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その頃、リッチの重力魔法で爆縮させられ、一瞬で手下の魔物たちを失ったベヒーモスは鼻息を荒くしながらミノタウロスに言った。
「ミノタウロス!! ようやく決着をつける時が来たようだな!!」
それを聞いたミノタウロスは斧を担いでゆっくりと答えた。
「なにを息巻いている。こちらは元よりそのつもりだ」
ミノタウロスはそう言うと後ろにいたリッチに戦闘態勢を整えながら言った。
「リッチ殿、どうか子供たちのもとへ。ベヒーモスとは深い因縁がある。ここで決着をつける」
それを聞いたリッチは小さく頷いて答えた。
「はい。ミノタウロスさん、どうかご武運を」
◆
リッチが大扉から戻ると、なんとエディリラが1人で立っていて、その奥に壁のような青白い炎の壁があった。
その青白い炎の壁を見たリッチは全てを理解して呟いた。
「あの青白い炎は炎の最高魔法でも到達できない超高温の壁……。イフリートさん……、まさか、あの炎の壁で子供たちを守る壁を……」
するとエディリラはリッチに気づいて振り返り、失笑しながらリッチに言った。
「アンデッドの魔導師……。まさか、その下劣な身分でこの私を倒しに来たのではないでしょうね」
それを聞いたリッチは冷静に、しかし、ふつふつと闘志を燃やしながら答えた。
「下劣で申し訳ございません。……しかし、あなたは見逃せません」
そしてリッチはそう言うと大きな魔法の杖を出現させてエディリラへ向けた。
するとそれを見たエディリラは笑みを浮かべながらリッチに言った。
「今ね、イフリートは私に命がけの魔法を放って失敗したの。それで、子供たちを捕まえようとしたら自分の体に火を放って炎の壁を作ったわ。あなたも子供を守りに来たのかしら?」
「……。お察しの通り」
「そう。でも、人間の子供は若さを保つのに必要なの。1人残らず殺して私の一部になってもらうわ。残念だったわね」
その言葉を聞いたリッチは穴が空いた骸骨の目に炎を宿しながら答えた。
「ならば……、あなたには消えていただかなければなりませんね」
リッチの言葉にエディリラが顔をしかめた瞬間、リッチは炎、風、雷、水の四属性の高等魔法を同時に生み出した。
そして炎の魔法に風の魔法をぶつけて火力を増し、その火力で大量の水を一瞬で揮発させて霧を作り出すと、雷魔法の放電力を水蒸気で増幅してエディリラへと放った。
パァァァアアン!!!
「ぎゃぁぁあああ!!!」
エディリラは予想もしていなかった魔法の攻撃に吹き飛ぶと、雷撃でボロボロになった服を引きちぎって投げ飛ばしながらリッチに言った。
「あら……。なんとも奇天烈な複合魔法を使うのね。これだけのダメージを貰ったのは初めてだわ」
しかしリッチは次の魔法を準備しながら言った。
「この魔法はメチャツさんのお知恵です。しかし、これだけではありません」
それを聞いたエディリラは即座に反撃の態勢を整え、イフリートにも使った古代魔法を展開してリッチを異次元に放り込もうとした。
「ならば、この魔法はどう!? アンデッドこときが知る由もない古代魔法!! 古代魔法には古代魔法でしか対抗できないわ!! 残念ね!!」
それを聞いたリッチは首から下げていた魔力が蓄えられた首飾りを握りしめると祈るように声をあげた。
「ダリンダさん! 私があなたにお会いしたのは、このためだったのかもしれません。ダリンダさん、どうか! どうか、子供たちの未来をお守りください!!」
リッチはそう言うと、魔力が蓄えられた首飾りを握りしめながら素早く詠唱を始めて古代魔法のヘルファイア・アンド・ブリムストーンを繰り出した。
「Dahya Noryu Heiya Bagladhi Khira Dagji Ban!!」
バッ!
ブォォォァァアアアアアアア!!!!!
するとリッチの両手から竜巻のような豪火が巻きおこり、さらにイフリートの加護を得たリッチの魔法は業火の火柱をあげながら走り出した。
それを見たエディリラは驚きを隠せずに声をあげた。
「なっ! アンデッドごときが古代魔法を!? ……ならば見せてあげましょう……、北方の魔女と恐れられた、この私の力を!!」
エディリラはそう叫んで空間をさらに捻じ曲げてヘルファイア・アンド・ブリムストーンを異次元へ送り込もうとすると、突然ヘルファイア・アンド・ブリムストーンは青白く輝き始めた。
その様子を見たエディリラは目を見開きながら呟いた。
「……そ、そんな馬鹿な。 あんな超高温のヘルファイア・アンド・ブリムストーンなど見たことがない……」
するとその時、背後からイフリートの声がした。
「北方の魔女さんよぉ、おれが炎の大精霊だって事を忘れたかぁ!? おれの命を燃やして、お前の魔法じゃ勝てねぇほどヘルファイア・アンド・ブリムストーンを高温にしてやったんだよ。はっはー!!」
イフリートは笑いながらさらに炎の壁の青白い炎をヘルファイア・アンド・ブリムストーンへ波のように投げ込み続けると、それを見たエディリラは恐怖の表情を浮かべて叫んだ。
「や、やめろ!! お前は何を言っている!? 命を燃やすなど……! そ、それで良いのか!? せっかく生き返ったのだぞ!? 死ぬ気か!?」
しかしイフリートは笑って答えた。
「はぁ? なに言ってんだ。おれらは一度死んでんだぞ? もう1回死ねるなら、今度は誰かの役に立って気持ちよく死にてぇじゃねぇかよ。違うか?」
その言葉を聞いたエディリラは眉間にシワを寄せると、最終手段に打って出た。
「調子に乗るな、イフリート!! おまえに最強の古代魔法をみせてやろう!! でやぁぁあああああ!!!」
エディリラはそう叫びながら自分の爪で左腕を切断して空に放り投げると、なんと一瞬にして全ての魔法がその場からかき消された。
パァァァアアン!
その瞬間、イフリートの魔法はおろか、リッチの魔法も消滅した。
その様子を目の当たりにしたイフリートは全身の魔力と気力を使い切り、絶望の表情を浮かべながら頭から崩れるように地面に伏せた。
それを見たエディリラは満足そうに地面に伏せたイフリートに言った。
「イフリート。この場所は、左腕を生贄にして発動した古代魔法によって攻撃魔法は使えなくなったわ。しかし、私は生命に関する魔法……、すなわち回復に関する魔法も使える……」
エディリラはそういうと、なんと自分に再生の魔法をかけ、左腕を再生した。
それを見たイフリートは失笑しながらエディリラに言った。
「おいおい……、お前、回復魔法も使えるなんて……。なんでもありかよ……」
するとエディリラは不敵に笑いながら答えた。
「あら。こう見えてわたし、人間だった時は聖女だったのよ。でも、その聖女様はお人好しが過ぎて人に騙され、火あぶりになったけどね。さぁ、おしゃべりはここまでよ。……死になさい」
エディリラは笑みを浮かべながら長く鋭い爪を見せると、イフリートは力尽きた体を無理やり起こしながら答えた。
「ふっ……。魔法を使うあんたが物理攻撃か。落ちぶれたもんだなぁ? やってみろよ!」
その言葉を聞いたエディリラは容赦なくイフリートの腹を爪で貫いた。
ズドッ!!
「ぐあっ!!」
イフリートはエディリラの顔を見ると、エディリラの腕を両手で掴んで笑いながら言った。
「はっ……。最後に……、罠に……、かかりやがった……、な……」
パンッ!!!
なんとその瞬間、エディリラの首は切断され、エディリラの首は宙を舞いながら叫んだ。
「ぐあっ!! アンデッドの魔導師……、まさか剣を……!」
エディリラの頭は乱暴に床に落ちると、それを見たリッチは静かに答えた。
「私はブラックな国で働いてきた社畜魔導師です。全属性の魔法に剣術や武術の修練など普通の事です。残念ながら、あなたの負けです」
エディリラはリッチの言葉に苛立つと、慌てて自分の頭を拾い上げ、素早く再生魔法で首を繋いだ。
しかしその瞬間、
スパン!!
リッチは再びエディリラの首を刎ね、吹き飛んだ頭に静かに言った。
「何度その首を繋いでも切り落とします。あなたの魔力が尽きるまで」
それを聞いたエディリラの頭は目に光を失いながら言った。
「こっ……。この私が……、ま……、負ける……、?」
エディリラはそう言いながら目から光を失った。




