食えなくなっちまっただろ? オレもほら、こんなに息子や娘がいるから仕方なく海に来てな」
「なるほど、海で狩りをしてらしたのですね。では、その方たちは皆さん半魚人さんのお子様で?」
「はっはっは! お子様だなんて上品なもんじゃねぇよ! こいつらは皆オレの息子に娘だ。で、あっちはカミさんな。おい、みんな挨拶しな! ガーはおれの仲間だ!」
それを聞いた半魚人の妻と子どもたちは一斉に頭を下げた。
「はじめまして。妻です」
「こ、こんにちわ」
「はじめまして」
「こんにちは……」
「え、ええと」
半魚人たちが頭を下げると、おじいさんとおばあさん、そして魔族たちも追いついてきた。
それを見た半魚人の父親はガーに尋ねた。
「おいおい、懐かしい顔ぶれだな! それにしても、そのニンゲンたちもガーの仲間なのか?」
「はい。私というよりも、魔王様はこちらの洋子様の眷属になられまして……」
「なっ! 魔王様がニンゲンの眷属に……!? それじゃ、この方は魔王様の主人になるのか!?」
「はい、そうなります」
すると半魚人は突然洋子の前にひれ伏して、大きな声で言った。
「こっ! この度は失礼いたしました! 魔王様を裏切って内緒でここに来た事をお許しください! タダとは言いません! 私の命を引き換えに、どうか! どうか子どもたちはお助けを!!」
突然の半魚人の言葉を聞いた子どもたちは、慌てておばあさんのところへやって来て父親と同じようにひれ伏した。
「お、お父さんを許して」
「ごめんなさい!」
「お父さんを殺さないで……」
するとおばあさんは慌てて半魚人たちに言った。
「待って、大丈夫よ! 誰も殺したりなんかするものですか」
おばあさんはそう言うと、優しく子どもたちの手を取って話を続けた。
「安心して。あなたたちのお父さんは大丈夫よ。魔王さんだって許してくれるわよ。だって魔王さんは、わたしのお友達だもの」
それを聞いた子どもたちは満面の笑顔でおばあさんの顔を見つめた。
◆
その頃、公爵家の領地を抜け出したラゴは伯爵領の森を進んでいた。
すると突然、背後から馬に乗った騎士たちが速度をあげてラゴに追いついてきた。
その気配を察知したラゴは隠し持っていた短刀に手をかけると、小さく呟きながら自分の戦馬を加速させた。
「背後の騎士たちは5人。今は鎧も槍も無い。短刀でどこまで戦えるか……。いや、父上ならばこの状況でも逃げないはず。ならば私も!」
タッ!
ラゴはそう言うと馬の上から空に飛び上がり、美しく回転しながら背後に迫る騎士たちに空中から攻撃を仕掛けた。
その動きを見た騎士の1人は驚きながら声をあげた。
「なっ! 馬から飛んで!?」
するとその瞬間、ラゴの短刀が騎士の肩を切り裂いた。
「ぎゃぁぁ!!!」
騎士は体勢を崩して落馬すると、後続の騎士たちもそれに巻き込まれて混乱した。
ラゴは地面に着地すると素早く飛び出し、小さく呟きながら落馬させた馬を狙った。
「馬よ、すまない!」
ラゴはそう言うと、馬の尻を蹴り上げた。
ヒヒィィィィイイン!!!
すると馬は暴れ出し、周りの馬たちもさらに混乱した。
騎士たちも混乱した馬に振り落とされると、慌てて剣を抜いて体勢を整えた。
そして騎士たちはラゴに迫ると、その1人がラゴに言った。
「その腕前、やはりラゴ様ですね。公爵様から抹殺命令が出されております。ご覚悟を」
「抹殺命令だと!?」
「はい。今あなたは公爵家の反逆者です」
「ふっ。ずいぶんと話が伝わるのが早いな」
「ええ。伝達鳥が夜が明ける前にやってきましたので」
「そうか……。となれば兄上が公爵に進言したのだろうな。兄上は、どこまで誇りを捨てたのだ!」
ラゴはそう言うと、短刀を鋭く突き出して先頭の騎士に飛び込んだ。
「うっ!」
先頭の騎士は、そのあまりの速さに剣を構え直すこともできず、ラゴの短刀は鎧の隙間から騎士の足を切り裂いた。
「うわぁぁ!」
しかしラゴは即座に体勢を整えると、その騎士に言った。
「安心しろ、急所は外した。安静にしておけ!」
そしてラゴはそのまま、すぐ後ろの騎士めがけて突進すると、その騎士は手を震わせながら剣を振り下ろした。
「や、やぁぁ!」
ブン……
しかしラゴはそれを軽々と避けると、一瞬で背後にまわって短刀の柄で騎士の後頭部を叩いた。
ゴッ!
「あっ!」
「心配するな、すぐに目を覚ます」
それを聞いた騎士は白目になりながら倒れた。
ザザッ!
残り3人の騎士を目の前にしたラゴは短刀を握り直して構えた。
しかし3人の騎士は手を震わせて顔を硬直させていた。
それを見たラゴは騎士たちに言った。
「もし逃げるのであれば追わぬ。だが、私と戦うというのなら相手をしよう」
「ひっ!」
「うわぁぁ」
「く、くそ!」
3人の騎士たちは慌てて馬に乗って逃げていった。
「ふぅ……」
ラゴは思わず一息つくと、静かに短刀を仕舞った。
そして、足を斬った騎士に回復薬を渡して回復薬の説明をした。
「これは最近噂の回復薬だ。飲んでも効くが、直接傷口にかければ、すぐに効くという。使ってくれ」
「いいのですか……? あ……、ありがとうございます」
騎士は、回復薬を足の傷口にかけた。
シュゥゥゥウ……
すると、たちまち傷口は塞がり、痛みも無くなった。
その様子を見ていたラゴは騎士に事情を聞いた。
「私を狙ったのは兄上からの命令だからか?」
しかし騎士は目を逸らさずに答えた。
「いえ、公爵様の命令です」
「兄上は関わっていないのか?」
「恐らくは。もしライズ様のお考えであれば、伝達鳥の文書に公爵様とライズ様の連名で届くと思われます」
「ということは、兄上の署名は無かったのだな?」
「はい」
「そうか」
ラゴはそう言うと、少しだけ笑顔をこぼした。




