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謁見の間にやってきたマテリオーロは、ゴゴの姿を見ると少し怖がるような仕草を見せた。
しかしゴゴはそれを見ると、満面の笑顔で答えた。
するとマテリオーロも少し表情を崩した。
その様子を見ていた公爵は厳かにゴゴに話し始めた。
「マテリオーロは10歳になり次期公爵として王国貴族の元へ挨拶回りをしていたのだ。しかし、辺境伯の土地で休憩中に誤って川に流さたのだ」
「そうだったんだな。な」
「だが、泳ぎが得意なマテリオーロは下流に泳ぎ着き、火の魔石で焚き火をして助けを待っていたのだ。我ながら素晴らしい息子よ」
「およげるなんて、すごいんだな! でも、あのおっきな鳥にたべられなくて、よかったんだな。な」
「おお、そうであった。ゴゴよ、お主の働きなくてはマテリオーロの命はなかったであろう。褒美は何が良いか」
それを聞いたゴゴは、魔族の領地から空腹のままべべの村にやってきた時に、果物をくれたテテの事を思い出した。
「お、おお、おでは、テテに食べ物をあげたいんだな。な」
それを聞いた公爵は首を傾げながら尋ねた。
「テテ……。それは誰かの名前か?」
「ああ、そうだ。ええと、おでが、そこのマテリ……、ええと、その男の子と会った、あの近くの村にいるんだな。テテは、おでに、くだものくれたんだな。な」
すると公爵の側近が歩み寄り、何枚かの地図を見せた。
そして公爵は地図を見て理解すると、ゴゴに尋ねた。
「その村は……、べべの村であろうか」
「あ、それだ。みんな、そういってたんだな。な」
それを聞いた公爵は側近に何か耳打ちすると、中年のメイドが入れ替わるように公爵に耳打ちした。
そして公爵は何度が頷くと、足を組み替えてゴゴに言った。
「ゴゴよ。その村にはたくさんの食料を送ろう。だが食料と荷馬車を集めるのに少々日がかかる。少し遅れて運ぶがそれで良いな」
「ほ! ほんとか!? それならテテもうれしいんだな! な!」
「わが公爵家は貴族連合の代表であり、べべの村の回復薬には大変助けられている。だが、お主はタイミングの良いことに我が公爵家が先んじて村に恩を……、おっと……、支援をする理由を作ってくれた。誠に感謝するぞ」
「え、ええと……。ごめんなんだな。おでは、かしこいゴブリンなんだけど、ちょっと、わからないんだな。な」
すると公爵は大きく笑ってゴゴに言った。
「はっはっは! 分からずとも良い。お主は素晴らしい事をしたのだ! 今日は上等な食事を用意している。心ゆくまで食べてゆくが良い!」
◆
こうして公爵家に饗されたゴゴだったが、夜になると要らぬ者を追い返すように公爵家から追い出された。
そして、やせ細った馬を一頭渡され、従者としてメメが村まで付いてゆくように申し付けられていた。
ゴゴはやせ細った馬を見ると、メメに言った。
「お、おでは、この馬さんには、のれないんだな。この馬は、とっても、おじいちゃんなんだな。な」
それを聞いたメメは笑顔で答えた。
「はい。しかし、こちらの馬は歳をとってはいますが、かつては戦場を駆け回り数多の武功をあげてきた戦馬です。今も背に乗れと息巻いております」
ゴゴはメメの言葉を聞いて馬の目を見ると、少しも目を逸らさずにゴゴを見つめていた。
するとゴゴは静かに頷くと、一度頭を下げて馬の背によじ登った。
そして、手を伸ばしてメメを馬の背に引き上げると、馬は姿勢を正して首を美しく伸ばした。
すると静かに息を吐いてゴゴの頭の中に話しかけてきた。
「お主が新しい主人か」
そしてその言葉は後ろにいるエルフのメメにも聞き取れた。
ゴゴは馬の言葉に驚いていると、馬はゴゴたちに話を続けた。
「わしは老いぼれた戦馬だ。……しかし、お主らが人間ではなくて良かった。こうして話すことができる」
するとそれを聞いたメメが馬の言葉に答えた。
「あなたは数多の戦いを勝ち抜いた素晴らしい戦馬だと聞いております。こうして背に乗る事をお許しくださりまして、感謝したします」
「いや。わしは若い馬たちに負け、戦場から身を引いた。今では長い旅路をに出され、帰らずに野垂れ死ぬ事を期待される、ただの老馬だ。気など使わずとも良い」
「そんな……」
「我ら戦馬は力が無くなれば、ただの穀潰し。わしの仲間たちも最後は長い旅路に出されて帰って来なかった」
「……」
メメはその言葉に黙ってしまうと、馬はメメに優しく言った。
「だが、お主。お主も……」
しかしメメは笑顔で答えた。
「はい、知っております。ゴゴ様を送り届けたあと、馬さまは力尽き、食料を持たない私も荒野の辺境伯様の土地で力尽きます。不浄な私を消したいのでしょう」
「お主……」
「私はエルフの里を追われ奴隷として公爵家に買われた身。ですが公爵家に仕えている間に何かご迷惑をかければ我がエルフの里が危なく、長く辛い日々を過ごしておりました」
メメはそう言うと優しい眼差しでゴゴを見つめながら話を続けた。
「ですが今日、私は死と引き換えに解放されました。そして、私に優しくしてくださったゴゴ様と最後の旅路に出られます。神は最後に私に幸せをくださいました」
「……」
戦馬は言葉を失うと、突然ゴゴが声をあげた。
「お、おで、よくわからないけど、みんな、テテといっしょなら、だいじょうぶ! テテはやさしい、だから、みんな、だいじょうぶ!」
それを聞いた戦馬は少し首を下げるとゴゴに言った。
「テテとは、よほどお主が信頼している者なのだな」
「う、うん。テテは死にそうだったおでを、たすけてくれた! だから、きっとみんなも、助けてくれるんだな! な!」
戦馬はゴゴの話を聞くと、ゴゴの目を真っ直ぐに見つめながらゴゴに言った。
「まずは、わしの誇りをかけてお主をべべの村へ送り届けねばならぬ。その先の事は考えぬとしよう」
「だいじょうぶだ! 村のひとたちは、みんなやさしいんだな。な!」
ゴゴがそう言うと、戦馬の目には少しづつ輝きが戻り始めた。




