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異世界おじいちゃん 〜みんなで異世界転生〜  作者: オイシイオコメ
おまけ編2 リッチ・ザ・ウィザードマスター
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 その頃、ダンジョンの最深部ではネクロマンサーのネイクが手下からの報告を受けて激怒していた。


「なんだと! あのベヒーモスが退いただと! 侵入者はそれほど強いのか!?」


 手下のネクロマンサーは頭を下げながら詳細を説明した。


「はっ! さらに、裏切ったミノタウロスは、アンデッドの魔導師と人間の子供たちを連れて奥へ進んでいるとのこと!!」


「ぐ、ぐぬぅ!! ミノタウロスめ、蘇らせた恩を忘れて調子に乗りおって!!」


 すると突然、気配も感じさせずに、手下のネクロマンサーとネイクの間に1人の魔族が出現してネイクに進言した。


「ネイク様。ここは私が行きましょう」


 その魔族を見たネイクは満足そうな表情を浮かべて答えた。


「おお、アサシンデーモンか! お主は階段を崩落させてから、情報を何度も詳細に伝えてくれていたな。しかし、大丈夫なのか? お主は特定の者を暗殺する事に長けていると聞いているが、敵は強力な魔導師とミノタウロスだぞ」


「はい。もちろん、あの魔導師やミノタウロスと正面から戦えば勝ち目はありません。しかし、敵を制圧する手段は戦闘ばかりではありません」


 アサシンデーモンがそう言ってニヤリと笑うと、ネイクもニヤリと笑い返した。


 ◆


 その頃、リッチたちはダンジョンの最深部へと向かって歩いていた。


 その道中でリッチはダンジョンを見回しながらミノタウロスに言った。


「先週最下層へ安全確認に来た時は、このような道はなかったのですが……。隠し通路だったのでしょうか」


「いや、この道が開通しのは今日の朝だ」


「ええっ!? そうなのですか?」


「うむ。このダンジョンは崖の中にあって我々は崖下にある洞窟で蘇らされたのだが、ネイクが蘇らせた魔族の中に穴を掘ることが得意な者が居てな」


「まさか、その魔族が穴を掘っていった結果、このダンジョンに繋がったと……」


「そうだ。その魔族はモグラーと言ってな、私より大きな身体で、放(ほう)っておけばどんどんとトンネルを掘っていってしまうのだ」


「なるほど……。しかし、そのモグラーさんは今もトンネルを掘っているのでしょうか」


「……うむ。モグラーはネイクが蘇らせて手下に操らせようとしたのだが、一瞬の隙を突いて物凄い勢いで奥へと逃げてしまってな」


「なんと……。それは非常に厄介な迷子さんですね。ははは」


「しかし、諜報活動をしているアサシンデーモンの話では深い地下の方へと潜っていったという事だ。おそらくダンジョンへは顔を出すこともないだろう」


 ミノタウロスがそこまで言うと、突然、後ろに続いていた子供たちのほうからか細い女の子の声が聞こえた。


「リ……っち、たいちょ……ぅ」


 その声にリッチが慌てて振り返ると、なんとアサシンデーモンが小さな女の子の首に鋭い爪を添えていた。


「しまった!」

「お前はアサシンデーモン!」


 リッチとミノタウロスが慌てると、それとは対照的にアサシンデーモンは冷静に言った。


「私の目的はあなたたちの無力化。あなたたちが無力化したと認識すれば、この子は殺しませんし、子供は全員地上へ返しましょう」


 それを聞いたリッチはアサシンデーモンに聞き返した。


「それは私たちが具体的にどうすれば無力化したと受け取って頂けるのでしょうか」


 するとアサシンデーモンは機械のように答えた。


「私はお前たちをずっと見ていた。魔導師、お前は魔法の杖と炎の魔剣、それと投げナイフをこちらへよこせ。ミノタウロス、お前はその斧で自分の両足を切断しろ」


 それを聞いたリッチは瞬時に頭を回し、ミノタウロスに一瞬目を合わせてからアサシンデーモンに答えた。


「あの、ご提案なのですが宜しいでしょうか」


 するとアサシンデーモンは静かに答えた。


「手短に言え」


「はい。おそらくなのですが、ミノタウロスさんの斧ではミノタウロスさんの足を切れないと思うんです」


「なに? どういう事だ」


「いえ、ええと、わたし、元人間の魔導師だから分かるのですが、ミノタウロスさんの斧は人間の魔法が付与してありまして……」


 リッチはそう嘘をつくと、ゆっくりとミノタウロスに近づき、斧に触った。


 するとミノタウロスの斧とリッチの腕は青白く光りだし、それを見たミノタウロスはわざとらしく慌てた素振(そぶ)りを見せて大声をあげた。


「や! やめろ!! バレてしまうではないか!!」


 そして次の瞬間ミノタウロスは両腕をガクンと落とし、斧を落とした。


 その様子を見ていたアサシンデーモンは理解が追いつかず、声を荒げてリッチに言った。


「おい魔導師! 説明しろ!」


 するとリッチはテコの原理と小さな風の魔法を使ってミノタウロスの斧を軽々と持ち上げあたかのように見せながら答えた。


「この通り、この斧は軽いのです」


「何だと!? ではミノタウロスは!?」


「はい。実はミノタウロスは筋力が無くて、人間の魔法で筋力を増強していただけの偽物なのです」


「なにぃ!」


 アサシンデーモンは思わず驚くと、ミノタウロスはわざとらしく怯えたような表情を浮かべて後退りした。


 それを見たアサシンデーモンは不敵な笑みを浮かべてリッチに言った。


「ふははは。おい魔導師、良くやったぞ。しかし、どうやってミノタウロスの魔法を無力化した?」


「あ、簡単です。ミノタウロスさんの魔法は人間の魔法でしたので。これだけ言えばご理解いただけるかと」


「ふっ! ふははは! そうだったか! どうりで魔族同士では気付かない訳だ。人間の魔法が介在していたとは」


「はい。人間の筋力増強古代魔法は魔族のそれとは違い、術式も魔術構造も異なりますので魔族のみなさまには気づかれません。ですが、元人間だった私は気づいてしまったのです」


「おい魔導師。お前は本当によくやった。だが、早くお前の杖と剣、そしてナイフをよこせ。お前も無力化の条件に入っているのを忘れたか」


「あ、すみません。では、この通りに……」


 リッチは魔法の杖と炎の剣、そして投げナイフを取り出すと小さな風の魔法を使ってそれらをアサシンデーモンの前へと運んだ。


 アサシンデーモンはリッチの杖と剣、そしてナイフを手に入れると、爪を添えていた女の子を投げ捨てて嬉しそうにミノタウロスに言った。


「おい、ミノタウロス! 今まで大将気取りで散々偉そうにしていたなぁ。ああ?」


 アサシンデーモンはミノタウロスの元へと歩いていった。

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