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べべの村の人々は朝の体操を終えると、薬草やキノコを取りに行く準備を始めた。
そして、体格の良い若者たちは大熊笹の朝稽古に参加し、算術が得意な者たちは哲夫の授業を受けていた。
その様子を見ていたゴゴは感心しながら魔王エヴに言った。
「おでが、しばらく村にいない間に、なんだか楽しそうになったんだな。な」
「うむ。この村の人々はどんどんと色々なことを身につけている。特に哲夫様の算術教室はためになるのだ」
するとその時、近くで話を聞いていた魔馬は、ふと視界に入った馬たちが気になって近づいていった。
魔馬は馬たちの近くにやって来ると、その異常なまでの威圧感に馬たちは一斉に頭をうなだれて目を逸らした。
その様子を見た魔馬は静かに、そして柔和に馬たちに話しかけた。
「わしはこの村の新入り。よろしく頼む」
すると一頭の馬が魔馬に答えた。
「あ、あの……。あなたがとんでもない方だとは分かります。どのようなご経歴の方でしょうか」
すると魔馬は厳かに答えた。
「わしは、いくつもの戦場を駆け回った戦馬だった。そして魔王によって魔馬となった者だ」
それを聞いた馬は嬉しそうに聞き返した。
「戦馬様でありましたか! 我々は普段馬車を引きますが、戦いとなれば戦場に赴きます。もしよろしければ戦場のお話を聞かせて頂けませんか!?」
魔馬はその言葉に姿勢を正すと、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「そうだな。一番の大戦は攻め込んできたガンデロ帝国を蹴散らしたガララ川の戦いだな」
「ま、まさか、あの伝説の戦いに!? あの戦い、私の父も補給隊として荷馬車を引いておりました!」
「そうであったか。あの戦いは補給隊の力添えが大きかった。今更ながらであるが、お主の父に礼を言わせてくれ。本当に感謝していると」
それを聞いた馬は少し嬉しそうに答えた。
「あ、い、いえ! 辺境伯邸に戻ることがあれば父に伝えます! ……しかし、あの戦いを生き延びた戦馬様は余程の方ですね。どちらの騎士様を乗せていらしたのですか?」
「わしは騎士団長、重装無双の二つ名を持つライズ様を乗せていた」
「ええっ!? あの重装無双のライズ様を!? お噂ではライズ様は兵士2人を軽々と抱えあげる巨漢、そしてその装備も地面に置けば土が沈むというほどの重さ……」
「そのとおり。だがライズ様は一点突破の急先鋒。わしは誰よりも先に敵兵どもへ切り込み、敵の戦馬を蹴散らしなが本陣まで走り抜けた」
「おおお! あの巨漢のライズ様を乗せて一番乗りで敵兵に切り込むとは!」
魔馬の言葉にそこにいた馬たちは一斉に興奮した。
「わしは一気に敵本陣まで駆け抜けたが、そこで一斉に火矢を放たれてな。わしとライズ様にも命中したが、我らはそのまま本陣でひと暴れしたのだ」
「「おおおお!」」
「そこで敵兵どもを蹴散らしてると敵の騎士団長がやって来てな。そこで一騎打ちとなったのだ。しかしヤツの戦馬もなかなかだったぞ。わしと頭を突き合わせて一歩も引かなかった」
「そ、それで勝負は!?」
「ライズ様と敵の騎士団長は馬上で派手にやり合った。その下では、わしもヤツの戦馬と力比べだ。押し負ければ主人を落馬させかねぬからな」
「「おおおお!!」」
「だが最後は敵の戦馬が根負けして足を滑らせ、敵の騎士団長は体勢を崩した。ライズ様はそこを逃さず一撃を食らわせ、敵の騎士団長を撃破したのだ」
「「「おおおおお!!!」」」
馬たちは一斉に歓喜すると、ずっと話を聞いていた馬は嬉しそうに魔馬に言った。
「す、素晴らしいご活躍です! あなたは本物の英雄です!!」
しかし魔馬はスッと首を伸ばすと、その馬の目を見つめながら答えた。
「いや、それは違う。戦いの後半、補給隊の馬たちは追手を振り払いながら大勢の怪我人を戦場から運び出したのだ。命がけで大勢の命を救ったお主の父は、わしなどが及ばないほどの英雄だ」
魔馬がそう言うと、話を聞いていた馬は感動のあまり言葉を失った。
そしてなぜか、馬たちの会話が耳に入っていたインメリアも号泣していた。
―― 昼 ――
村では回復薬の販売が始まり、ゴゴとメメは村から少し離れた岩場の谷にある魔族たちの集落へやってきた。
ゴゴはガーゴイルのガーを見つけると、嬉しそうに声をかけた。
「ガー! おで、かえってきたんだな! な!」
ガーはその声に振り返ると、エルフの娘を連れたゴゴに驚きながらも嬉しそうに答えた。
「ゴゴ! 帰ってきて良かったです! 心配していましたよ。……しかし、ええと、そちらのエルフの方は……」
「うん。メメなんだな。すごく、いいエルフなんだな。だから、あの、なかまに、してほしいんだな……」
するとメメは前に出てガーに会釈をしながら挨拶をした。
「私はエルフのメメ。ゴゴ様に良くしていただいております。ですが私は片耳の無い掟破りのエルフ。もし皆様が不浄と思われるのでしたら、すぐに立ち去ります」
メメの挨拶を聞いたゴゴは慌ててガーに言った。
「メ、メメは、とってもいいエルフなんだな。だから、ガーも、わかってほしいんだな。な」
しかしガーは首をかしげながらゴゴに答えた。
「ゴゴ、何を心配しているのですか? ゴゴが連れてきた客人を疑う仲間など、ここには居ないですよ。もちろん、メメさんは大歓迎です!」
それを聞いたゴゴは目をキラキラさせながらガーに言った。
「ガー! おでは、ガーがだいすきなんだな! な!」
ゴゴは嬉しそうにガーに抱きついた。




