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ラゴは追い詰められると、満面の笑顔で嘘をついた。
「わ、わたしは商人のラゴ。あ、いえ、しかし、いつも英雄ライズ様の息子の騎士と間違われまして毎回長い時間調べられるのです。ですから、ええと……」
ラゴがそう言うと、通行証を確認していた者は少し気の毒そうにラゴに言った。
「あぁ~、そうでしたか。それにしても、ははは! あのラゴ様と同じ名前とは、ご苦労お察し致します。ささ、どうぞ。お通りください」
「は、はい、ありがとうございます」
ラゴは密かに胸を撫で下ろすと、戦馬を走らせて伯爵領へと入っていった。
しかし、その後ろを少し離れながら関所の騎士たちが追いかけていった。
―― べべの村 ――
その頃、おじいさんたちの家では哲夫が商人たちから集めた情報を共有していた。
「ええと、まずこの国の詳細な地理がわかりましたのでご説明しますね」
すると哲夫はアイテム欄から大きな地図を取り出して広げて説明した。
◆地図の画像◆
https://img1.mitemin.net/6h/ru/f4p6m8sb1j6klvbvjs027u31143g_wz8_j4_ph_1bdw.jpg.580.jpg
「ここは逆三角形のような形の大陸だそうで、上半分ほどがガンデロ帝国、下半分はリムリテイル王国です。そして大陸の大きさは東西馬車で4日ほどだそうです」
それを聞いたアカネは驚いたように哲夫に言った。
「へぇぇ、なんだか凄く小さくない? それに、ここには2つの国しかないんだね」
「どうやら大陸大戦という大きな戦いで小さな国々が併合されて大きく2つの国になったそうです。ちなみに魔王さんの国もあったのですが……」
すると魔王が咳払いをして自ら説明した。
「我が魔王領はリムリテイル王国の東の果て、この少し突き出した半島にあったのだ。だが、もう放棄した」
魔王の言葉に驚いたアカネは思わず声をあげた。
「まじで!? だって自分の領地だったんじゃないの?」
「まぁな。だが今はこの村が一番快適で楽しい!」
魔王エヴはポーズを決めながら自信満々に答えると、アカネは拍子抜けしながら答えた。
「あ、そ、そうなんだ。それなら良いんだけど。ははは」
アカネが苦笑いをしながらそう言うと、哲夫はリムリテイル王国を指さして説明を続けた。
「さらに、このリムリテイル王国は権力によって横に3つに分かれています。上は王族の力が強い場所、真ん中は貴族連合。そして下がヤクウィー辺境伯の領地です」
それを聞いたアカネは再び驚きながら哲夫に尋ねた。
「え? あの辺境伯さん、けっこう広い領地をもってるんだね」
「ええ。しかしこの辺りは作物の育たない痩せた土地が多いので王国のお荷物なのかもしれませんね」
「そっか。あたしもこの村じゃパサパサの野菜とサッパリ味すぎる果物ばっかりだしね。でも、その上のほうの土地って食べ物が育つんでしょ?」
「そうですね。王族の力が強い土地が一番肥沃で、貴族連合の土地も作物の収穫高が大きいようです」
「へぇぇ。じゃあ貴族連合の中でも、やっぱり上の方は権力の強い人たちが支配してるとか?」
「ええ、その通りです。土地の一番上あたりは地位の高い公爵と侯爵、その下の土地を伯爵、そして辺境伯の領地に接する辺りを地位が低めの子爵、男爵が治めています」
「ししゃく? だんしゃく? ……それって権力ってこと?」
「まぁそうですね。ちなみに辺境伯は伯爵の上あたりのはずなので地位は高いはずです」
「そうなんだ、けっこう凄いんだな辺境伯って」
すると哲夫は少し胸を張ってみんなに話し始めた。
「さて本題ですが、今回私たちがこの世界にやって来たのは他でもありません。ひろしさん、洋子さんたちの目的を達成することです。それはガンデロ帝国の金属兵を破壊することと理解しました」
するとそこに居た全員は哲夫の真剣な声色に姿勢を正した。
哲夫は地図を持ち上げて辺境伯領を指差すと、今後の計画を発表した。
「その第1段階として、辺境伯と協力して商会を作って商売を取り仕切り、辺境伯に恩を売りつつ辺境伯の兵力と影響力を増大させます」
そして哲夫は辺境伯と領地を接する貴族連合の貴族領を指さしながら説明を続けた。
「そして隣接するデウ子爵、マツリ子爵、コラナッカ男爵、メロナッカ男爵を寝返らせて味方に付け、貴族連合の力を削ぎながら王族とも交渉をすつもりです」
哲夫の壮大な作戦に、皆は息を呑んだ。
―― 翌日 ――
ガーゴイルを中心に羽を持つ魔族の者たちと、おじいさんとおばあさんを乗せた飛竜は、辺境伯の領地の南の外れにある海岸にやってきていた。
おばあさんは笑顔で飛竜から降りると、嬉しそうにおじいさんに言った。
「ドラちゃんの背中よりスリルがあって楽しかったわね!」
しかし、おじいさんは少し苦笑いをしながら答えた。
「あ、ああ……。そ、そうだね。ははは」
おばあさんは少し走り出して周りを見渡すと、遠くに煙があがっているのを見つけた。
「あれだわ! 空から見えたのはあそこね」
おばあさんはそう言うと、煙があがっている方へと走り出した。
「やっぱり、海があるのなら誰か居るはずだと思ったのよね」
おばあさんはそう言って煙のほうへ近づいていくと、なんと魔族の半魚人が焚き火で魚を焼いていた。
「ええと……、あれは魔族さんかしら」
おばあさんはそう呟いて足を止めると、なんとガーゴイルのガーが物凄い勢いで半魚人の元へと飛んでいった。
「み、みなさん! お久しぶりです! ガーです!」
するとガーに気づいた半魚人たちは嬉しそうに手を振った。




