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地上へ戻る階段が崩落で塞がれると、それを見た子どもたちが恐怖に怯えてリッチの元へと駆け寄ってきた。
「リッチ隊長! 階段が!」
「うえーーーん! 怖いよぉ!!」
「ぼ、僕達は帰れるのでしょうか」
「リ、リッチ隊長!!」
しかしリッチは子どもたちの気持ちを察して優しく子どもたちに言った。
「大丈夫ですよ皆さん。私は魔法使いの最上級の地位だった魔導師団長だったのですから。骨になっちゃってますけど、魔法は最上級ですよ!」
リッチはそう言うと子どもたちを安心させるように全身の骨をカクカクと動かして戯けてみせた。
子どもたちはその様子を見ると、恐怖が緩和されて笑顔になった。
しかし、リッチはダンジョンの奥から迫りくる異様な殺気を感じ取って子どもたちに言った。
「さてさて。ですが何が起こるか分かりませんし、この先に何が待ち受けているのか分かりません。私が偵察してきますので、みなさんは少し下がって待っていてくださいね」
リッチがそう言うと子どもたちは少し神妙な面持ちで後ろへ下がっていった。
リッチは離れていった子どもたちに手を振ると、ゆっくりと振り返ってダンジョンの奥へと向かった。
するとその時、体に無数の切り傷のある1体のミノタウロスがゆっくりと歩み出てきた。
それを見たリッチは警戒すると、普段は使わない魔法の杖を右手に出現させて装備した。
そして首から下げた首飾りに貯められたMPを片手で確認すると、静かにミノタウロスに話しかけた。
「こんにちは。私は元魔導師団長でしたが、今はリッチとなった者です。もし、貴方様の平穏を私たちが邪魔をしたというのでしたら、相応の償いを持って退散致します。申し訳ございません」
しかし、それを聞いたミノタウロスは苦しそうな表情を浮かべながら声をあげた。
「おっ……、おれは!! おれの意思では動けぬ!! 逃げろ!! どこでも良い!! 逃げるのだ!! でなければ、おれはお前たちを皆殺しにする事になる!! 早く逃げるのだ!! 子どもたちを守ってくれ!!」
それを聞いたリッチは即座に杖を構えて戦闘態勢をとると、ミノタウロスの事情を把握して呟いた。
「あのミノタウロスは間違いなくネクロマンサーに操られていますね……。しかし、その状況においても自我を保ち、私たちを避難させようとしているとは……。あのミノタウロスは一体……」
リッチはそう呟くと、子どもたちを守るため、自分の背後に目隠しをするように火柱を無数に出現させて炎の壁を作り出した。
そして子供たちの安全を確保すると、魔法の杖を構えてミノタウロスに言った。
「その精神力と体躯。只者ではありませんね」
それを聞いたミノタウロスは持っていた大斧を振りかぶってリッチに言った。
「私は魔王軍の大将だった者!! しかし、不覚にもネクロマンサーに蘇らされ、3人のネクロマンサーに強力に操られている! 我を殺してくれ!! お主ならできるであろう!!」
ミノタウロスはそう言ってリッチに斧を叩きつけたが、リッチはその攻撃をヒラリとかわしてミノタウロスに言った。
「そういう事情がありましたか。私は元魔導師団長ですが、雇い主の国家がブラックだったので、強制的に剣技や槍術を訓練させられて物理攻撃の回避にも長けております」
それを聞いたミノタウロスは操られながらも驚いて共感しながらしながら答えた。
「なんと……、それは痛み入る……。魔導師がそのような訓練をするとは、その国は相当にひどい国だったのであろうな」
「え? あ、は、はい。ですが、仕方ないといいますか……。ははは」
しかしミノタウロスは再びぎこちない動きをして、大きく斧を振りかぶりながらリッチに言った。
「しかし、そうは言っても危ない! これから斧でお前を全力で叩きつける!! 逃げてくれ!!」
しかしリッチは冷静に判断してミノタウロスに小声で答えた。
「なるほど、それは願ってもないです。私が死んだふりをすれば、裏で手を引いているネクロマンサーも出てくるかもしれません。お願いします」
それを聞いたミノタウロスは斧をリッチの頭蓋骨に振り下ろしたが、リッチは素早くその位置を移動してミノタウロスの斧を避けながら地面に倒れた。
ドガン!!
ミノタウロスの斧がリッチを避けて池面に突き刺さると、リッチはミノタウロスに目線を送り、ミノタウロスも安堵した表情でリッチの目線に答えた。
そしてリッチはミノタウロスに倒されたように見せかけて動かなくなると、ミノタウロスは斧を高く掲げてウソの雄叫びをあげた。
「うおおおおお!!! 侵入者は倒したぁぁああああ!!!」
それを聞いたミノタウロスの操り主であるネクロマンサー3人は満足そうに笑みを浮かべ、ミノタウロスの操りを解いた。
しかし、炎の壁の奥にいる子どもたちはリッチを信じながらもミノタウロスの雄叫びに震えた。
◆
リッチが倒れている所へネクロマンサーと思われる人物たちが3人やってきた。
「この骨ヤロウ、あんな炎の壁作りやがって!」
「ああ。あの子供たちを誘拐して人質にすれば」
「ネイクさんも喜ぶのに! 炎消せねぇのか!」
その言葉を聞いていたリッチは少しだけ顔を上げると、ネクロマンサーたちの背後で両手を広げているミノタウロスが小さく頷いた。
そしてリッチは素早く起き上がり、右手に持っていた魔法の杖を回転させて逆さに持った。
「うわ!」
「こいつ生きてる!」
「やべぇ!」
その様子に驚いたネクロマンサーたちが慌ててミノタウロスを操ろうとした瞬間、
バチン!! バチン!!
「ぎゃっ!」
「ぐわっ!」
なんとミノタウロスがネクロマンサーの背後から豪快な平手打ちを2度放ち、ネクロマンサー2人をダンジョンの壁へと叩きつけた。
残る1人のネクロマンサーは驚いてミノタウロスに振り返ったが、その隙を逃さなかったリッチが逆さに持った魔法の杖を刺突剣のように突き出して、正確にネクロマンサーの顎の先に命中させた。
ゴッ!
「う……、うう……」
するとネクロマンサーは頭蓋骨を揺さぶられ、脳震盪を起こして膝から崩れ落ちていった。
そしてミノタウロスに吹き飛ばされたネクロマンサー2人も、壁に吹き飛ばされた衝撃で失神していた。




