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ミノタウロスが奥へ進んでゆくと、悠然と道を塞ぐベヒーモスが待っていた。
ベヒーモスはミノタウロスに気づくと、ゆっくりと話しかけてきた。
「不遇の子、ミノタウロスよ。……哀れ。まことに哀れよ。親にかけられた呪いで生まれた半人半牛の子。お主に過失は無いというのに……」
しかしそれを聞いたミノタウロスは、その言葉に大きな斧を構えてベヒーモスを睨みつけながら答えた。
「ベヒーモスよ。私はそれでも生まれた。それはすなわち、この世界に許されて存在したのだ。その事実は誰にも曲げられない」
ミノタウロスがそういうと、ベヒーモスはゆっくりと歩みを進めながら静かに答えた。
「ふっ……。その道理は否定しない。なぜならば、我らは再び生まれたのだからな。それはすなわち、この世界が、このベヒーモスに大将ミノタウロスを倒す事を許したという事に他ならない」
それを聞いたミノタウロスはゆっくりと戦闘態勢を整えながらベヒーモスに言った。
「やはりまだ根に持っていたか。だが、魔王軍にクーデターを起こしたのはお前だろう。私は魔王軍の大将として、裏切り者のお前に斧を向けたまでだ」
するとベヒーモスは荒々しい声で答えた。
「だまれ! 魔王軍は人間との戦いに備えるためと嘘をついて我らの住処を奪い、この私と仲間の魔族たちを追い出したのだ! 悪いのは魔王軍であろう!」
ベヒーモスはそう言って息巻くと、それを聞いたミノタウロスは目を据えて吐き捨てた。
「ならば、もう一度挑んでくるがいい! 話が通じないのならば、今一度このミノタウロスが打ち負かしてやろう!!」
ベヒーモスはミノタウロスの言葉に激昂したが、少し間をおいて冷静に答えた。
「……お主は人間の子供を連れていたな。さすがは子供好きで知られるミノタウロス。人間に寝返ったか?」
「私はいつでも子供たちの味方だ。種族など関係ない。子供たちを脅かすのであれば、ネクロマンサーだろうが魔族だろうが容赦はしない」
「はっはっは! そうかそうか。だが残念だったな。今頃、子供たちは肉片になっているだろう!」
ベヒーモスはそう言うとミノタウロスへ突進していった。
◆
その頃リッチと子供たちは、みんなで集まってリッチが持ってきていた干し肉を食べていた。
「コレうまいよね!」
「だな!」
「でも、ミノおじちゃん……」
「うん……。大丈夫かな」
子供たちがミノタウロスを心配しながら干し肉を頬張る中、リッチは少し離れたところに現れた細身のスーツを着た魔族を警戒していた。
「……あの魔族、少し危ないかもしれませんね……」
リッチはそう呟くと、立ち上がって細身のスーツを着た魔族の元へと歩いていった。
そして少し距離を取りながらその魔族に挨拶をした。
「はじめまして。わたくし、リッチと申します。こちらへはどのようなご要件で?」
それを聞いた細身のスーツを着た魔族は軽く会釈をして答えた。
「これはこれは。私はグレーターデーモン。名は与えられましたが、主人が不在のため名乗ることができません。お許しを」
グレーターデーモンはそう言うと、スーツの襟を正しながら話を続けた。
「私がここへきた目的はただ1つ。……すべての抹殺」
グレーターデーモンがそう言った瞬間、リッチは子供たちを守るために凄まじい早さで左右に火柱を展開し、グレーターデーモンに向かって一直線に飛び出した。
それを見たグレーターデーモンはリッチの思いもよらぬ行動に驚きながら後ろへ飛び退いた。
「魔法を使う者が突っ込んでくるだと!?」
そしてグレーターデーモンは飛び退きながら背中の翼を大きく広げると、高く飛び上って氷の魔法を放つための詠唱を始めた。
「elo eli endos cowaide medireni……」
しかしそれを見たリッチは懐から投げナイフを3本取り出し、飛び上がったグレーターデーモンめがけて投げつけた。
そしてリッチは素早く詠唱を唱え、グレーターデーモンを炎の玉で攻撃した。
ブオォォオオ!!
その炎の玉はナイフを追い越してグレーターデーモンに迫ると、グレーターデーモンは慌てて氷の魔法の詠唱を止め、炎の魔法を無効化する防御魔法を発動した。
「ein crea ina fire eribarak!!」
パァァアアン!
グレーターデーモンは魔法でリッチの炎の玉を消し去ったが、なんと先にリッチが投げていたナイフが魔法を追い越し、グレーターデーモンの腹に3本突き刺さった。
ドドドッ!!
「ぐふっ!!」
グレーターデーモンはリッチを睨みつけながら距離を取ったところへ着地すると、腹に刺さったナイフを1本1本と抜き去りながらリッチに言った。
「ほう……。よく考えられた戦法ですね。この私が傷を負うとは」
しかしリッチは冷静に答えた。
「いえ、これは戦法というほどの戦い方ではありません。私は300を超える出撃命令に師団長として軍を率いて先陣を切り、全勝してきました」
リッチはそう言うと、左手に魔法で赤く輝く炎の剣を出現させて続けた。
「おそらく、あなたの勝ち目は無いかと」
それを聞いたグレーターデーモンは激昂しながら答えた。
「ウソばかり並べる詐欺師め!! 300を超える戦いに全勝するなど、ありえぬ!!」
グレーターデーモンはそう言うと両手を広げて素早く詠唱し、氷の魔法の準備を完成させた。
そして、グレーターデーモン自身も羽を大きく広げて突撃の構えを見せると、リッチはいつになく真剣にグレーターデーモンに尋ねた。
「グレーターデーモンさん。一応確認なのですが、あなたは一度お亡くなりになられているのですよね?」
それを聞いたグレーターデーモンは、羽を大きく羽ばたかせてリッチに突撃しながら大声で答えた。
「そのとおり!! 私はネイクに蘇らされたのだ!! しかも膨大な魔力量のお陰で完全体に蘇ったエリート!! 死ね!!」
グレーターデーモンは魔法で作り出した無数の氷の刃でリッチを狙いながら、自身の爪でリッチの頭蓋骨を破壊しようと飛び込んできた。




