18
大きな怪鳥はマテリオーロを狙って急降下すると、それに気づいたマテリオーロは驚いて走り出した。
「う、うわぁぁ!」
しかし空から狙っている怪鳥は逃げるマテリオーロを捉え、どんどんと迫っていった。
それを見ていたゴゴは思わず岩の陰から飛び出して走り出した。
「だめだ! この、にんげんは、たべさせないんだ! な!」
ゴゴは渾身の力で走って怪鳥に迫ると、そのゴゴの姿を見たマテリオーロは間違いなく恐ろしいものを見るかのような目でゴゴを見た。
しかしゴゴはさらに加速して怪鳥に迫った。
「わかってるんだな! おで見たら、にんげん怖がるんだな! でも、おでは!」
ゴゴは棍棒を思い切り振りかぶると、マテリオーロに迫る怪鳥に飛び込んだ。
「やああああ!!」
そして力の限り棍棒を振り下ろし、怪鳥の頭に命中させた。
ドガン!!
怪鳥はゴゴの棍棒に驚いて一度空へと逃げたが、今度はゴゴに向かって急降下してきた。
ピャァァアアアア!!
「あっ!」
ゴゴは慌てて岩の陰に逃げようとしたが、速さに勝る怪鳥に追いつかれてしまった。そして、
ピャァァアアアア!!
ズバッ!!
「うわぁ!」
怪鳥はその鋭い爪がゴゴの背中を切り裂いて弾き飛ばした。
ゴゴは勢いよく河原に叩きつけられると、何度も転がって仰向けに倒れた。
「ううっ……」
ゴゴはその衝撃で体を動かせなくなってしまったが、その視界には川沿いに逃げてゆく男の子と、その先に重装備の兵士たちが見えた。
その姿を見たゴゴは少し笑いながら声を漏らした。
「あそこまで……、にげれば、だいじょうぶだな、な」
ゴゴは意識が遠くなっていった。
◆
ゴゴは目を覚ました。
「あで?」
ゴゴは目を覚ますと、上等なベッドに横たわっていた。
「あで!?」
ゴゴは体を起こすと、豪華絢爛に装飾された大きな部屋に居ることに気づいた。
「あでぇええ!?」
そして怪鳥に襲われた傷も治癒されていて上等な布で作られたローブを着ていた。
「お、おでは??」
するとゴゴは部屋の角に暗い表情で立っているメイドに気がついた。
メイドは少し声を震わせながらゴゴに言った。
「お、おかげんは、いかがでしょう……」
ゴゴはその様子を見ると申し訳無さそうに答えた。
「ごめんなんだな。な。おでは、にんげんが、こわいって、しってる。でも、からだは、げんきなんだな。な」
申し訳無さそうに答えるゴゴを見たメイドは驚くと、少しだけ表情を明るくしてゴゴに尋ねた。
「あの……、あなた様のお名前は……」
「お、おではゴゴ。このとおり、ゴブリンなんだな。な。でも、こわがらないで、なんだな。な」
するとメイドはゴゴの優しい気遣いに笑顔になると、優しくゴゴに言った。
「わ、わたしはメメ。あなたのお世話をするように言われました」
「お、おでの?」
「はい。でも、私は卑しい身分なので、触らないようにお願いいたします」
メメはそう言うと少し悲しそうに目を伏せた。
それを見たゴゴはメメに言った。
「メメはかなしい? それは耳が、かたほう、ないからかな。な」
ゴゴはメメの片方の耳が無いことに気づいて思わず言ってしまったが、メメはその言葉を聞くと涙を流し始めた。
その様子を見たゴゴは慌ててベッドから飛び出ると、メメの前に行ってひれ伏した。
「メメ、ごめんなんだな。な。おでは……。ええと……。おでは、ごめんなんだな。な」
メメはゴゴが必死に謝る姿を見ると、メメは慌ててしゃがみ込んでゴゴに言った。
「い、いえ。ごめんなさい。あなたは知らなかったのですね」
するとメメは覚悟を決めたようにゴゴに話し始めた。
「私の片耳が無いのはエルフの掟を破ったからなのです」
それを聞いたゴゴは驚いてひっくり返りながらメメに言った。
「え、メメは本物のエルフなのか!? す、すごいんだな。な。エルフは、せいれいの、まほう、つかえるってきいたんだな。な」
しかしメメは下を向いて答えた。
「いえ。私は、魔法も弓も封じられ、何もできません……」
「そうか。でも、おでは、ゴブリンだから、さいしょから何もできないんだな。おでは、あぶなくなったら木の棒を振りまわすだけ。ははは。でも、しょうがないんだな。な」
それを聞いたメメは笑顔でゴゴに言った。
「ゴゴさん、ありがとうございます。こんな私に……」
ゴゴはメメがお礼をしている意味が良く分からなかったが、笑顔になったメメに安心した。
―― 1時間後 ――
なんとゴゴはリムリテイル王国の公爵、ラド公爵の邸宅の謁見の間にいた。
ゴゴは上等な服を着せられ、メメに言われた通りに片膝をついて公爵の前で頭を下げていた。
「お、おでは……、なにをしているんだな。な?」
すると公爵はゴゴに声をかけた。
「お主、名は?」
ゴゴは慌てて答えた。
「お、おでは、ゴゴ」
「ほう。ではゴゴ。此度の活躍、尋常ではなかったぞ。人間ではないお主にも褒美をやらなくてはならぬ」
「ほ、ほうび?」
「うむ。我が嫡男にして次期公爵のマテリオーロを救ったのだからな」
するとゴゴはマテリオーロの事を思い出して思わず大きな声をあげた。
「あ、あの子は!? たすかったのか!?」
するとその時、静かに謁見の間の扉が開き、マテリオーロが入ってきた。




