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グレーターデーモンは魔法で作り出した無数の氷の刃でリッチを狙いながら、自身の爪でリッチの頭蓋骨を破壊しようと飛び込んできた。
その様子を見たリッチは小さく呟いてから素早く炎の魔法の詠唱を唱えた。
「そうですか。ならば再びあの世へお帰り頂きましょう。enbre mabre ibyok ibre fire mare imi ban!!」
ドンッ!!!!
リッチが詠唱を完成させた瞬間、リッチから爆発するように火柱が無数に飛び出し、グレーターデーモンと無数の氷の刃を一瞬で炎で包みこんだ。
グレーターデーモンは一瞬で全身が激しく燃え、氷の刃は全て炎によって一瞬で消滅した。
グレーターデーモンは、そのあまりの出来事に恐れ慄いて声をあげた。
「なっ!! 何が起きた!!」
グレーターデーモンは羽を大きく羽ばたかせて命からがら炎から逃れると、怒りに任せて再びリッチへ突撃していった。
「この私をこんな目にあわせるとは!! 許さん!! 許さんぞ!! 死を持って償え!!」
グレーターデーモンが両手の爪を鋭く突き出しながら再びリッチの頭蓋骨を狙って飛び込んでくると、リッチは静かに左手の魔法の剣を下段に構えて答えた。
「わたくし、生きながらにしてアンデッドになったリッチですので、本当に死んでしまうのは遠慮させていただきたいです」
リッチはそう言うと、低い姿勢から迫りくるグレーターデーモンに魔法の剣で一閃した。
ブォッ!!
すると剣には燃え盛る炎が纏い、その炎を撒き散らすようにグレーターデーモンに襲いかかった。
ブワァァアアアア!
「ぎゃぁっ!!」
リッチの魔法の剣は凄まじい勢いでグレーターデーモンの両腕を焼き落とし、両腕を失ったグレーターデーモンは、そのまま地面に激突して転がった。
ズザァァアア……
リッチは転がってうつ伏せになったグレーターデーモンのところへとやって来ると、しゃがんで静かにグレーターデーモンに言った。
「あなたが望むなら殺しません。あなたは、その両手で魔法を発動していたようですね。両腕が無いあなたは飛べるだけでゴブリン以下でしょうけれども、それでも生きたいのであれば」
それを聞いたグレーターデーモンは慌てて立ち上がると、ボロボロに焼けた羽を広げてダンジョンの奥へと飛び去りながら叫んだ。
「た、助けてくれ! もう死にたくない!! 殺さないでくれ!!」
リッチはグレーターデーモンが飛び去って行くのを見届けると、リッチは子供たちを守っていた火柱を解除して呟いた。
「やれやれ……。この身になると、グレーターデーモンさんのお気持ちもお察し出来なくもないですが……。ともあれ、あの程度の魔族さんで良かったです……」
リッチは安堵のため息をつくと、炎の壁の隙間から一部始終を見ていた子供たちが嬉しそうにリッチの元へと駆け寄ってきた。
「すっげーー!!」
「リッチ隊長すごいです!」
「さすが隊長だ!!」
そして同じく一部始終を見ていたネクロマンサーの3人は、リッチに逆らったら間違いなくタダではすまないと悟って恐怖した。
◆
その頃、ダンジョンの奥ではベヒーモスとミノタウロスが一進一退の攻防を繰り広げていた。
ガキン!!
ゴッ!!
ミノタウロスはベヒーモスの攻撃を跳ね返すと、ベヒーモスはミノタウロスに精神的な圧力をかけようと言葉を発した。
「こうしている間にも、子供たちはグレーターデーモンの爪で切り刻まれているぞ! 残念だったな!」
しかしミノタウロスは動じずに答えた。
「はっ! グレーターデーモンなど、リッチ殿が居れば問題ない! ベヒーモスよ、お前がこうして言葉で隙を突こうするとは、お前は余裕が無いのだな! はっはっは!!!」
ミノタウロスの言葉が図星だったベヒーモスは、ミノタウロスの言葉を跳ね返すように大技を放とうと全身で雷魔法を呼び起こした。
しかしなんとその時、リッチの元から全力で逃げてきたグレーターデーモンがベヒーモスとミノタウロスが戦っているところへ飛び込んできた。
その様子を見たベヒーモスは両腕がないグレーターデーモンを見て怯み、逆にミノタウロスはリッチが子供たちを守った事を確信して勢いづいた。
ミノタウロスは雄叫びを上げてベヒーモスに叫んだ。
「ウオォォォオオオ!! ベヒーモスよ! お前の目論見は外れたようだな!!」
ミノタウロスが勢いづいた事に慌てたベヒーモスは、なんと呼び起こしていた雷魔法を逃げ帰ってきたグレーターデーモンに向けて全力で放った。
「この役立たずめがぁぁぁああ!!」
ズガガガガガガガン!!
「ぎゃぁぁあ!!!」
ベヒーモスの雷魔法が直撃したグレーターデーモンは一瞬で黒焦げになり、無惨に墜落して火の付いた紙くずのように消滅していった。
そしてベヒーモスはグレーターデーモンには一切視線も向けずにミノタウロスに言った。
「くだらぬ邪魔で興ざめした。今は退いてやる」
ベヒーモスはそう言うと、静かに踵を返し、ゆっくりとダンジョンの奥へと消えていった。
ミノタウロスはベヒーモスが消えるまで堂々とした構えで見ていたが、ベヒーモスの気配が消えた瞬間、なんと崩れるように内股でしゃがみ込み、斧を床に置いて大きく息を吐いた。
「はぁぁぁぁああああ……。いや、さすがに強かったなぁーーー!! 死ぬかと思った……」
ミノタウロスは思わず腹から出てしまった大腸を丁寧に仕舞うと、頭をポリポリと掻きながら大きく深呼吸をした。
「はぁぁぁーー、ふうぅぅぅ。……やはり地上最強の生物と謳われたベヒーモス。あの突撃力と雷魔法の威力は桁外れだ。生前戦った時は魔王様の魔力のご加護があったから無事に倒せたものの、さすがにヤツは強い……」
ミノタウロスがガックリとうなだれると、リッチと子供たちがミノタウロスのところへやってきた。




