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その頃、リッチたちは順調にダンジョンの奥へと進んでいたが、子どもたちは疲弊してしまい、ホームシックになる子どもたちが出始めていた。
「う、うえぇぇん。お家にかえりたいよぉ」
「ひっく……。ぼ、ぼくだって帰りたいよ」
「ま、まだ、帰れないの? 怖いよぉ……」
リーダー的存在の少年はそんな子どもたちを優しく労ったが、子どもたちの心配は募るばかりだった。
その様子を見たミノタウロスは思い出したように子供たちに言った。
「そうだそうだ! では、皆で面白い遊びをしようではないか!」
ミノタウロスはそう言うと、斧の柄で地面に無数のマルを描き始めた。
そして、100メートルほどマルを描き終えると嬉しそうに戻ってきて子供たちに言った。
「さぁ、できたぞ!! ケンケンパだ!! マルが1つの所は片足ケンケンで通り、マルが2つの所は両足で進むのだ!!」
しかし、それを聞いた子供たちは少しだけガッカリした表情をして口々に言った。
「ケンケンパだって……」
「うん。もう古いよねぇ」
「つまんない遊びだよね」
それを聞いたリーダー的存在の少年は笑顔で子供たちの前に出て言った。
「みんな! ミノおじさんがお楽しみを用意してくれたぞ! みんなで楽しもうじゃないか!」
しかし子供たちは正直な反応を見せた。
「だってさ……」
「うん、だって」
「つまんないよ」
「帰りたいよぉ」
子供たちがションボリしてリーダー的存在の少年が慌てると、ミノタウロスは大笑いして子供たちに言った。
「はっはっは! ミノおじさんは知っているぞ! この遊びが面白くないと言うことを。しかし!! このケンケンパを良く見るのだ!!」
ミノタウロスがそう言うと、子供たちはミノタウロスが描いたケンケンパのマルを見て驚いた。
その表情を見たミノタウロスは満足そうに頷くと満面の笑みを浮かべて子供たちに説明した。
「最初のゾーンは、なんと『パ』しかない! しかも20回だ! さらに後半は左右に幅広く跳ぶぞ!! ここは名付けて地獄の反復横跳びゾーンだ!!」
それを聞いた子供たちは予想もしなかったケンケンパに目を輝かせた。
その様子を見たミノタウロスは嬉しそうに話を続けた。
「そしてそれを越えると、なんと今度は『ケン』で20回!! これも途中でジグザグに跳ぶぞ!! 名付けてヒザ砕きゾーンだ!!」
「「あははははは」」
子供たちはミノタウロスの話を聞くと一斉に笑い出した。
ミノタウロスは気分を良くすると、一気に最後まで説明した。
「最後のゾーンは普通のケンケンパだが、マル以外はリッチ殿が作る火の海だぞぉ! みんな出来るかなぁ?」
「きゃーー」
「あはは!」
「おもしろそう!」
「やりたーい!」
子供たちが喜ぶ様子を見たミノタウロスはリッチのほうへ目線を送ると、リッチは了承してウンウンと頷いた。
こうしてミノタウロスが考えたケンケンパ大会がスタートしたのだった。
◆
その頃、イフリート率いるアーチャーデーモンたちのグループは、子供たちがケンケンパで遊ぶ様子をしばらく上から見ていた。
しかし、その様子を見ていたイフリートは短気が災いしてアーチャーデーモンたちに詰め寄った。
「おい! あいつら遊んでんじゃねぇか! あんなヤツらも倒せなかったのか!? バカか、お前ら!」
それを聞いたアーチャーデーモンたちは何も言い返せずに黙り込んだ。
するとイフリートは子供たちのケンケンパのために種火の小さな火の海を作り出しているリッチを見つけ出して呟いた。
「あいつが炎の魔導師だな? 幼稚な炎のお遊びをしやがって」
ブワッ!!
イフリートはそう言うと、飛び出してリッチの目の前に降り立った。
しかし、リッチはイフリートの強大すぎる邪悪なオーラをすでに感じていたため、冷静に対峙した。
とはいえ、リッチもイフリートほどの者が来るとは想定しておらず、驚きを隠せなかった。
「あなたは大精霊イフリート。なぜこのような所へ?」
驚いた様子のリッチを見たイフリートは満足そうにニヤリと笑うとリッチに高圧的に言った。
「はっはっは! 怖いか!? この炎を司る大精霊が直々に炎を自慢する魔導師を力でねじ伏せてやるわ!!」
しかしリッチは首を傾げてイフリートに言った。
「炎を自慢する魔導師……、ですか? 私が?」
「誤魔化すな! 怯えても、もう遅い! 炎を冒涜した罪、おれの炎で焼き尽くしてくれよう!!」
イフリートがそう言って両手に炎を纏わせながらリッチに襲いかかると、リッチはイフリートの炎が子供たちに及ばないように目の前に氷の壁を展開した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
それを見たイフリートは驚きを隠せず、そして飛び出した勢いも止められず、一直線に氷の壁へと突っ込んでいった。
ゴン!
「ぎゃぁぁあ!」
イフリートは氷の壁に激突すると、ズズズズと地面に落ちてうつ伏せに倒れた。
ミノタウロスはその様子を見て周りを警戒すると、肩車しているアイイがミノタウロスに言った。
「ミノおじちゃん! こっちから矢がくるよ!」
「おうっ!」
ミノタウロスは飛んできた矢を全て斧で叩き落とすと、アイイは後ろを指さしてミノタウロスに言った。
「ミノおじちゃん、今度は後ろ! でも、弓を引く指が怖がってるみたい」
それを聞いたミノタウロスは即座に判断して振り返り、大きな咆哮をした。
「ウオォォォオオオオオオ!!!!」
するとその咆哮に怯えたアーチャーデーモンたちはイフリートがうつ伏せで動かなくなっているのを見て、戦況が不利だと判断し、逃げ出していった。




